リンクアカデミー vs スタディング：25万円の価格差は何のため？「教材」と「合格サポート」どちらを選ぶべきか

はじめに：なぜこの2つの講座を比較することが重要なのか

行政書士試験の通信講座を探していると、必ず目にする2つの選択肢があります。リンクアカデミーとスタディング。この2つは、現代の学習者が直面する選択肢の両極端を表しています。

一方は、約23万円から30万円という価格帯で、徹底した人によるサポートを提供する「フルサービス」型。もう一方は、約3万5千円からという驚きの低価格で、最新のテクノロジーを活用した効率的な学習ツールを提供する「セルフサービス」型です。

この2つの講座の違いは、単なる機能や教材の質の差だけではありません。根本的な「教育に対する考え方」が異なるのです。そして、その考え方の違いが、約25万円以上という大きな価格差となって表れています。

多くの受験生が、この価格差を前にこう考えます。

「なぜこんなに値段が違うのか？」「高い方には、本当にそれだけの価値があるのだろうか？」

この記事の目的は、どちらかの講座をおすすめすることではありません。市場を分析する立場から、この価格差の正体を一つひとつ分解し、それぞれの価格が「何に対する対価なのか」をデータに基づいて明らかにすることです。

この記事を読み終わる頃には、あなたは単なる価格比較を超えて、より本質的な問いに答えられるようになっているはずです。

「自分が合格のために支払うべきものは、情報へのアクセス権なのか、それとも合格まで完走するための包括的なサポートなのか」

まず、スタディングがなぜ驚異的な低価格を実現できるのか、そのビジネスモデルとテクノロジーの核心に迫ります。次に、その価格設定の裏側にあるサポート体制の特徴を、公式データを使って詳しく見ていきます。

そして、リンクアカデミーが提供する「人による安全網」としての価値を分析し、その高価格が「挫折するリスクを避けるための投資」として、どのように合理的なのかを説明します。

最終的に、両者の比較を通じて、あなたがどちらの講座を選ぶべきか、明確な判断基準をお示しします。

スタディングの強み：34,980円という驚きの価格はなぜ実現できるのか？

スタディングの登場は、資格学習の世界に革命をもたらしました。従来の予備校が高額な受講料を当たり前としていた中で、テクノロジーを最大限に活用し、より多くの人に学習の機会を開いた功績は大きいものがあります。

この章では、まずスタディングの本質的な強みと、その革新的な価格設定を可能にした仕組みを公平に評価していきます。

スマホ完結の学習スタイル – テクノロジーが実現した学びの新しいカタチ

スタディングの最大の価値は、学習のすべてをスマートフォン一つで完結できる、高度に統合されたオンラインプラットフォームにあります。

忙しい社会人や主婦が抱える最大の悩みは、まとまった学習時間をどう確保するかということ。スタディングは、この課題に対する明確な答えを示しました。

1つの講義が5分から30分程度に細かく分けられているため、通勤電車の中、お昼休み、家事の合間といった「スキマ時間」を、すぐに学習時間に変えることができます。

講義を見た直後に、その単元の問題演習にスムーズに移れるため、「インプット」と「アウトプット」が効率よく連動します。

さらに、AIが自動で復習問題を最適なタイミングで出題する機能や、学習時間や進み具合を自動で記録・可視化する学習レポート機能は、自己管理にかかる負担を大きく減らしてくれます。

これらのテクノロジーによって、学習をゲーム感覚で進められる体験が提供され、モチベーション維持の助けとなります。まさに、現代のライフスタイルに最適化された「学びの民主化」を実現したモデルと言えるでしょう。

破壊的な低価格を支える仕組み：徹底した効率化の裏側

スタディングが34,980円からという価格を実現できる理由は、そのビジネスモデルが徹底して「拡張性（スケーラビリティ）」を追求している点にあります。

彼らが販売しているのは、一度開発すれば何度でも複製できる「デジタルコンテンツ」と「ソフトウェアシステム」です。

従来の予備校モデルでは、受講生が増えるほど、講師やスタッフ、教室といった人的・物理的なコストも増えていきました。これは本質的に規模を大きくしにくいビジネスです。

一方、スタディングは、人の介在を極限まで減らし、テクノロジーによって学習プロセスを自動化することで、この制約を打ち破りました。

ビデオ講義は一度撮影すれば何万人もの受講生が視聴でき、問題演習の採点や復習問題の出題はシステムが自動で行います。この徹底した効率化こそが、低価格の源です。

言い換えれば、スタディングの価格は、高品質な「教材」と洗練された「学習管理ツール」へのアクセス権に対する対価であり、個別の人によるサポートは、その基本料金には含まれていないのです。

この点が、後ほど分析するリンクアカデミーとの決定的な違いとなります。

スタディングが「ベストな選択」となるのはこんな人

これらの分析から、スタディングが一部の学習者にとって「最高の選択」となり得ることが明らかです。その理想的な受講者像は、以下の特徴を持つ人です。

1. 高い自己管理能力を持つ学習者

他人からの進捗管理や励ましがなくても、自分で学習計画を立て、それを着実に実行できる強い意志と規律を持っている方。

2. 予算を最優先する学習者

初期投資をできる限り抑えることが、講座選びにおける絶対的な条件だと考えている方。

3. テクノロジーに慣れている学習者

完全にデジタル化された自己完結型の学習環境を苦にせず、むしろそれを好んで活用できる方。

4. 疑問を自己解決できる学習者

学習中に出てきた疑問の多くを、参考書やインターネット検索などを通じて自力で解決する能力と意欲を持っている方。

もし、あなたがこの4つの条件をすべて満たしているなら、スタディングが提供するコストパフォーマンスは市場で他に類を見ません。最小限の費用で、行政書士試験合格に必要な知識とツールを手に入れることができるでしょう。

しかし、もしこのうちの一つでも当てはまらないと感じるなら、その低価格の裏に潜む「見えないコスト」について、次の章で詳しく説明する分析を慎重に検討する必要があります。

価格差の本質を探る：スタディングのサポート体制を数字で見る

スタディングのウェブサイトや一部のレビューでは、「学習サポートが充実している」という評価が見られます。

しかし、この「サポート」という言葉が実際に何を指しているのかを正確に理解することが、価格差の本質を理解する鍵となります。

この章では、公式データに基づいて、スタディングのサポート体制を詳しく見ていき、その特徴を明らかにします。

「サポート」の意味を考える：システム支援と人的支援の違い

市場で使われる「サポート」という言葉には、大きく分けて2つの意味があります。

一つは、スタディングが得意とする「学習サポート機能」、つまりAIによる復習機能や進捗管理ツールといった、システムによる自動化された支援です。これらは、学習の効率化に大きく貢献するものであり、その価値は疑いようがありません。

しかし、多くの受験生が、特に難しい法律の学習において本当に必要とするのは、もう一つの「人的支援」です。

具体的には、自分の言葉で表現した疑問に対して、専門家が個別に具体的に答えてくれるサービス。あるいは、学習の遅れやモチベーションの低下に対して、人が積極的に介入し、軌道修正を図ってくれるサービスです。

スタディングのモデルにおいて、前者の「学習サポート機能」は基本料金に含まれる中心的な価値です。しかし、後者の「人的支援」は、原則として標準装備ではなく、追加料金を支払って購入する「オプションサービス」として位置づけられています。

この違いを認識することが、極めて重要です。

Q&Aチケット制度の実態：質問するたびに費用が発生する仕組み

スタディングの人的支援の中心となるのが「学習Q&Aチケット」制度です。この制度の実態を、公式ウェブサイトに掲載されている2026年度合格目標コースの料金体系データから分析します。

ミニマムコース（34,980円）

最も安価なこのコースには、学習Q&Aチケットは1枚も含まれていません。講師への質問は、すべて別途チケットを購入する必要があります。

スタンダードコース（54,000円）

過去問対策までを含む標準的なコースですが、こちらも学習Q&Aチケットは含まれていません。サポートは別売りのオプションです。

コンプリートコース（69,400円）

模試までを含む最上位コース。このコースに限り、30枚のQ&Aチケットが標準で付いています。

このデータが示す事実は明確です。スタディングの主要な低価格プランを選んだ場合、講師への質問権はゼロからスタートします。

疑問が出てきた場合、学習者はその都度、追加の金銭的判断を迫られることになります。他の情報源によれば、質問チケットは1枚あたり2,000円程度で販売されているケースもあります。

このモデルが学習者に与える心理的な影響は計り知れません。

例えば、夜10時に民法の難しい概念でつまずいたとします。その時、学習者の頭に浮かぶのは次のような考えです。

「この疑問を解決するために2,000円を払う価値はあるだろうか？」「もう少し自分で調べてみようか」「これは些細な疑問かもしれないから、質問するのはやめておこう」

このように、一つひとつの疑問に値札が付いている状況は、質問という行為に強い心理的な抵抗を生み出します。

結果として、多くの学習者は小さな疑問を解消しないまま学習を進めてしまいます。その「小さなつまずき」が積み重なることで、やがて学習全体への理解が揺らぎ、モチベーションの低下、そして最終的な「挫折」へと繋がるリスクが高まるのです。

見えないコスト：失敗した場合の「機会損失」という落とし穴

ここで、スタディングのモデルが内包する最大の「見えないコスト」が明らかになります。それは「失敗の機会費用（機会損失）」です。

独学やそれに近い環境での学習者の挫折率が極めて高いことは、複数の調査で示されています。

仮に、あなたがスタディングの34,980円のコースを選び、サポート不足が原因でその年の試験に不合格となった場合、失うものは単に34,980円の受講料だけではありません。

本当に失ったのは、合格していれば得られたはずの1年分の行政書士としてのキャリア、収入、そして社会的信用のすべてです。

さらに、再挑戦するためには、もう1年分の学習時間と労力、そして新たな講座費用を投じなければなりません。この1年間の遅れがもたらす金銭的・時間的な損失は、数十万円、あるいはそれ以上に達する可能性があります。

つまり、スタディングの低価格は、この「失敗のリスク」を学習者自身が引き受けることを前提に成り立っていると言えます。

その受講料は、教材とツールへの対価ではありますが、合格までの道のりにおけるリスクを回避するための「保険」は含まれていないのです。

この「保険」の価値こそが、リンクアカデミーとの価格差の本質を形作っています。

リンクアカデミーが提供する価値：「挫折させない仕組み」という投資先

前章で明らかになったスタディングの「取引的」なサポートモデルと、それに伴う「失敗のリスク」。これに対する直接的な解決策として設計されているのが、リンクアカデミーの教育モデルです。

この章では、リンクアカデミーの高価格が、単なる教材費ではなく、合格という成果を確実にするための包括的な「サービス」への投資として、どのように正当化されるかを分析します。

価格の本質：これは教材費ではなく「挫折防止サービス」の料金

リンクアカデミーの約30万円という価格を、スタディングの約3万5千円と同じ土俵で比較することは、本質的な誤解を招きます。

これは、スポーツジムの月会費と、目標達成を保証する専属パーソナルトレーナーの契約料を比較するようなものです。

前者は「施設と器具（ツール）」の利用権であり、後者は「成果（ゴール）」を達成するための専門的な人によるサービスです。

リンクアカデミーの価格は、ビデオ講義やテキストといった「教材」の対価であると同時に、それ以上に「人による失敗防止サービス」への対価として設計されています。

学習者が直面しうるあらゆる困難——学習内容の理解不足、モチベーションの低下、スケジュールの遅れ、孤独感——に対して、専門家チームが積極的に介入し、学習者を合格まで導くための包括的な安全網。その構築と維持にかかるコストが、この価格に反映されているのです。

したがって、この価格は純粋な「コスト」としてではなく、独学の挫折率が9割に達するとも言われる難関試験において、自身の時間とキャリアという最も貴重な資産を「失敗のリスク」から守るための「保険料」であり、「投資」として捉えるべきものなのです。

3つの専門家による手厚いサポート：あらゆる困難に対応する体制

リンクアカデミーの「失敗防止サービス」の中心となるのが、「三位一体サポート」と呼ばれる独自の人によるサポートシステムです。

これは、学習者が経験するであろう困難の種類に応じて、専門性の異なる3人の担当者が連携して対応する体制です。

1. 専門講師（学習内容の疑問を解決）

学習内容そのものに関する疑問を担当します。「この条文の解釈がわからない」「この判例の範囲が理解できない」といった専門的な質問に対して、回数無制限で対応します。

スタディングのチケット制とは対照的に、学習者は心理的・金銭的な障壁なく、疑問が生じるたびにすぐに専門家の助けを求めることができます。

これにより、知識の穴が放置されるリスクを根本から断ち切ります。

2. キャリアナビゲーター（学習方法とモチベーションを管理）

学習の進め方やモチベーション維持を担当します。「仕事が忙しくて計画通りに進まない」「やる気が起きなくなってしまった」といった、学習者の内面的な課題に寄り添います。

独自のモチベーション診断を用いて、個々の学習者がつまずきやすいポイントを事前に把握。パーソナライズされた学習スケジュールを作成したり、定期的なカウンセリングを通じて積極的に学習者を励ましたりします。

これは、問題が発生してから対応する受け身のサポートではなく、問題の発生を未然に防ぐ「予防的」なサポートです。

3. 講座マイスター（システム面のトラブルを解決）

学習システムの使い方など、技術的な問題を担当します。「動画が再生できない」「教材のダウンロード方法がわからない」といったシステム面の不安を取り除き、学習者が学習内容にだけ集中できる環境を保証します。

この3者が連携することで、学習の「内容」「方法」「環境」という、挫折につながるあらゆる要因が網羅的にカバーされます。

これは、単に質問に答えるだけのサポートとは次元の異なる、学習プロセス全体を管理・最適化する「マネージド・サービス」なのです。

投資対効果で考える：合格の確実性がもたらす本当の価値

ここで、スタディングとの約25万円の価格差を、投資対効果（ROI）の観点から再評価してみましょう。

この25万円は、前述の包括的な人による安全網を1年間利用するための費用です。この投資によって得られるリターンは何か。それは、「合格の確実性」の大幅な向上です。

行政書士資格を取得することで得られる生涯にわたる経済的・社会的利益は、数百万円、あるいは数千万円に達する可能性があります。

もし、サポート体制の差によって、リンクアカデミーを選んだ学習者が1年で合格し、スタディングを選んだ学習者が1年目に不合格となり2年目で合格した場合、後者は1年分の機会損失を被ります。

その損失額は、25万円の価格差をはるかに上回る可能性があります。

さらに重要なのは、精神的な負担です。不合格という結果と、もう1年続く学習生活のストレスは、お金には換算できない大きなコストです。

リンクアカデミーへの投資は、この計り知れない機会費用と精神的コストを最小化するための、極めて合理的なリスク管理戦略と見なすことができるのです。

まとめ：あなたはどちらの「リスク」を選ぶか？ – 最適な選択のためのガイド

リンクアカデミーとスタディングの比較分析は、単なる講座の優劣を決めるものではありません。

それは、学習者自身が「どのようなリスクを取り、どのような価値を優先するのか」という、自分の学習スタイルと価値観を見つめ直すプロセスです。

この最終章では、これまでの分析をまとめ、あなたが最適な選択を行うための明確な枠組みを提示します。

2つの講座を徹底比較：あなたに合うのはどちら？

両者の本質的な違いを、以下の比較表にまとめます。これは、本稿全体の結論を1枚に凝縮したものであり、あなたの最終判断を下すための思考ツールです。

比較項目	スタディング – 自己責任型ツール	リンクアカデミー – 成果保証型プログラム
基本思想	テクノロジーによる学習の「製品化」。拡張性を最優先。	人中心のサポートによる「サービス化」。合格という成果を最優先。
価格モデル	分離型（教材とサポートが別）。人的支援は従量課金制。	オールインクルーシブ型（教材、サポート、進捗管理のすべてを含む）。
提供価値	圧倒的なコストパフォーマンスと、場所を選ばない学習の「自由」。	挫折リスクの徹底的な排除と、合格までの「確実性」。
サポート体制	受け身・取引的。学習者のアクション（チケット購入）が起点。	積極的・関係的。運営側からの働きかけ（進捗確認、励まし）を含む。
内在するリスク	自己管理の失敗リスク。疑問やモチベーション低下が解決されず「挫折」する可能性。	初期投資のリスク。高額な初期費用を支払うが、最後までやり遂げられない可能性（ただし極小化されている）。
理想の受講者	強い自己管理能力を持つ、予算重視の学習経験者。	初学者、または独学に不安を感じ、確実な合格を求める多忙な社会人。