はじめに|情報の海から抜け出し、自分軸で講座を選ぶために

行政書士試験の通信講座を探していると、公式サイト・比較ブログ・SNS・口コミサイトなど、膨大な情報が目に飛び込んできます。
気づけば「どれが自分に合っているのか分からない」「選びきれない」という状態になり、学習の第一歩を踏み出せないまま時間だけが過ぎてしまう――これがいわゆる「決定麻痺(Analysis Paralysis)」です。

本記事では、こうした状態に陥っている方に向けて、心理学行動経済学の理論を土台にした「思考整理術」をご紹介します。
特に、社会人や子育て中の方など、時間・精神的リソースに限りがある受験生が、情報過多の状況でも迷わず決断できるようになるための具体的なステップを解説します。

最終的なゴールは、

  • 他人の評価(他人軸)ではなく、自分の価値観(自分軸)に沿った講座選びができること
  • 選んだ講座に自信を持ち、迷いなく学習を始められること

この2つを達成することです。

これからご紹介するフレームワークは、単なるノウハウ集ではなく、科学的根拠に基づき、現役行政書士としての視点も盛り込んだ「実践型戦略」です。
情報の洪水に流されず、自分にとって最適な一歩を踏み出すための“羅針盤”として活用してください。

第1部|なぜ私たちは「選べない」のか?

―― 行政書士講座選びで意思決定が止まる心理的要因

行政書士試験の通信講座を探していると、気づけば膨大な情報の渦に巻き込まれ、「どれが自分に合うのか決められない」状態になることがあります。
この現象は、意志が弱いからではなく、人間の認知特性や感情の働きによって誰にでも起こりうるものです。
ここでは、その代表的な3つの心理メカニズムを解説します。

1.1 選択肢が多すぎると選べなくなる ― 選択過多の逆説(The Choice Overload Paradox)

「選択肢は多いほど良い」という一般的な考え方とは逆に、選択肢が多すぎると意思決定が難しくなり、満足度まで下がることがあります。
これは「選択過多の逆説」として知られ、心理学実験でも裏付けられています。

有名なのは、スーパーマーケットでジャムの試食を行った実験です。
24種類のジャムを並べた場合よりも、6種類だけを並べた場合の方が購入率が約10倍高かったのです。

行政書士講座選びでは、価格・教材形式・サポート体制・合格率など比較項目が多すぎるため、脳が情報処理の限界を超えてしまいます(認知負荷の増大)。
さらに、「他の選択肢の方が良かったかもしれない」という後悔の可能性や、完璧な講座を探そうとする非現実的な期待が意思決定を一層難しくします。

1.2 情報収集が行動を止める ― 分析麻痺(Analysis Paralysis)

分析麻痺とは、情報を集め過ぎた結果、考えすぎて決断や行動ができなくなる状態です。
この背景には、完璧主義や失敗への恐怖、そして情報の氾濫があります。

特に行政書士を目指す社会人や子育て世代は、責任感が強く、徹底した下調べを「誠実さ」と考えがちです。
しかし講座選びでは、その真面目さが裏目に出て、永遠に情報収集を繰り返すループにはまりやすくなります。

結果として、意思決定に必要なエネルギーが消耗し(意思決定疲労)、創造的な学習計画づくりも妨げられるという悪循環が生まれます。

1.3 恐れと後悔がブレーキをかける ― 損失回避性と後悔理論

人間は「得られる喜び」よりも「失う痛み」を強く感じます。
損失回避性と呼ばれるこの傾向は、行動経済学のプロスペクト理論で示されており、その心理的影響は利益の約2.25倍に達するといわれます。

行政書士講座の場合、「20万円払って失敗する痛み」は、「20万円払って合格する喜び」よりも強烈に感じられます。
さらに後悔理論が働き、「もし他の講座にしておけば…」という予期的後悔が、決断を先延ばしにします。

このブレーキを外すには、「行動しないことで失われる時間や合格の機会」=機会損失を明確に意識することが重要です。
実際、何も選ばずに過ごす時間こそが、最も取り返しのつかない損失となるのです。

第2部|迷いを断ち切るための実践フレームワーク

―― 情報の整理から最終決定までの4ステップ

膨大な情報を前に立ち止まってしまうとき、必要なのは「もっと情報を集めること」ではなく、「情報を整理するための仕組み」です。
ここでは、行政書士講座選びに迷っている方が、最短で納得のいく決断を下すための4つのステップをご紹介します。

2.1 情報デトックス

―― あえて情報収集を中断し、思考を整理する

選択肢を比べ続けていると、脳は疲弊し、判断力が低下します。
ここで有効なのが「情報デトックス」です。これは意図的に新しい情報の取得を一時停止し、頭の中の情報を「熟成」させる方法です。

心理学でいうインキュベーション効果により、一度距離を置くことで無意識が情報を整理し、誤った思考パターンから抜け出しやすくなります。
この間は、散歩や軽い読書など、脳に負荷をかけない活動がおすすめです。

2.2 自分軸の確立

―― 評価基準を外部ではなく自分の中に持つ

情報デトックスで頭がクリアになったら、次は「自分軸」を明確にします。
ここで参考になるのが自己決定理論(Self-Determination Theory)です。
モチベーションを持続させるには、自律性・有能感・関係性の3要素が満たされる必要があります。

具体的には、

  • なぜ行政書士を目指すのか(目的・将来像)
  • 確保できる学習時間と予算
  • 譲れない条件(例:質問回数、教材形式)
  • 妥協できる条件(例:紙テキスト不要)
    を明文化します。

これが、他人のランキングや口コミに左右されないための羅針盤となります。

2.3 評価軸の絞り込み

―― 「3つの譲れない条件」で比較をシンプルに

自己分析の結果、希望条件がたくさん出てきたとしても、すべてを満たす講座はほぼ存在しません。
ここで重要なのが、評価基準を3つに絞ることです。

この方法は、認知の限界を前提に合理的な意思決定を行う限定合理性の考え方に基づいています。
「この3つさえ満たしていれば、合格に必要な学習はできる」という基準を決め、それ以外の項目は思い切って比較対象から外します。

例:

  1. 総費用が15万円以下
  2. スマホで全講義が視聴可能(倍速対応)
  3. 質問サポートが無制限

2.4 意思決定マトリクス

―― 自分軸を数値化して客観的に比較する

最後に、自分軸と絞り込んだ3つの条件を使い、意思決定マトリクスを作成します。
これは各講座を同一基準で採点し、合計点で比較する方法です。

作り方の手順:

  1. 候補講座(3〜5社)を横軸に、3つの譲れない条件を縦軸に配置
  2. 各条件に重要度(1〜3)を設定
  3. 講座ごとに条件の満足度を5段階で採点
  4. 点数 × 重要度を計算し、合計点が最も高い講座を暫定1位に

サンプル:

評価基準(自分軸)重み講座A講座B講座C
価格(15万円以下)35 (15)3 (9)2 (6)
スマホ学習の完結度24 (8)5 (10)3 (6)
質問サポートの質13 (3)4 (4)5 (5)
合計スコア262317

※()内は点数×重みのスコア

このマトリクスは「他人に勧められた最適解」ではなく、「自分が導き出した最適解」です。
そのため決断への納得感が高まり、選んだ後の後悔も減らすことができます。

第3部|決断を行動に変えるための心理戦略

―― 「迷い」を断ち切り、一歩を踏み出す方法

思考が整理され、選択肢が絞れても、最後の「申し込み」や「学習開始」という行動には心理的な壁があります。
ここでは、その壁を取り払い、迷いから行動へと移すための3つのアプローチをご紹介します。

3.1 「完璧」より「十分満足」を選ぶ

―― Satisficing(満足化)という幸福戦略

多くの人は「完璧な講座」を求めがちですが、それは存在しない理想を追い続けることになり、決断を遅らせます。
行動経済学者ハーバート・サイモンが提唱したSatisficing(満足化)の考え方では、「十分に満足できる条件を満たしたら、それ以上探さない」ことを推奨します。

心理学研究によれば、常に最善を求める人(Maximizer)は、客観的には良い結果を得ても、幸福度や満足度が低い傾向があります。
一方、Satisficerは「これで十分」という基準で早く行動に移すため、結果的に満足度が高まりやすいのです。

ポイント:

  • 100点を探すより、85点で合格に必要十分な講座を選ぶ
  • 「妥協」ではなく、「幸福度を高める合理的戦略」として捉える

3.2 ベイビーステップ法

―― 大きな決断を小さな行動に分解して実行する

「講座に申し込む」という大きな決断は、心理的負担が大きく、脳はこれを脅威と感じて行動を止めがちです。
そこで有効なのがベイビーステップ法。これは、目標を抵抗のないほど小さな行動に分解し、まずはそこから始める方法です。

この手法は、行動を始めることで脳の側坐核が刺激され、やる気を引き出す作業興奮を起こす点でも有効です。
やる気を待つのではなく、行動してやる気を作るのがポイントです。

実践例:

  • 今日は「資料請求を1件だけする」
  • 「机にテキストを置く」だけでOK
  • 無料体験動画を1本だけ視聴する

3.3 「とりあえずやってみる」戦略

―― 行動こそが最高の情報収集になる理由

講座を選ぶとき、頭の中でシミュレーションしても分からないことがあります。
講師の話し方、テキストの見やすさ、学習システムの使い勝手――これらは実際に体験して初めて分かる情報です。

そこで役立つのが、「とりあえずやってみる」戦略です。
無料体験や資料請求は、最終決断前の質の高い情報収集として活用できます。

さらに、多くの講座にはクーリングオフや全額返金保証といったリスクリバーサル(リスクの反転)が用意されています。
これにより、金銭的な損失リスクが下がり、行動への心理的ハードルも下がります。

ポイント:

  • 無料体験や返金保証を利用して、実際に試す
  • 行動しながら判断材料を増やす
  • 何もせず迷い続けることこそが最大の機会損失になる

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