目次

1. 結論|講座教材だけで行政書士試験に合格できるのか?

1.1 総合評価:理論上は可能。ただし多くの受験生にとってはサブ教材の戦略的活用が安全策

行政書士試験は、質の高い講座教材を使えば理論的にはそれだけで合格可能です。
実際、主要予備校の教材は出題範囲を高い精度で網羅し、過去には講座テキストのみで合格した事例も少なくありません。
しかし、全ての受験生にこの方法が最適とは限らず、多くの合格者は弱点補強や演習量の確保を目的に、市販のサブ教材を併用しています。
結論として、「講座教材のみでも合格は可能だが、学習状況に応じてサブ教材を戦略的に組み込む方が、合格の確度をより高められる」というのが本レポートの立場です。

1.2 「講座テキストだけで合格可能」派の根拠とメリット・注意点

根拠

  • 網羅性:アガルートは出題カバー率97%を公表、フォーサイトも重要論点を精選して教材化しており、出題可能性の高い範囲を効率的に学べます。
  • 効率性:不要な周辺知識を省き、短期間で合格基準点に届く設計。特にフォーサイトは「満点ではなく合格点を狙う」思想が特徴です。
  • 実績:公式体験談でも「教材一本で合格」例が多数掲載され、その有効性が裏付けられています。

メリット

  • 学習内容の一貫性が保たれ、混乱を防ぐ
  • 教材が限られるため繰り返し学習しやすい
  • 市販書籍の追加購入が不要でコスト削減可能
  • カリキュラムに沿って進めるだけで学習計画が明確

注意点(デメリット)

  • 解説が自分の理解スタイルに合わない場合、論点の理解が深まらない
  • 講座によっては演習量が不足し、初見問題への対応力が育たない
  • 情報源が一つに偏ると、応用力や多角的視点が身につきにくい

1.3 「市販サブ教材も併用すべき」派の根拠とメリット・注意点

根拠

  • 知識補完:完璧な教材は存在せず、理解が浅い論点や不足分は市販書で補える
  • 演習量の確保:過去問や一問一答の追加でアウトプット量を増やせる
  • 多角的視点:異なる解説や図表で理解が深まり定着度も向上
  • 法改正対応の補強:最新の市販教材を参照することで抜け漏れを防げる

メリット

  • 苦手科目に特化した集中的な対策が可能
  • 網羅性を補い、不安感を軽減
  • 新しい教材で学習意欲の停滞を防ぐ

注意点(デメリット)

  • 教材が増えすぎると情報過多になり、知識が断片化する
  • 学習計画が崩れるリスク
  • 質の高い教材は追加コストが発生

1.4 主要講座の公式見解と実態分析

アガルート(Agaroot)

  • 公式見解:高価格帯・高網羅性の「オールインワン」教材を提供し、97%の出題カバー率を掲げる
  • 実態:教材量が膨大で、すべて消化できれば十分な実力がつくが、演習量確保のために市販問題集を併用する受講生も多い

フォーサイト(Foresight)

  • 公式見解:「教材以外は見ない方が良い」と明言し、合格点180点を効率的に狙う設計
  • 実態:時間の限られた社会人に好評。教材は視覚的に分かりやすいが、重点外の苦手分野は独力で補う必要がある

スタディング(Studying)

  • 公式見解:低価格・スマホ完結型で「教材だけで合格可能」とアピール
  • 実態:最安プランは演習機能がなく、市販教材との併用前提。問題演習付きプラン以上で初めて「教材だけで完結」が可能

2. 【必見】目的別おすすめ市販教材リストと詳細評価

2.1 市販教材市場の全体像と選び方の基本指針

行政書士試験向けの市販教材は、大手資格予備校が発行するシリーズが市場の中心を占めています。
代表的なシリーズには以下があります。

  • 『合格革命』シリーズ(早稲田経営出版/TAC Wセミナー)
    網羅性と分かりやすさのバランスが優れた王道教材
  • 『出る順』シリーズ(LEC東京リーガルマインド)
    長年の実績と見開き完結型のテンポの良さが特徴
  • 『うかる!』シリーズ(伊藤塾/日経BP)
    法的理解を重視した丁寧な解説が売り
  • 『みんなが欲しかった!』シリーズ(TAC出版)
    イラスト・図解を多用したビジュアル重視型
  • 『合格のトリセツ』シリーズ(LEC東京リーガルマインド)
    独学者向けに設計された比較的新しい定番

選定の基本指針
最も効率的な戦略は、「基本テキストとメイン問題集を同一シリーズで揃える」ことです。
これにより、解説スタイルや用語の統一性が保たれ、教材間の相互参照がスムーズになり、学習効率が大幅に向上します。
その上で、苦手分野の克服や演習量の追加など、特定目的に応じて他シリーズの教材をピンポイントで導入するのが理想的です。

2.2 基本テキスト(総合参考書)の比較と選定ポイント

基本テキストは、独学者にとっては学習の軸であり、講座受講者にとっても副読本や補完教材として重要です。
自分の理解スタイルや学習環境に合った一冊を選ぶことが、合格までの道のりを大きく左右します。

シリーズ名出版社特徴スタイル対象レベル
合格革命 行政書士 基本テキスト早稲田経営出版網羅性と読みやすさのバランスが良い。分冊可で持ち運びやすいフルカラー・図表豊富初学者~中級者
うかる! 行政書士 総合テキスト伊藤塾(日経BP)法律の丁寧な解説に定評。無料講義動画付きフルカラー・文章主体初学者~上級者
出る順行政書士 合格基本書LEC見開き完結型でテンポが良い。伝統と実績あり2色刷り・文字主体中級者・法律学習経験者
みんなが欲しかった! 行政書士の教科書TAC出版イラストや図解中心でとっつきやすいフルカラー・ビジュアル重視完全初学者・活字が苦手な人
行政書士 合格のトリセツ 基本テキストLEC独学者ファースト設計。フルカラーで読みやすいフルカラー・バランス型初学者

近年の傾向

  • 文字主体の従来型テキスト(例:『出る順』)に加え、視覚的アプローチを重視したシリーズ(例:『みんなが欲しかった!』)が台頭
  • 『合格革命』『うかる!』など、詳細な解説と見やすいレイアウトを融合した「ハイブリッド型」が人気
  • 選択基準は「市場で一番良いもの」ではなく、「自分に最も合うもの」であることが重要

2.3 分野別過去問題集(アウトプット教材)の特徴と活用法

過去問演習は、行政書士試験対策の中心となるアウトプット作業です。
特に分野別に整理された過去問集は、理解の定着と弱点補強に有効です。

『出る順行政書士 ウォーク問過去問題集』(LEC)

  • 特徴:約600問の圧倒的な問題量、B6判分冊可能で携帯性抜群
  • 強み:あらゆる出題パターンを反復練習できる
  • 弱み:量が多く計画的に進めないと消化不良に陥る
  • 最適用途:メイン演習教材として知識定着と解答パターン習得に活用

『合格革命 行政書士 基本問題集』(早稲田経営出版)

  • 特徴:同シリーズの『基本テキスト』との高い連動性
  • 強み:各設問の解説に参照ページを明記、インプットとアウトプットの往復が容易
  • 弱み:問題数は『ウォーク問』より少なめ
  • 最適用途:『合格革命 基本テキスト』使用者が効率的に復習サイクルを回すための教材

2.4 肢別過去問集(一問一答形式)の強みと効果的な活用シーン

肢別過去問集は、短時間で知識を確認・定着させるのに非常に優れた教材です。特に通勤・通学などのスキマ時間活用に適しています。

『合格革命 行政書士 肢別過去問集』(早稲田経営出版)

  • 特徴:約2,700肢以上を収録した圧倒的網羅性
  • 強み:全論点を細かくチェックでき、知識の穴を徹底的に洗い出せる
  • 弱み:全問を回し切るには相応の学習時間が必要
  • 最適用途:通勤時間や休憩時間に知識確認、基礎定着度の高速チェック

『出る順行政書士 良問厳選 肢別過去問題集』(LEC)

  • 特徴:付属アプリでスマートフォン学習に対応
  • 強み:デジタル学習と組み合わせた効率的な反復が可能
  • 最適用途:スマホやタブレットを中心に学習する受験生向け

2.5 記述式対策問題集の選び方とシリーズ別特徴

行政書士試験の記述式は配点が高く、合否を左右する重要分野です。
各教材シリーズはアプローチが異なるため、自分の到達度や課題に合わせて選びましょう。

『合格革命 行政書士 40字記述式・多肢選択式問題集』(早稲田経営出版)

  • 特徴:基礎編(条文・判例穴埋め)と応用編(予想問題)の二段階構成
  • 強み:初学者でも段階的に記述力を養える
  • 最適用途:記述対策を基礎から始めたい人向け

『みんなが欲しかった! 行政書士の40字記述式問題集』(TAC出版)

  • 特徴:解答に至る思考プロセスをマニュアル化
  • 強み:記述が苦手な人でも安定得点が狙える
  • 最適用途:解答手順を体系的に習得したい人向け

『出る順行政書士 40字記述式・多肢選択式問題集』(LEC)

  • 特徴:やや難易度高めで実践力強化に最適
  • 強み:本試験を易しく感じられるレベルまで鍛えられる
  • 最適用途:基礎が固まり、さらに上を目指す中~上級者

2.6 一般知識分野の対策用教材と効率的学習法

一般知識は足切り回避が必須でありながら、後回しにされがちな分野です。
効率的に学習するためには、専用教材や講座オプションを活用するのが効果的です。

推奨教材

  • 『出る順行政書士 ウォーク問過去問題集 2 一般知識編』(LEC)
    法令編とセット利用で、過去問ベースの堅実な対策が可能
  • 『合格革命 行政書士 一問一答式 出るとこ千問ノック』(早稲田経営出版)
    一般知識も含む要点確認に最適。短時間で論点チェックが可能
  • 講座オプション教材
    アガルート「基礎知識・時事オールインワン講座」、スタディング「合格のための論点200」など
    頻出論点が凝縮されており、直前期の総まとめに有効

学習のポイント

  • 法令分野と並行して早期から少しずつ進めることで負担を分散
  • 時事問題は最新情報に差し替え可能な教材を選び、試験直前までブラッシュアップ
  • 過去問と要点集の併用で、短時間かつ高効率な暗記サイクルを構築

2.7 市販模試・予想問題集の比較と効果的な活用法

本試験直前期の仕上げには、市販の模試・予想問題集を活用することで実戦力を高められます。
特に本試験と同じ3時間を計って解くことで、時間配分や精神的プレッシャーへの耐性も養えます。

書籍名出版社収録回数難易度(評判)特徴
本試験をあてる TAC直前予想模試TAC出版3回分本試験レベル重要度・難易度ランク付きで復習しやすい
出る順行政書士 当たる!直前予想模試LEC3回分本試験レベル的中率に定評、正答率データで客観的分析が可能
合格革命 行政書士 法改正と直前予想模試早稲田経営出版3回分本試験レベル法改正まとめ付き、シリーズ総仕上げに最適
うかる!行政書士 直前模試伊藤塾(日経BP)2回分やや難解説が非常に詳しく、実力試しに適する

活用のポイント

  • 模試は単に点数を取るためではなく、「弱点発見ツール」として使う
  • 解いたら必ず復習し、間違えた論点はテキストや過去問に戻って確認
  • 複数社の模試を解くことで、出題傾向の違いに慣れられる
  • 直前期は「予想問題集+法改正まとめ」の組み合わせで完成度を高める

2.8 参考:予備校実施の公開模試の特徴とメリット

書籍形式の模試とは異なり、予備校が実施する公開模試には以下のような独自の利点があります。

主なメリット

  1. 相対評価が可能
    多数の受験者と比較することで、自分の現時点での順位や偏差値が分かる
  2. 本番同様の環境を体験
    会場模試では本試験と同じ緊張感を味わえ、精神面のリハーサルになる
  3. 詳細な成績表による分析
    分野別の正答率や全国平均との比較ができ、弱点を客観的に把握できる

主要予備校の公開模試

  • LEC:業界最大規模、実施回数も豊富(例:全7回)、レベル別模試あり
  • 伊藤塾:例年4,500人以上が受験、難易度はやや高めで的中率に定評
  • TAC:多くの資格試験で実績があり、本試験レベルの問題作成力に定評
  • アガルート:オンライン受験可、豊村講師作成の良問に挑戦できる

活用のポイント

  • 学習中期~直前期に受験し、得点よりも弱点発見を重視する
  • 会場受験が難しい場合はオンライン模試を活用し、時間制限・本番環境を再現
  • 成績表の分析結果をもとに、残り期間の学習計画を修正する

3. サブ教材を最大限活かす学習戦略

3.1 導入タイミング別 ― 学習初期/中期/直前期の最適活用法

サブ教材は「いつ」「どの目的で」導入するかが合否を左右します。学習段階ごとの最適な活用方法は以下の通りです。

  • 学習初期(11月~2月頃)
    原則としてサブ教材は不要。講座教材または選んだ基本テキストを使い、まずは全範囲を1周することに集中する。
    この時期は基礎固めが最優先であり、情報源は一本化するのが効果的。
  • 学習中期(3月~8月頃)
    過去問演習を本格化し、苦手分野の洗い出しと補強を行うフェーズ。
    弱点分野には分野別問題集や別テキストをピンポイントで追加。
    また、肢別過去問集を導入してスキマ時間の反復学習を習慣化すると効率的。
  • 直前期(9月~試験日)
    実戦力と総合力の仕上げ段階。
    市販模試・予想問題集で本試験同様の3時間演習を行い、時間配分と解答順序の最適化を図る。
    記述式問題集もこの時期から集中的に実施。要点整理テキストを使い、知識の最終確認と暗記を完了させる。

3.2 教材選びで失敗しないための4つの鉄則

  1. 教材コレクターにならない
    不安から教材を次々買い足すのは逆効果。一冊をやり切る方が断然効率的。
  2. シリーズ統一を意識する
    基本テキストと問題集は可能な限り同一シリーズに揃える。用語や解説の統一で学習効率が大幅向上。
  3. 最新版を使用する
    法改正が多い試験なので、古い年度版の使い回しはリスク大。特に再受験生は必ず最新版を購入。
  4. 導入目的を明確にする
    「なぜこの教材が必要か」を明確にし、弱点補強・演習量増加・理解不足補完など、用途をはっきりさせて選定する。

3.3 知識を集約する「情報一元化」テクニック(アナログ/デジタル)

学習効率を最大化するためには、インプットとアウトプットを繰り返す「ジグザグ学習」の中で、知識を一元的に管理することが重要です。

アナログ手法

  • テキストへの直接書き込み
    講義の補足情報、過去問で間違えたポイント、模試で得た知識をメインテキストに集約。自分専用の「最強テキスト」に育てる。
  • 問題集中心の集約
    アウトプット重視派は、肢別過去問集などに関連知識を書き込み、復習効率を高める。
  • 六法を情報ハブに
    条文横に判例要旨や暗記メモを貼り付け、条文ベースで知識を整理する上級者向け手法。

デジタル手法

  • ノートアプリ活用(例:iPad + GoodNotes)
    PDF版教材や自炊データを取り込み、解説ページに関連テキストのスクショやメモを貼り付ける。
    YouTube解説や法令データベースのリンクを埋め込むことで、検索性とアクセス性が飛躍的に向上。
    持ち運びやカスタマイズが容易になり、インプットとアウトプットの往復が高速化する。

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