究極の選択:コスト重視か、合格への確実性か

行政書士試験の通信講座選びで、多くの受験生が悩むのが「資格の大原」と「スタディング」のどちらを選ぶかという問題です。これは単純に「高いか、安いか」という話ではありません。

「とにかく初期費用を抑えたい」というスタディング的な考え方と、「多少高くても確実に合格したい」という大原的な考え方、あなたはどちらを選びますか?

スタディングがテクノロジーを活用した驚きの低価格で登場し、多くの受験生の選択肢となっているのは事実です。その圧倒的なコストパフォーマンスは、資格学習のハードルを大きく下げました。

ただし、この記事では価格という一面的な基準を超えて、本当の「投資価値」を明らかにします。「料金」「アプリ」「サポート」という3つの重要なポイントで、両者のサービスを客観的に比較していきます。

まず結論から先にお伝えしましょう。

スタディングが向いている人

  • 学習予算を最優先する人
  • 自己管理能力が高く、デジタルツールを使いこなせる人
  • 規律を持って独学できる自信がある人

資格の大原が向いている人

  • 価格より「一発合格」の確実性を重視する人
  • 実績のある学習システムを信頼したい人
  • 困ったときに頼れるサポートを重視する人

この比較分析を通じて、あなたが自分の学習スタイルに合った最適な選択ができるようサポートします。

比較結果まとめ:忙しいあなたのための早見表

詳しい分析に入る前に、両者の核心的な違いを表でまとめます。この表を見れば、それぞれがどんな思想でサービスを設計し、どんな学習者をターゲットにしているかが分かります。

比較項目資格の大原スタディング
基本方針伝統と実績に基づく体系的な教育サービステクノロジー重視の低価格学習プラットフォーム
最大の強み信頼性、充実したサポート体制、実績ある教材圧倒的な低価格、スマホで完結する利便性
向いている人確実性を求め、実績とサポートを重視する人初期費用を最優先し、自己管理に自信がある人
提供する価値合格の確実性を高める「投資」学習を始めやすくする「低コスト」

料金比較:単なる価格差ではない「コスト」と「投資」の違い

料金は多くの受験生が最初にチェックするポイントです。しかし、数字の裏にある各社のビジネスモデルと提供価値を理解することが、賢い選択のカギとなります。

スタディングの圧倒的な安さ:業界最安値の衝撃

まず前提として、スタディングが価格面で圧倒的に有利であることは間違いありません。その価格設定は業界の常識を覆すレベルです。

スタディングは学習者のニーズに合わせて3つのコースを用意しています。

  • 合格コース ミニマム:インプット学習に特化した最安プランで、34,980円(税込)
  • 合格コース スタンダード:問題集や過去問対策が加わった人気プランで、ペーパーレス版44,000円(税込)、冊子テキスト付き54,000円(税込)
  • 合格コース コンプリート:答練や模試まで含む全部入りで、ペーパーレス版59,400円(税込)、冊子テキスト付き69,400円(税込)

注目すべきは、スタディングの最上位コース「コンプリート」でさえ、大原を含む多くの予備校の入門コースより安いという事実です。この価格設定は、学習を始める際の金銭的ハードルを劇的に下げています。

資格の大原の価格設定:その料金で何が手に入るのか

一方、資格の大原のオンライン完結型メインコース「パススル行政書士」は74,800円(税込)です。数字だけ見れば、確かにスタディングより高額です。

しかし、この価格を「投資」として考えると、見方が変わってきます。

大原の価格は単なる講義動画へのアクセス権ではありません。長年の教育ノウハウが詰まった教材、そして何より学習でつまずいたときに頼れる人的サポートまで含んだ、総合的な教育パッケージの対価なのです。

次の表で、大原の「パススル行政書士」とスタディングの「合格コース コンプリート」を比較してみましょう。

提供内容資格の大原(パススル行政書士)スタディング(合格コース コンプリート)
基本料金(税込)74,800円59,400円(ペーパーレス)/ 69,400円(冊子付)
基本講義約60時間約50時間
デジタルテキストフルカラーWebテキストWEBテキスト
問題演習Web問題集、実力確認テストスマート問題集、過去問集、答練、模試
講師への個別質問30回まで無料有料チケット制(30枚付属)
その他のサポートZoomホームルーム、自習室利用可AIサポート、勉強仲間機能

この比較から見えてくるのは、両社の根本的なビジネスモデルの違いです。

スタディングは典型的なSaaS(Software as a Service:クラウド型サービス)企業のアプローチです。製品(学習コンテンツ)を低価格で提供し、多くのユーザーを獲得することを目指します。コストのかかる人的サポートは有料オプションとして切り離しています。

対して大原は、伝統的な教育機関のモデルです。価格には講師陣という人材コストや、全国に展開する校舎の維持費が反映されています。そしてこれこそが、同社が提供する核心的な価値なのです。

つまり受講生は、単に価格を選んでいるのではなく、「スケーラブルなテクノロジープラットフォーム」か「包括的な教育サービス」か、2つの異なるビジネスモデルから選んでいるのです。

さらに重要なのが「安さの裏に潜むコスト」です。スタディングの低価格は魅力的ですが、学習上の「不確実性」というリスクを受講生側に転嫁しています。

例えば、学習で行き詰まり10回の質問が必要になった場合、10枚13,000円のQ&Aチケットを追加購入する必要があり、当初の「安い」コースは結局安くなくなります。

一方、大原の価格は、こうした不測の事態に対する「固定費型の保険料」と見ることができます。「パススル」コースに含まれる30回の無料質問は、安心して学習に専念するためのセーフティネットです。この安心感こそが、リスクを避けて確実性を求める人にとっての真の価値なのです。

アプリ機能比較:「オールインワンの便利さ」vs「本格派の演習ツール」

現代の資格学習において、スマートフォンの学習アプリはもはや補助的なツールではなく、学習体験の中核です。ここでは、両者のアプリがどんな設計思想に基づいているかを比較します。

スタディングアプリ:スマホ一台で完結する学習環境

スタディングのアプリは、利便性と統合性の観点から業界トップクラスと言えます。単なる「アプリ」ではなく、学習環境そのものがポケットに入るという体験を提供してくれます。

最大の特徴は、講義の視聴、デジタルテキストの閲覧、問題演習、進捗管理、さらには学習仲間との交流機能まで、学習に必要なすべてが一つのアプリ内にシームレスに統合されている点です。

短い講義動画、動画のオフラインダウンロード機能、音声のみの学習モードといった機能は、通勤時間や昼休みなどの「スキマ時間」を最大限に活用するために完璧に設計されています。

さらに、AIが最適な復習問題を提案する「AI問題復習機能」や、モチベーション維持を助ける「勉強仲間機能」など、最新テクノロジーを駆使した機能も搭載されており、ユーザーの学習を多角的にサポートします。

結論として、学習のすべてをスマートフォン一台で完結させたい人にとって、スタディングのアプリは非常に優れた選択肢です。

資格の大原のアプリ戦略:「トレーニング問題集」という強力な武器

資格の大原は、スタディングとは異なるアプローチを取っています。主に講義を視聴する「合格WEB」アプリと、問題演習に特化した「トレーニング問題集(通称:トレ問)」アプリという、2つの主要アプリを提供しています。

これはスタディングのような統合型とは対照的ですが、この分離されたアプローチは弱点ではなく、むしろ強みとなり得ます。特に「トレ問」アプリは、大原の価値を体現する「秘密兵器」です。

正直に弱点も触れておきます。第一に、このアプリは講座料金に含まれず、別途購入が必要です。第二に、一部のユーザーレビューでは、問題の解説が不十分で単に問題文を繰り返しているだけという指摘もあります。

しかし、これらの点を踏まえてもなお、このアプリの強みは計り知れません。

  • 圧倒的な問題量:全科目で約2,000問という膨大な問題数を収録。徹底的な反復演習で知識を定着させる学習スタイルに最適です。
  • 充実した演習機能:問題をランダムに出題するシャッフル機能、1問あたりの解答時間を設定できるタイマー機能、過去10回分の正誤記録の閲覧、理解度に応じた問題の絞り込み機能など、本格的な演習のための機能が満載です。

これらの機能は、地道な努力と反復練習こそが合格への王道だと信じる学習者にとって、極めて強力なツールとなります。

次の表で両者のアプリを比較してみましょう。

機能・特徴資格の大原(トレーニング問題集アプリ)スタディング(統合型アプリ)
タイプ特化型ツール:講義アプリとは独立。問題演習に特化統合型:講義、テキスト、問題、サポート機能が一体化
主な用途網羅的かつ集中的な問題演習とドリルスキマ時間を活用したオールインワン学習と進捗管理
問題数約2,000問コースにより異なる(過去問+オリジナル問題)
主要機能シャッフル、タイマー、詳細な正誤記録、習熟度別フィルタリング動画オフライン再生、AI復習、勉強仲間機能、学習グラフ
コスト別途購入が必要講座料金に含まれる
ユーザー評価演習ツールとして強力だが、解説は物足りないとの声も利便性が高く、使いやすいとの評価

この比較から見えてくるのは、「エコシステム(統合環境)」対「ツールボックス(道具箱)」という哲学の違いです。

テック企業のスタディングは、ユーザーを自社プラットフォーム内に留め、シームレスな体験を提供する閉じた「エコシステム」を構築しています。

一方、伝統的な教育機関の大原は、学習者に「ツールボックス」を提供します。講義を視聴するツール、問題を解くツール、それぞれが独立しており、学習者は目的に応じて最適なツールを使い分けることが期待されます。

この「ツールボックス」という考え方は、SNS的な機能やゲーム感覚の学習よりも、特定のタスク(例:「今から行政法の問題を100問解く」)に集中するための最適な道具を求める人の価値観と合致します。

さらに、トレ問アプリの「解説が弱い」という批判点は、別の視点で捉えることもできます。アプリ内で完結した解説を読んで受動的に理解するのではなく、間違えた問題の根拠を自らテキストや講義ノートに戻って能動的に探し出す行為は、より深く強固な知識の定着を促します。

つまり、アプリの「弱点」が、結果的により厳格で効果的な学習習慣を育む「特徴」となり得るのです。これは、安易な解決策よりも地道な努力を尊ぶ学習者にとって、むしろ魅力的かもしれません。

サポート体制比較:「セルフサービス型」と「手厚い指導型」の決定的な違い

学習サポートは、オンライン講座の価値を決める最も重要な要素の一つです。特に、難しい法律概念に直面したときや、学習のモチベーションが下がったときに、どんな支援を受けられるかが合否を分けることもあります。

スタディングのサポート:効率重視の自己解決型モデル

スタディングのサポート体制は、効率性と拡張性を最大化するために設計された「テクノロジー優先・自己解決型」モデルです。このモデルは、自信を持って自律的に学習を進められる受講生にとっては非常に効率的です。

しかし、このモデルの最大の弱点は、講師への個別質問が有料チケット制であることです。質問チケットは1枚2,000円、まとめ買いをしても1枚あたり1,300円という価格設定で、質問をすることに対して大きな金銭的・心理的障壁となります。

特に、最も安価な「ミニマム」および「スタンダード」コースには質問チケットが1枚も含まれていないため、サポートが必要になった瞬間に追加費用が発生します。

もちろん、スタディングはこの弱点を補うためのツールも提供しています。他の受講生が過去に行った質問と回答を自由に検索・閲覧できるQ&Aデータベースは、多くの疑問を無料で解決できる貴重なリソースです。また、AIによる検索・解説機能も、一般的な疑問であれば迅速に解決してくれます。

このモデルは、サポートをほとんど必要としない自信のある学習者には最適化されていますが、確実なセーフティネットを求める学習者にとっては、重大なリスクを含んでいると言わざるを得ません。

資格の大原のサポート:人的サポートという安心感

ここで、資格の大原が提供する「投資価値」が最も明確になります。大原のサポートシステムは、受講生が支払う料金に含まれる、いわば「合格への保険」です。

大原は、多層的なサポート体制を構築しています。

  • オンラインでの直接指導:「パススル行政書士」コースには、30回分の無料メール質問に加え、担当講師との定期的なZoomホームルームが含まれています。専門家から直接、個別の指導を受けることができます。
  • 「ハイブリッド」の強み:オンライン講座の受講生でありながら、全国に展開する大原の校舎の自習室を利用できるという点は、他の完全オンライン型サービスにはない、ユニークかつ強力な利点です。

正直に触れておくと、一部の口コミで「メールの返信が遅いことがある」という指摘もあります。しかし、たとえ即時性がなかったとしても、専門家による確実な回答が保証されているという事実は、質問するたびに追加料金を検討しなければならないシステムとは根本的に価値が異なります。

次の表で両者のサポート体制を比較してみましょう。

サポート機能資格の大原スタディング
個別質問の方法メール / オンラインフォーム有料Q&Aチケット制
無料質問回数30回(パススルコース)0回(ミニマム/スタンダード)、30回(コンプリート)
追加質問のコスト規定なし(30回超過は想定外)1回 1,300円~2,000円
ライブでの人的交流定期的なZoomホームルームなし
ピア/自動サポート規定なし他者のQ&A閲覧無料、AIサポート
物理的サポート全国の自習室利用可なし
難問5つを解決するコスト(スタンダードコースの場合)0円(30回の上限内)7,500円~10,000円

この比較は、両社が学習上の「リスク」をどう捉えているかを明確に示しています。

スタディングのモデルでは、学習上の困難というリスクは基本的に受講生が負います。壁にぶつかったとき、無料で使えるツールで自力解決するか、自らの費用で解決策を購入するかの選択を迫られます。

対照的に、大原のモデルはそのリスクの大部分を組織として吸収します。高めの受講料は、「行き詰まる」というリスクを受講生から教育機関へと移転するための保険料として機能しています。確実性を求めるリスク回避的な学習者にとって、大原のリスク吸収モデルは、スタディングの価格的魅力よりもはるかに高い価値を持つでしょう。

さらに、大原の自習室が提供する価値は、単に静かな学習スペース以上のものです。同じ目標に向かって真剣に努力する他の受講生に囲まれる環境は、オンライン学習にありがちな孤独感を和らげ、モチベーションを維持する上で強力な支えとなります。この無形の価値は、デジタルのみで完結するサービスでは決して再現できない、大原の「投資価値」の重要な要素なのです。

結論:あなたに合うのはどっち?

これまでの詳しい分析を統合し、最終的な結論を導き出します。資格の大原とスタディング、どちらを選ぶべきかという問いの答えは、あなた自身が「成功」をどう定義するかにかかっています。

スタディングがおすすめな人

以下の条件に当てはまる場合、スタディングは極めて合理的で効果的な選択となります。

  • 予算が絶対的な最優先事項:決められた予算内で学習を開始することが何よりも重要で、追加費用を発生させない自信がある
  • 確立された自己管理能力を持つ:自ら学習計画を立て、ペースを維持し、疑問点も自己解決できる、経験豊富な自律的学習者
  • 完全デジタル環境での学習を好む:物理的な教材や対面でのサポートを必要とせず、スマートフォン中心のシームレスな学習体験に最高の価値を見出す

資格の大原がおすすめな人

一方で、以下の考えを持つ学習者にとって、資格の大原は賢明な投資となります。

  • 実績と信頼性を重視する:実績のある教育機関の信頼性と、体系化された学習プロセスに安心感を覚える
  • サポートを成功のための保険と考える:専門家による包括的な人的サポートを、単なる贅沢品ではなく、合格という目標を達成するための不可欠なセーフティネットだと認識している
  • 長期的な視点を持つ:初期費用を抑えることよりも、一発合格の可能性を最大化することが、結果的に時間と費用の両方を節約する最善の道であると理解している

最終判断のポイント

スタディングは、行政書士試験というレースに参加するための、手頃な入場券を提供してくれます。それは多くの人にとって、挑戦への第一歩を踏み出すための素晴らしい機会です。

しかし、資格の大原が提供するのは、単なる入場券ではありません。それは、レースを最後まで走り抜き、確実にゴールテープを切るために設計された、堅牢でサポート体制の整った「乗り物」そのものです。

最終的な選択は、今日いくら支払うか、という短期的な問題ではありません。明日、どのような成果を手にしたいか、という長期的なビジョンに関わる問題です。

自らのプロフェッショナルとしての未来に真剣に向き合う人にとって、真の価値は、より安価な選択肢にあるのではなく、より賢明な「投資」にあるのです。