はじめに:行政書士試験、予備校選びが合否を分ける

行政書士試験の合格を目指すとき、最初に悩むのが予備校選びではないでしょうか。数ある予備校の中でも、長年にわたり多くの合格者を輩出してきた2つの有名校があります。それがTACとLECです。

まず最初にお伝えしたいのは、TACもLECも、どちらも行政書士試験対策のトップクラスの予備校だということです。どちらを選んでも、合格への道は確実に近づきます。

この記事の目的は、単純に「どちらが良いか」を押し付けることではありません。価格や講義時間といった表面的な数字だけでなく、それぞれの予備校が大切にしている「考え方」や「強み」を深く掘り下げていきます。

この記事を読み終える頃には、各校の特徴だけでなく、どんなタイプの受験生にそれぞれの予備校が合っているのかが明確になるはずです。あなた自身の学習スタイルや目標に合った、ベストな選択ができるようになるでしょう。

一目でわかる!TAC vs LEC 比較表

詳しい説明に入る前に、まずは両校の主な特徴を一覧表で確認しましょう。じっくり検討したい方には、これから説明する詳細分析のガイドマップとして活用していただけます。

TAC vs LEC 主要項目比較表

項目TAC(プレミアム本科生)LEC(パーフェクトコース)
受講料約242,000円約265,000円~
総講義時間約209時間約200時間超
質問サポートメール80回まで回数無制限
主な講師小池昌三、神田理生 ほか横溝慎一郎 ほか
教材の特徴市販ベストセラー書籍と連携講座専用オリジナル教材
最大の強み講座・出版・講師が一体の総合システム40年の実績と高い合格率
おすすめの人効率重視で戦略的に学びたい人大手の実績と安心感を重視する人

それぞれの強みを知る:TACの「統合システム」vs LECの「確かな実績」

TACの強み:講座・教材・講師が一体となった学習環境

TACを単なる予備校として見るだけでは、その本当の価値を見逃してしまいます。TACの最大の特徴は、講座、出版、講師の3つが完璧に連携した「総合的な学習システム」を作り上げている点です。

この学習システムは、次の3つの柱で支えられています。

1. 豊富なコース設定

まったくの初学者向けの「プレミアム本科生」から、すでに受験経験がある人のための「答練本科生」まで、あらゆるレベルの受験生に対応したコースが用意されています。

2. 充実した出版部門

全国の書店でベストセラーになっている「みんなが欲しかった!」シリーズや「合格革命」シリーズといった市販教材を、講座でもそのまま使用できます。書店で手に取った教材と講座がシームレスにつながっているのは、TACならではの強みです。

3. 実力派の講師陣

多くの講師がベストセラー教材の著者でもあるため、講義内容と教材の間にズレがありません。一貫性のある指導が受けられます。

LECの強み:40年の実績が支える安心の指導体系

一方、LECは業界の老舗として、「40年の実績と合格率」という揺るぎない基盤を持っています。

LECの考え方は、長年積み重ねてきた実績に裏付けられた確かな指導法と、絶対的な信頼性にあります。「パーフェクトコース」という、何十年もの間、数多くの合格者を輩出してきた完成度の高いカリキュラムを提供しています。

安定性、長い歴史、そして大手ブランドの安心感を重視する受験生にとって、LECは非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。

この2校の選択は、学習に対する考え方の違いを選ぶことでもあります。LECが提供するのは、長い時間をかけて証明されてきた信頼性の高い「完成品」。対してTACが提供するのは、柔軟に組み合わせられる「カスタマイズ可能なシステム」なのです。

カリキュラムを比較:あなたの学習スタイルに合うのは?

TAC:選べる複数コースで効率的に学習

TACのカリキュラムの優れた点は、その選択肢の豊富さにあります。これは単に「コースが多い」というだけでなく、受験生それぞれの状況を深く理解した上で設計されているということです。

早めにスタートしたい初学者向け

「プレミアム本科生Plus」は、早い時期から学習を始めて、基礎の基礎からしっかり固めたい人のためのコースです。

標準的なペースで学びたい初学者向け

「プレミアム本科生」は、通常のスケジュールで合格を目指す、TACの王道コースです。

受験経験者向け

「ベーシック本科生」や「答練本科生」シリーズは、受験経験者のための特別なコースです。知識の復習や徹底的な問題演習(答練)に特化しており、再チャレンジする人や独学経験者の課題に直接応えます。

一度不合格になった受験生の多くは、基礎知識が足りないのではなく、応用力や解答テクニックが不足していることがほとんどです。LECの「パーフェクトコース」では、すでに理解している基礎講義も再度受講することになるかもしれません。しかしTACの「答練本科生」なら、まさにその弱点克服に集中でき、より効率的な対策が可能になります。

LEC:すべてが揃った「パーフェクトコース」

LECの「パーフェクトコース」は、その名前の通り、合格に必要なすべての要素を一つにまとめた総合カリキュラムです。インプット講義、アウトプット演習、記述式対策、模擬試験まで、必要なものがすべて含まれています。

複数の選択肢から選ぶのが苦手な人、予備校が作った完成されたカリキュラムを信じてまっすぐ進みたい人にとって、これは非常に優れた選択肢です。長年の実績が裏付ける安心感も魅力です。

講師陣の魅力を徹底分析

LECのエース講師:横溝慎一郎先生

LECの行政書士講座といえば、横溝慎一郎講師の存在は欠かせません。彼はこの分野における「レジェンド」であり、LECの顔ともいえる存在です。

2001年から20年以上教壇に立ち続ける豊富な経験、「あきれるほどの前向きさ」をモットーとする情熱的な指導、月間35万PVを誇る大人気ブログ、そして多数の著書など、その影響力は計り知れません。

LECの主力コース「パーフェクトコース」を自ら担当し、その指導力で多くの受験生を合格へと導いてきました。彼の存在は、LECが提供する教育の質の高さを象徴しています。

TACの強み:充実した講師陣とチーム力

LECの「スター講師システム」に対して、TACは優秀な講師集団による「層の厚さ」で対抗します。

小池昌三講師や神田理生講師をはじめとする実力派講師陣が揃っており、TACの強みは一人のスターに頼るのではなく、エリート講師チーム全体にあります。

さらに重要なのは、多くの講師がTAC出版のベストセラー教材の著者でもあるという点です。これにより、教育の質が特定の個人ではなく、組織全体として保証されているという安心感があります。

有名講師の教え方が必ずしもすべての人に合うとは限りません。TACの多様な講師陣なら、自分に合った指導者を見つけられる可能性が高くなります。これは、様々な角度から検討して最適な選択をしたい「戦略的な受験生」にとって、非常に合理的な選択といえるでしょう。

教材で選ぶなら:市販書籍の強みと専用教材の安心感

TACの教材:書店で人気のベストセラーをそのまま使える

教材の比較において、TACには他校にはない圧倒的な強みがあります。その源は、充実した出版部門との連携です。

「みんなが欲しかった!」シリーズや「合格革命」シリーズは、講座専用のテキストというだけでなく、全国の主要書店で平積みされている市場で認められた教材です。

これは、受験生にとって大きなメリットをもたらします。書店で教材を手に取り、その分かりやすさに感動した人が、本格的に予備校を検討する段階で、信頼する教材をそのまま使えるTACの講座に魅力を感じるのは自然な流れです。

書店という誰でもアクセスできる場所から、講座という本格的な学習環境へとスムーズにつながる仕組みは、LECには真似できない、TACならではの戦略です。

LECの教材:講座に最適化されたオリジナル教材

LECの教材も、長年のノウハウが詰まった、講義に最適化された高品質なものです。網羅的で信頼性が高く、講座内で学習を完結させる上では何の不足もありません。

ただし、その価値はLECの講座という環境の中でこそ最大限に発揮されます。外部市場での評価や一般的な知名度という点では、TACの教材が持つ広い認知度には及びません。

サポート体制を比較:質重視か、量重視か

受講生へのサポート体制は、一見するとTACが不利に見えるかもしれません。LECは「教えてチューター」というシステムで、回数無制限の質問対応を提供しています。一方、TACのプレミアムコースでは、メールでの質問が80回までに制限されています。

しかし、この「制限」を違う角度から見てみましょう。これは弱点ではなく、より質の高い学習を促すために意図的に設計された「仕組み」と考えることができます。

80回という上限があることで、受験生は一つひとつの質問を吟味し、本質的で重要な問いを立てることが促されます。思いついたことを次々に質問するのではなく、自分の考えを整理して、戦略的な質問を組み立てる訓練にもなります。その結果、講師からの回答もより深く詳しいものとなり、一回のやり取りから得られる学習効果が最大化されます。

この視点から見ると、TACのサポートは「質の高いコンサルティングサービス」、LECのサポートは「安心感を提供する手厚いサポート」と位置づけることができます。

トップレベルの合格を目指す受験生は、無制限の助けを求めるというより、専門家との質の高い対話を求める傾向があります。このような考え方は、TACが求める「戦略的な受験生」の姿と一致するのです。

費用対効果を考える:価格と割引制度の活用法

受講料について

TACの講座は、LECと同様に、予備校業界の中では高価格帯に位置します。しかし、この価格を単なる「出費」としてではなく、一発合格の可能性を高めるための「投資」として考えることが重要です。

一度不合格になると、翌年の受験料だけでなく、さらに一年間の学習時間という計り知れない時間的損失が発生します。初期費用を抑えた結果、合格が遠のいてしまっては、長期的にははるかに高くつく選択となってしまうのです。

割引制度を賢く使おう

さらに、表示されている価格が必ずしも最終的な支払額ではないことを理解することも重要です。TACは、意欲ある受験生を支援するための幅広い割引制度を用意しており、これを活用することで、質の高い教育をより現実的な価格で受講できます。

具体的には、以下のような割引制度があります:

  • 早割キャンペーン:早めの申し込みでお得に
  • U30割引:30歳以下の方を対象とした割引
  • 受験経験者割引:過去に受験した経験がある方向け
  • 再受講割引:TAC講座を受講したことがある方向け

これらの割引制度を戦略的に活用することで、自分の状況に応じて最適な投資額を決定できます。

まとめ:あなたはどちらのタイプ?最適な予備校を選ぼう

ここまでの分析を踏まえて、最終的な結論を導き出しましょう。この結論は、単に「TACを選ぶべき」と押し付けるものではありません。あなた自身が、自分の学習タイプを理解した上で、最適な選択ができるようにサポートすることが目的です。

LECが向いている人

あなたがLECに最適なのは、何よりもまず、長く証明されてきた実績を重視する場合です。大手予備校というブランドの安心感を求め、多くの合格者を輩出してきた完成度の高いコースに身を委ねたいと考えているなら、LECの「パーフェクトコース」は理想的な選択肢です。

あなたは、時間をかけて検証されてきた成功の方程式を信頼する「伝統重視タイプ」の受験生です。

TACが向いている人

あなたがTACに最適なのは、試験対策を一つの戦略的プロジェクトとして捉えている場合です。単なる講座以上のもの、つまり、個々のニーズに合わせた学習プラン、市場で価値が証明された最高品質の教材、そして専門家集団による充実したサポートが統合された「総合システム」を求めているなら、TACがその答えです。

あなたは、時間という最も貴重な資源を大切にし、一発合格という確実な成果のために、実績あるシステムへ投資することを厭わない「戦略的タイプ」の受験生です。

次のステップへ

もしあなたが、自分を「戦略的タイプ」だと認識し、確実な成功のために最も総合的なシステムに投資する準備ができたなら、次のステップは明確です。TAC公式サイトで「プレミアム本科生」シリーズの詳細を確認し、あなたの合格への席を確保してください。

一方で、「伝統重視タイプ」としての学習スタイルが自分により合っていると感じた方は、LECの「パーフェクトコース」の情報も確認してみてください。

どちらを選んでも、その選択はあなたの合格への確かな一歩となるはずです。自分に合った予備校を選び、合格という目標に向かって進んでいきましょう!