はじめに:行政書士講座選びで迷っているあなたへ
行政書士試験の合格を目指すとき、どの講座を選ぶかは単なる教材選びではありません。それは、あなたのキャリアを形作る重要な決断です。数ある選択肢の中でも、特に実績と評判で注目されているのが「ヒューマンアカデミー(クレアール提携)」と「アガルートアカデミー」の2つです。
この2つの講座は、価格や講義時間といった表面的な数字で比較されがちです。しかし、本当に重要なのは、講座の根底にある「指導方針」、つまり合格へと導くための考え方そのものです。一方は、指導実績のある教育機関のノウハウと、大手資格スクールの充実したサポート体制が組み合わさった講座。もう一方は、カリスマ講師を中心に、徹底的な学習量で合格を目指す専門校です。
本記事では、この2つの講座を表面的に比較するのではなく、その核心にある指導方針、講師陣の特徴、具体的なカリキュラム内容、そして学習を支えるサポート体制を詳しく分析します。目的はただ1つ、あなたが自分の学習スタイルや性格、そして合格という目標に対して、本当に合った講座を選ぶための判断材料を提供することです。
第1章:指導方針の違いを理解しよう
講座選びの基本となるのは、その指導方針です。これは、膨大な試験範囲と限られた時間という制約の中で、どうやって合格点を確保するかという考え方の違いを表しています。
ヒューマンアカデミー(クレアール)の「非常識合格法」とは
ヒューマンアカデミー行政書士講座の教育の核となるのは、受験指導校クレアールが長年培ってきた「非常識合格法」という指導方針です。この方針の中心にあるのは、「満点を目指すのではなく、合格に必要な点数を最短で確保する」という合理的な考え方です。
行政書士試験の合格基準点は満点の6割(180点)です。この事実に注目し、安全圏とされる7割の得点を確実に取ることを目標にした戦略が組まれています。これを実現するため、クレアールは過去問を徹底的に分析し、出題頻度の高い重要な論点に学習範囲を絞り込みます。逆に出題される可能性の低い分野は、意図的に学習対象から外すことで、受講生が限られた時間とエネルギーを最重要項目に集中できるよう設計されています。
これは、忙しい社会人や、過去に幅広く学習して挫折した経験を持つ再受験者にとって、学習の負担を軽くし、最後まで続けられるようにするための効率的な戦略と言えます。
アガルートの「一発合格主義」とは
一方、アガルートの方針は、その圧倒的な合格実績が示すように、「一発合格のための徹底的な学習」です。彼らの目標は、単に合格ラインを越えることではなく、しっかりとした準備で余裕を持って合格することにあります。これは、全国平均の数倍にも達する高い合格率という結果に表れています。
この方針は、網羅性の高いカリキュラムによって実現されます。90%を超える高い出題カバー率を誇り、さらには司法書士試験や司法試験予備試験といった、より難易度の高い法律系資格試験の過去問も教材に取り入れることで、受講生をより高いレベルへと引き上げます。このアプローチは、十分な学習時間を確保でき、単なる合格ではなく、初回で確実な合格を目指す意欲の高い学習者に適しています。
この方針の違いは、本質的には2つの異なるリスク対策の考え方の表れです。ヒューマンアカデミー(クレアール)は、学習範囲を合格に必要な領域に絞ることで、「学習量が多すぎて挫折する」というリスクを管理します。対照的にアガルートは、あらゆる出題パターンを網羅することで、「見たことのない問題に遭遇する」というリスクを徹底的に排除しようとします。受講生は、自分がどちらのリスクをより避けたいかに基づいて、選択することになります。
第2章:講師陣の特徴を比較
指導方針を実際の講義で実践するのは、講師です。両講座の講師陣の構成は、その指導方針を色濃く反映しています。
ヒューマンアカデミー(クレアール):実績ある組織の安心感
ヒューマンアカデミー(クレアール)の講座を支えるのは、杉田徹講師や竹原健講師といった、クレアールという評価の確立された教育機関に所属する専門家集団です。彼らは個人のスター講師としてではなく、長年の実績を持つ組織のノウハウを体現する指導者として位置づけられます。
ここでの価値は、個人のカリスマ性以上に、「組織としての信頼性」と「教育システムの安定性」にあります。受講生は、1人のスター講師の才能に賭けるのではなく、専門家チームによって開発・検証されてきた、再現性の高い教育システムを選ぶことになります。これは、安定感と確かな実績を重視する学習者にとって、大きな安心材料となります。
アガルート:豊村慶太講師のカリスマ性
アガルートの価値は、その1点に集約されると言っても過言ではありません。それが、「カリスマ講師」と称される豊村慶太講師の存在です。大手予備校LECで長年看板講師を務めた経歴を持ち、その講義は「情熱的で面白い」「頭に残りやすい」と受講生から絶大な支持を得ています。レビューでは、「豊村先生の講義を見てアガルートに決めた」という声が数多く見られ、彼自身が講座の最大の魅力となっています。
Tシャツ姿で身近なペットボトルを契約法の例に挙げるなど、親しみやすくフランクな語り口で難解な法律用語を解説するスタイルは、多くの受講生に「もっと聴き続けたい」と感じさせ、学習へのモチベーションを強力に引き出します。アガルートのビジネスモデルは、この「豊村効果」—講師への共感と信頼が学習意欲の源泉となる—に大きく依存しています。
この講師モデルの選択は、学習者がどこからモチベーションを得るか、という心理的な問いを投げかけます。確立されたシステムへの信頼から学習意欲が湧くタイプか、それとも特定の指導者への個人的な共感が学習の原動力となるタイプか。これは単に「どちらの講師が優れているか」という問題ではなく、「どちらの指導スタイルが自分を合格へと導いてくれるか」という、より本質的な選択なのです。
第3章:カリキュラムと教材を徹底解剖
指導方針と講師陣というソフト面を支えるのが、講義やテキストといったハード面です。両者の具体的な内容には、それぞれの戦略が明確に反映されています。
講義時間とペース配分の比較
ヒューマンアカデミー(クレアール)
総学習時間は約260時間と設定されています。これは、合格に必要な得点範囲に的を絞るという方針に基づいた、集中的かつ現実的なボリュームです。
アガルート
最も包括的な「入門総合フルカリキュラム」では、インプット講義(知識を学ぶ講義)だけで300時間を超えます。これは、「ライト」版と比較して約74時間も多い講義量であり、圧倒的な網羅性を追求する姿勢の表れです。
テキストと教材の特徴
ヒューマンアカデミー(クレアール)
「科目別3WAYテキスト」が特徴です。これは、基本テキスト、過去問・判例、関連条文を1冊に統合し、学習効率を最大化する設計になっています。
アガルート
受講生から高く評価されているフルカラーテキストが有名です。図表が豊富で視覚的に理解しやすく、メモを書き込むための余白も十分に確保されています。一方で、その網羅性ゆえに物理的に分厚く、ボリュームが大きいことでも知られています。
カリキュラム構成の独自性
ヒューマンアカデミー(クレアール)
合否を分ける記述式問題の対策を特に重視し、「記述マスター講義」に20時間もの時間を割くなど、得点価値の高い分野に戦略的に時間を配分しています。
アガルート
民法などの重要科目において、行政書士試験の過去問だけでは不足する演習量を補うため、司法試験や司法書士試験といった他資格の良問を積極的に取り入れている点がユニークです。「フル」カリキュラムには、一般知識の得点源となる文章理解に特化した「文章理解対策講座」や、条文知識を深く掘り下げる「逐条ローラーインプット講座」が含まれており、より盤石な知識体系の構築を目指します。
【比較表】カリキュラム・教材の主な違い
| 特徴 | ヒューマンアカデミー(クレアール) | アガルート(入門総合フル) | 戦略的意味合い | 
|---|---|---|---|
| 総講義時間 | 約260時間 | 約300時間以上 | 効率性と集中 vs 網羅性と深さ | 
| テキスト形式 | 「3WAYテキスト」(統合型) | フルカラー、分冊形式 | オールインワンの利便性 vs 視覚的な明瞭さと詳細さ | 
| カリキュラムの強み | 高得点価値分野への戦略的集中(例:記述式) | 高い出題カバー率、条文の深い理解 | 合格点最適化 vs 完全な知識習得 | 
| 独自の特徴 | テキスト内に過去問を統合 | 他資格試験の良問を活用 | 実践的応用力 vs 学術的厳密さ | 
| デジタル機能 | Web動画視聴(PC、スマホ、タブレット) | デジタルブック、音声ダウンロード、8段階倍速再生 | 標準的なアクセス vs 高度なデジタル学習機能 | 
第4章:サポート体制が学習の成否を分ける
学習者が独学で直面する最大の壁は、「疑問点を解消できない」という停滞です。この壁を乗り越えるためのサポート体制は、講座の価値を決定づける重要な要素と言えます。
ヒューマンアカデミーの「安心サポート」
ヒューマンアカデミーのサポート体制は、受講生の不安を徹底的に排除する「セーフティネット(安全網)」として設計されています。
質問回数無制限
最大の特徴は、EメールまたはFAXによる質問が回数無制限で可能である点です。これは、特に初学者が抱く「分からないまま先に進めない」という不安を根本から解消する、大きな心理的メリットを提供します。
無料1年延長保証
標準1年間のサポート期間は、申請すれば無料でさらに1年間延長することが可能です。この延長期間中も、質問無制限のサポートは継続されます。これにより、仕事の繁忙期や不測の事態で学習が中断されても、安心して再開できる環境が保証されます。
この2つの制度の組み合わせは、受講生の投じた時間と費用を保護する、他に類を見ない手厚い保証と言えるでしょう。
アガルートの「コミュニティ型サポート」
アガルートは、より現代的でテクノロジーを活用したサポートモデルを採用しています。
質問回数の制限
ヒューマンアカデミーとの最も明確な違いは、個別質問に上限が設けられている点です。「フル」カリキュラムで50回、「ライト」で20回と定められています。講師や有資格者が回答する質の高さは担保されていますが、この制限は個別サポートが有限のリソースであることを示しています。
革新的な代替サポート
アガルートはこの制限を、コミュニティ機能を活用することで補っています。
- バーチャル校舎:受講生同士が交流し、共に自習できるオンライン空間を提供します。
- AWESOMEコンサルティング:豊村講師が毎月開催するYouTubeライブ配信。受講生から寄せられた共通の悩みや質問に答えることで、グループコーチングのような場を創出しています。
このモデルは、自律的に学習を進め、仲間との交流や定期的な専門家とのセッションからモチベーションを得るタイプの学習者に適しています。
【比較表】サポート体制の違い
| サポート機能 | ヒューマンアカデミー(クレアール) | アガルート(入門総合フル) | こんな学習者にとっての決め手 | 
|---|---|---|---|
| 個別質問 | 無制限(Eメール/FAX) | 50回(オンラインシステム) | 常に疑問を解消しながら進みたい、安心感を最優先する学習者 | 
| サポート延長 | 無料1年延長保証(申請要) | 無料延長制度なし | 仕事や家庭の事情で学習計画が不確定な学習者 | 
| コミュニティ機能 | 一般的なカウンセリング等 | バーチャル校舎での受講生間交流 | 仲間との繋がりから刺激を受けたい学習者 | 
| ライブ専門家相談 | オンラインでの講師サポート | 月1回の「AWESOMEコンサルティング」(YouTube Live) | 定期的なグループ形式での質疑応答を好む学習者 | 
このサポート体制の違いは、各社が想定する受講生像を浮き彫りにします。ヒューマンアカデミーは、手厚い個別フォローという「セーフティネット」を必要とする受講生を想定しています。一方、アガルートは、コミュニティツールやグループサポートをより活用できる、自律性の高い受講生を想定していると言えるでしょう。これは「個別指導塾」モデルと「現代的な大学」モデルの選択であり、学習者は自分が問題を解決する上でどちらの環境を好むかを判断基準とすべきです。
第5章:受講料と特典制度を比較
講座への投資は、単なる価格比較では測れません。その費用対効果、そして合格へのモチベーションを最大化する特典制度こそが、真の価値を決定します。
受講料の基本比較
- ヒューマンアカデミー:277,200円
- アガルート(入門総合フル):327,800円
表示価格だけを見れば、アガルートがより高価格帯のプレミアム講座として位置づけられています。しかし、真のコストは各種制度を考慮した後に明らかになります。
アガルートの全額返金制度
アガルートの最も象徴的な制度が、合格時の受講料全額返金特典です(または合格お祝い金5万円の選択も可能)。これは極めて強力な学習動機となり得ます。
ハイリターンだが条件に注意
しかし、この「全額返金」には厳しい条件が付帯します。合格通知書や合格体験記の提出に加え、最もハードルが高いのが、顔と実名を公開した上での合格者インタビュー動画への出演です。プライバシーを重視する学習者にとっては、大きな障壁となり得ます。一方、5万円のお祝い金を選択した場合は、このインタビュー出演は不要です。
これは、自信があり、自らの成功を公にすることに抵抗のない学習者にとっては魅力的な選択肢ですが、そうでない方にとっては実質的に選択しにくいオプションです。
ヒューマンアカデミーの教育訓練給付金
ヒューマンアカデミーの講座は、厚生労働省が管轄する「教育訓練給付制度」の対象に指定されています。
確実に使える公的補助制度
これにより、雇用保険の加入期間など一定の要件を満たす受講生は、講座修了後に受講料の20%(上限10万円)の給付を受けることができます。277,200円の講座の場合、これは最大55,440円の還付に相当し、実質的な負担額を大幅に軽減します。
この制度は、全額返金のような劇的な特典ではありませんが、多くの社会人にとって適用の可能性がある、現実的でリスクのない経済的メリットです。これにより、高額な講座への投資のハードルが下がり、より安心して学習に踏み出すことができます。
これらの特典制度は、単なる金銭的メリットの提供に留まりません。それは、各社が求める特定の受講生像を惹きつけ、選別するための、高度に設計されたマーケティング戦略として機能しています。アガルートの全額返金制度は、その成功を公に語ることを厭わない、自信に満ちた受講生を惹きつけ、その成功体験(インタビュー動画)を次のマーケティングの核として活用する、循環型のモデルを生み出しています。一方で、ヒューマンアカデミーが公的な給付金制度を活用することは、ブランドに「信頼性」と「堅実さ」というイメージを与え、キャリアへの賢明な投資を求める現実的な社会人を惹きつけます。
まとめ:あなたに合った講座はどちら?
これまでの分析を総合すると、ヒューマンアカデミー(クレアール)とアガルートは、全く異なる考え方に基づいた、対照的な2つの「合格への道」を提示していることが明らかになります。最終的な選択は、学習者自身が自らの特性を深く理解し、どちらの道が自分にとって最適かを見極めるプロセスに他なりません。
ヒューマンアカデミー(クレアール)がおすすめな人
以下のような特性を持つ学習者には、ヒューマンアカデミー(クレアール)が最適な選択となる可能性が高いでしょう。
- 不安を抱える初学者:質問回数無制限と無料の1年延長保証という「安心のサポート」が提供する安心感を最優先したい方
- 効率性を求める再受験者:過去の学習経験から、膨大な情報量に惑わされることなく、合格に直結する要点のみを効率的にマスターしたいと考えている方
- 堅実な投資を望む社会人:教育訓練給付制度を活用し、公的な補助を受けながら、経済的に賢明な自己投資を行いたい方
- システムを信頼する学習者:1人のカリスマ講師の魅力よりも、長年の実績に裏打ちされた、体系的で再現性の高い教育システムに信頼を置く方
アガルートがおすすめな人
一方で、以下のような特性を持つ学習者にとっては、アガルートが成功への最短ルートとなり得ます。
- モチベーションを重視する学習者:カリスマ講師の情熱的な講義に触発され、学習自体を楽しみながら進めたい方
- 時間を投資できる完璧主義者:十分な学習時間を確保でき、試験範囲を網羅的に学習し、あらゆる問題に対応できる万全の態勢で本番に臨みたい方
- コミュニティで成長する学習者:バーチャル校舎やライブ配信といった現代的なデジタルツールを活用し、仲間と切磋琢磨する環境で学習意欲を高めたい方
- 挑戦を好む自信家:自らの合格能力に自信があり、全額返金というハイリスク・ハイリターンの挑戦に強い魅力を感じ、成功を公にすることにも積極的な方
最後に:ハイブリッド型の強み
最終的に、ヒューマンアカデミーの提案する価値は、その独自の「ハイブリッド構造(2つの長所を組み合わせた仕組み)」に集約されます。受講生は、どちらか一方の長所を選ぶ必要はありません。
まず、教育の核として、受験指導の名門クレアールが誇る、実績に裏打ちされた「非常識合格法」という洗練された教育メソッドを手に入れます。これは、トップクラスの予備校に期待される品質そのものです。そして、その高品質なカリキュラムを支える基盤として、ヒューマンアカデミーが提供する、他の追随を許さない「安心のサポート体制」—質問回数無制限と無料1年延長保証—が提供されます。
これは、いわば「最高のカリキュラム」と「最強のサポート」を同時に手に入れることに等しいのです。実績あるカリキュラムと、万全のサポート体制。この2つの長所が融合した講座こそが、多くの受験生にとって最も確実で、かつ安心して歩むことができる合格への道筋となるでしょう。
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 ファストパス管理人
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