はじめに|「講義時間」だけを基準に選んで、本当に後悔しませんか?
「行政書士講座を選びたいけれど、結局、何時間くらいの講義を受ければ合格できるんだろう?」
多くの受験生が、この疑問に直面します。比較サイトや予備校のパンフレットには、料金と並んで必ず「総講義時間」という数字が掲載されています。そして、その数字を講座選びの決定的な基準にしてしまう方も少なくありません。
しかし、断言します。総講義時間という“数字”だけを基準に講座を選ぶのは、合格への道を遠回りさせる危険な落とし穴です。
私自身、かつてその罠にはまりました。比較表の数字だけを信じて講座を選び、結果的に時間もお金も大きく浪費してしまったのです。だからこそ、同じ失敗をしてほしくありません。
このレポートでは、単なる数字の比較にとどまらず、その裏にある各予備校の教育思想(フィロソフィー)や、学習設計の背景まで掘り下げます。あなたが「自分に最適な講座」を見極め、後悔のない選択ができるよう、実務経験者としての視点から分析しました。
構成は次の通りです。
- Part 1|主要講座の講義時間をデータで比較し、市場の全体像を把握
- Part 2|講義時間を「総学習時間」という大きな文脈に位置づけ、その意味を正しく理解
- Part 3|短時間型と長時間型、2つの学習モデルの思想と構造を比較
- Part 4|自分に最適な講座を見極めるための具体的な判断フレームワーク
この内容は、かつての私が「契約前に知っておきたかった」と強く思う情報です。数字だけを追うのではなく、その背景にある設計思想を理解することで、あなたは無駄な迷いを減らし、最短距離で合格を目指せるでしょう。
Part 1|2025年版 行政書士講座の講義時間と市場マップ
1.1 2つの潮流:「効率重視型」と「網羅重視型」
2025年の行政書士通信講座市場を俯瞰すると、講義時間を軸に大きく二極化していることがわかります。
- 効率重視型(短時間型)
総講義時間100時間未満。出題可能性の高い分野に絞り、短期間で合格点到達を目指すモデルです。代表例は「スタディング」「フォーサイト」など。スキマ時間活用や低コストが魅力ですが、高度な自己管理が求められます。 - 網羅重視型(長時間型)
総講義時間150時間超。試験範囲をほぼすべてカバーし、基礎から応用まで体系的に学べるモデルです。代表例は「アガルート」「LEC」「TAC」など。安心感と手厚いサポートが特徴ですが、時間的・金銭的な負担は大きくなります。
この二極化は、単なる時間の長短の差ではなく、「合格」へのアプローチという思想の違いを反映しています。講座選びは、この思想と自分の学習スタイルの適合性を見極めることから始まります。
1.2 【主要9社】2025年版 総講義時間マスター比較表
予備校名 | 初学者向けコース | 総講義時間(概算) | コアコンセプト/学習思想 | 想定受講者像 |
---|---|---|---|---|
スタディング | 行政書士合格コース コンプリート | 約90時間 | スキマ時間活用による効率学習 | 多忙な社会人・学生 |
フォーサイト | バリューセット3 | 約83時間 | 非常識合格法(合格点狙い) | 最短ルートで合格を目指す現実派 |
ユーキャン | 行政書士講座 | 約38時間 | 必要最小限に絞った学習 | 法律初学者、学習負担を抑えたい人 |
資格の大原 | パススル行政書士 | 約60時間 | スマホ完結・タイパ重視 | モバイル中心学習者 |
伊藤塾 | 行政書士合格講座 速修コース | 約120時間超 | ゼロから最短合格 | 体系的指導を求める初学者 |
LEC | パーフェクトコースSP | 約200時間超 | 体系的・網羅的カリキュラム | 大手の安心感を求める人 |
TAC | プレミアム本科生Plus | 約215時間 | 一発合格主義 | 初学者から短期合格を目指す人 |
クレアール | 完全合格カレッジコース | 約228時間 | 非常識合格法+Vラーニング | 網羅性と柔軟性を両立させたい人 |
アガルート | 入門総合カリキュラム フル | 約340時間 | 網羅的インプット+ジグザグ学習 | 知識の抜け漏れを防ぎたい人 |
辰已法律研究所 | プレミア☆合格スタンダード講座本科生 | 約289時間 | 司法試験ノウハウ活用 | 深い法理解を求める人 |
※講義時間は最新情報により変動する可能性があります。必ず公式サイトで確認してください。
1.3 各講座に込められた教育思想(フィロソフィー)
- フォーサイト|非常識合格法
配点の高い行政法・民法に集中投下。短時間で合格点を取る戦略的設計。 - スタディング|スキマ時間学習
講義を5〜15分単位に細分化し、移動時間や休憩時間でも学習可能なスマホ完結型。 - アガルート|ジグザグ学習
インプット直後に過去問演習と解説を行い、知識を短サイクルで定着させる。 - クレアール|Vラーニングシステム
長時間講義を30分単位に分割し、高回転学習を可能にする。 - TAC|一発合格主義
入門講義で土台を作り、体系的に積み上げる本格派カリキュラム。
これらの思想は、単なるキャッチコピーではなくカリキュラム設計全体の根幹に関わります。どの思想が自分の学習スタイルと合うかを見極めることが、講座選びの第一歩です。
Part 2|講義時間を正しく捉えるための「総学習時間」という視点
2.1 合格の目安は「総学習時間800時間」
行政書士試験に合格するために必要な学習量は、法律初学者の場合、一般的に800〜1,000時間が目安とされています。
通信講座や予備校を活用した場合でも500〜800時間程度は必要です。
この「800時間」を山登りに例えると、講義時間はあくまでガイド付きツアーの区間にすぎません。残りの道のりは、独力で歩く必要があります。
かつての私は、この「ガイド区間の長さ=登山の総距離」と誤解し、講座選びを誤った経験があります。
2.2 総学習時間の内訳と「講義時間比率」
総学習時間は、次の要素で構成されます。
総学習時間 = 講義視聴時間 + 復習時間 + 独自演習時間 + 模試受験・復習時間
ここで重要なのは講義時間が総学習時間に占める割合(比率)です。この比率を知ることで、その講座がどの程度あなたの学習を構造化してくれるのか、またどれだけ自己管理が必要かが見えてきます。
比率比較の例(総学習時間を600時間と仮定)
講座 | 講義時間 | 講義時間比率 | 自己学習時間の目安 |
---|---|---|---|
ユーキャン | 約38時間 | 約6.3% | 約562時間を自己管理で確保 |
アガルート | 約340時間 | 約56.7% | 約260時間を自己学習で確保 |
- 短時間型講座(例:ユーキャン)
講義時間比率が低く、自由度は高いが自己管理の負荷が極めて大きい。 - 長時間型講座(例:アガルート)
講義時間比率が高く、学習ペースを講座側が構築してくれるが、時間的拘束は大きい。
「短い=楽」ではありません。 短時間型講座は、残りの大半を自分で計画・実行しなければならないことを意味します。
2.3 学習時間が変動する要因と自分の立ち位置
「800時間」という目安は、全員に当てはまるわけではありません。
必要時間は学習経験・背景知識・得意不得意分野によって変動します。
- 学習時間を短縮できるケース
法学部出身者や宅建士など、法律系資格の学習経験がある場合。
法的思考や用語に慣れているため、短時間型講座でも十分対応可能な場合があります。 - 学習時間が増えるケース
法律初学者や勉強習慣がない方の場合。
基礎からの丁寧な解説を必要とし、長時間型講座の方が安全な選択になることが多いです。
自分がどの立ち位置にあるのかを冷静に見極め、「現実の自分」に合う学習設計を選ぶことが、合格への第一歩です。
Part 3|短時間型と長時間型講座の構造的比較分析
3.1 「効率重視型」(総講義時間100時間未満)の特徴とリスク
中核思想:戦略的ミニマリズム
- 特徴
合格点(180点)を効率よく狙うため、配点が高い行政法・民法に学習リソースを集中。
出題可能性が低い論点やコストパフォーマンスの悪い内容は徹底的に削減。
講義は短時間に凝縮され、スキマ時間で学べるよう1講義あたり5〜15分程度に細分化されていることも多い。 - メリット
- 学習時間・受講料が抑えられ、始めやすい
- スマホや隙間時間での効率的学習が可能
- 自己管理ができれば、深い理解と応用力も習得可能
- リスク・デメリット
- 学習範囲が限定的で「足りるか?」という不安が常につきまとう
- 高い自己管理能力と計画遂行力を要求
- 知識が表層的になりやすく、応用問題や応用力が問われる試験で不安が残る場合も
- 質問サポートが制限的な場合が多い
- 代表的講座
スタディング、フォーサイト、ユーキャン、資格の大原(パススル行政書士)など
3.2 「網羅重視型」(総講義時間150時間超)の特徴とリスク
中核思想:体系的マキシマリズム
- 特徴
試験範囲をほぼ網羅し、基礎から応用まで段階的に丁寧に指導。
長時間の講義と豊富な演習問題で堅牢な知識体系を構築。
講義は2時間以上のまとまった単元も多く、学習計画も講座が主導。 - メリット
- 幅広い知識を習得し、安心感が大きい
- 初学者に優しく、手厚いサポート体制が充実
- 計画の精神的負担が軽減され、モチベーション維持に繋がる
- 模擬試験や個別指導など多彩なサポートが利用可能
- リスク・デメリット
- 膨大な情報量に圧倒され「消化不良」になりやすい
- 講義視聴だけで満足してしまい、受動的学習に陥る危険性
- 高額な受講料と長期の学習時間が必要
- 学習スケジュールに縛られ、柔軟性に欠ける場合も
- 代表的講座
アガルートアカデミー、伊藤塾、LEC東京リーガルマインド、TAC、クレアール、辰已法律研究所など
3.3 2つの思想を比較する ― メリット・デメリット早見表
比較項目 | 効率重視型(短時間) | 網羅重視型(長時間) |
---|---|---|
理想の受講者像 | 規律ある自己管理者、忙しい社会人、経験者 | 法律初学者、心配性の学習者、深い理解を求める人 |
講座が約束するもの | 必要最小限の「地図とコンパス」 | 体系的な「ガイド付きバスツアー」 |
学習スタイル | 自己主導的、能動的、高い自律性 | 受動的、講師依存型、低い自律性 |
最大のメリット | スピード、低コスト、柔軟性 | 安心感、網羅性、計画不要の構造 |
最大のリスク(後悔) | 「講義は早く終わったが、残りを一人で歩く不安」 | 「講義が長すぎて途中で挫折、試験直前まで旅程半分」 |
このように、どちらのモデルにも長所と短所が存在します。
自分の学習スタイルや生活環境、性格を踏まえて、どちらの思想が合うかを冷静に見極めることが、後悔しない講座選びの鍵です。
Part 4|後悔しない講座選びのための実践フレームワーク
4.1 受講前に必ず行うべき自己分析チェックリスト
講座を選ぶ前に、まずは自分自身を客観的に分析しましょう。以下のチェックリストを活用して、「理想の自分」ではなく「現実の自分」に合った講座を見極めることが大切です。
- 時間の現実把握
- 毎日確保できる学習時間は?(例:通勤時間15分×往復、週末3時間など)
- 疲れている日や忙しい日の学習可能時間はどの程度か?
- 予算の総合計算
- 講座料金だけでなく、模試代や追加教材費を含めた総額はいくらか?
- 費用対効果を考慮し、無理のない範囲か?
- 学習スタイルの自己診断
- 自ら計画・管理する「建築家タイプ」か?
- 決められたカリキュラムに従う「乗客タイプ」か?
- 心理的な不安の源泉を知る
- 「重要論点を漏らすかも」という網羅性への不安か?
- 「情報が多すぎて消化できない」という未消化への不安か?
4.2 失敗事例から学ぶ「講座思想」と「自分の現実」のマッチング
講座選びの失敗は、「講座の教育思想」と「自分の現実的状況や性格」が合致しなかったことに起因します。実際の失敗例を通じて、その教訓を学びましょう。
- 情報過多に溺れた田中さんのケース
知識の抜け漏れを恐れ、総講義時間300時間超の網羅重視型講座を選択。
膨大な情報量に圧倒され、途中で挫折し、試験直前に十分に消化できず不合格に。 - 自己管理過信によるミニマリストの失敗
多忙を理由に短時間講座を選び、1ヶ月で講義視聴完了。
しかし、残りの学習を自力で管理できず、不安から市販教材を買い漁る結果、効率性を損なった。
これらの失敗は、「講座の思想と自分の現実がかみ合っていなかったことが最大の原因」です。
後悔しないためには、自分の学習スタイルや生活環境を正確に把握し、講座の教育哲学に合った選択が不可欠です。
4.3 講義時間以外に注目すべき、本当に重要な判断基準
講義時間の長さだけでなく、以下の本質的な要素にも目を向けましょう。
- 学習システムの一貫性と連携
講義・テキスト・問題演習がシームレスに連携しているか?
例:スタディングの「学習フロー」、アガルートの「ジグザグ学習」、クレアールの「Vラーニングシステム」。 - 教材・テキストの質
フルカラーの視覚教材か、伝統的な文字中心か、デジタル・紙媒体の対応など、学習効率に直結。 - サポート体制の充実度
無料質問回数や個別カウンセリングの有無、模試の質や回数。初学者ほど重要な生命線。 - 講師との相性
無料サンプル動画で講師の話し方や説明スタイルを確認。数百時間を共にするパートナー選びと心得るべし。
これらの要素が総合的にマッチした講座こそ、あなたにとって「最適な講義時間」を実現できるでしょう。
まとめ|あなたにとって本当に最適な講義時間とは?
行政書士講座に「これが最高の講義時間だ」という絶対値は存在しません。
大切なのは、あなた自身の時間、予算、学習スタイル、そして心理的な特性に合った講座を選ぶことです。
- 短時間講座の「自由」は、同時に「自己責任」の重さを伴います。
自ら計画し、自己管理を徹底できる方には最適ですが、管理が苦手な方には不安が募るリスクもあります。 - 長時間講座の「安心感」は、膨大な情報量と学習時間を消化する負担も意味します。
体系的に学びたい初学者や、学習を講座に委ねたい方に向いていますが、途中挫折のリスクも高まります。
単に「講義時間の数字」を比較するだけでなく、講座の教育思想とあなたの現実を照らし合わせて判断してください。
この視点を持つことで、後悔のない選択が可能となり、最短距離での合格が見えてくるはずです。
当サイトの詳細レビューや比較情報を参考に、あなたに最適な講座選びを進めてください。
合格への最短ルートは、数字の裏にある「思想」と「現実」の交差点にあります。

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