【伊藤塾活用術】思考力を鍛える「書き込み式テキスト」の作り方と講義の復習法

1. 伊藤塾の理念とテキスト設計の核心

1.1 「合格後」から逆算する教育方針

伊藤塾の行政書士試験対策は、単なる試験合格だけをゴールにしていません。創設者・伊藤真塾長が掲げる理念は 「合格後を考える」 こと。
これは、合格後に「真の法律家・行政官」として社会に貢献できる人物を育てることを目的としています。そのため、講義内容や教材設計にも一貫してこの視点が反映されています。

例えば、行政書士講座では「明日の行政書士講座」といった無料イベントを定期的に開催し、現役行政書士や実務家の話を直接聞く機会を提供。受講生が合格後の自分を具体的にイメージできるよう支援しています。

伊藤塾が重視する「真の法律家・行政官」に必要な能力は、次の3点に集約されます。

能力区分	内容	意義
知識	現実を正しく捉えるための基礎	全ての判断の土台
思考力・応用力	知識を自分事として考え、応用できる力	未知の問題に対応可能
問題発見・解決力	課題を見つけ、行動に移せる力	実務に直結する行動力

この視点に立つと、受講料は単なる「費用」ではなく、早期合格による時間の獲得と、実務で通用する能力を得るための自己投資 となります。

1.2 暗記を超える「法律家の思考法（リーガルマインド）」習得

理念を現実の学習プロセスに落とし込むと、キーワードは 「法律家の思考法」 です。
条文や判例の丸暗記ではなく、法律の原則に立ち返って論理的に結論を導く力を養うことが重視されます。

行政書士試験では、単なる過去問の焼き直しではない「現場思考型」問題が出題されることがあります。このような問題に、暗記中心の学習だけでは対応困難です。しかし、法律家の思考法が身についていれば、事実関係を整理し、適用すべき法原則を見極め、論理的な結論を導き出すことができます。

伊藤塾の講師陣もこの姿勢を徹底しており、例えば平林勉講師はブログタイトルを「思考と体系の館」とし、知識を点ではなく線や面として結び付ける体系的理解を促しています。

1.3 白黒＋余白の多いテキスト ― 思考を刻み込むキャンバス

伊藤塾のテキストは、あえて 白黒・余白多め のシンプルな設計です。これはコスト削減ではなく、学習者の思考を促すための戦略的デザインです。

市販のカラフルな教材は分かりやすい反面、情報整理がすでに終わっているため、学習者が自ら考える機会を奪う恐れがあります。対して伊藤塾のテキストは「未完成のキャンバス」。講師の解説や自分の理解に基づき、マーカーやメモで情報を加えて完成させていきます。

例：

• 原則は青、例外は赤でマーク
• 重要な判例は緑で囲む
• 条文番号や関連ページを余白に記載

このように、自分で判断し書き込む作業そのものが思考プロセスとなり、知識は「自分だけの生きた情報」として定着します。

実際、合格者からは「白黒テキストの方が、自分のマーカーやメモが目立って復習しやすかった」という声も多く聞かれます。つまり、このテキストは完成品ではなく、受講生が“自分専用の最強テキスト”を作り上げるための素材 なのです。

2. 実践編｜「最強のテキスト」を作り上げる書き込みテクニック

2.1 マーカーの色で知識を体系化する ― 色分けルールの構築

伊藤塾のテキストを「最強の武器」に育てる第一歩は、色に意味を持たせることです。
色分けは単なる装飾ではなく、知識の種類や重要度を瞬時に識別するための“視覚的言語”になります。重要なのは、自分で決めたルールを最後まで一貫して使い続けることです。

合格者が実践したマーカー色分け例

色	意味	狙い・効果	実践者
青	原則・要件	法律構造の骨格部分を明確化	松原 真司さん
赤 / ピンク	例外・頻出ミス・重要用語	弱点や要注意ポイントを強調	田邊 めぐみさん、松原 真司さん
緑	条文・判例	法的根拠を明確に区別	松原 真司さん
黄	定義・趣旨	記述式や論述で説得力を持たせるための基礎	松原 真司さん
紫	補足的例外	情報階層を細分化	松原 真司さん

工夫次第で応用も可能です。
例：基礎講座は青、実践講座は緑にすることで、両方で扱われた箇所を一目で重要論点と判別できるようにするなど。

2.2 すべての知識を集約する ― 「情報一元化」の原則

伊藤塾式学習法の核心のひとつが 情報一元化 です。
これは、講義内容、過去問、模試、演習、補足資料など、あらゆる情報をテキストの該当箇所に集約するというものです。ノートや別冊に分散させるのではなく、母艦としてのテキストに統合することで復習効率が飛躍的に向上します。

書き込むべき情報例：

• 講師のコメントや具体例
• 関連条文・論点のページ番号（例：「民法§95参照」）
• 過去問の出題履歴（例：「H28-40-ア」）
• 演習で間違えた理由と改善策
• 自作の図やフローチャート
• 縮小コピーした重要レジュメやスライドの貼付

こうして全情報を一元化することで、テキストは単なる参考書から、自分専用の法律データベースに進化します。

2.3 上級編 ― デジタルとアナログを組み合わせたパーソナライゼーション

「情報一元化」の基本は紙テキストへの書き込みですが、デジタルを組み合わせることでさらに効率化できます。

• iPad＋ノートアプリ活用
  GoodNotesやNotabilityにPDF版テキストを取り込み、手書き・検索機能を併用。大量教材も一括携帯でき、編集が容易になります。
• 環境刷り込み学習
  覚えにくい論点や図表を印刷し、トイレやデスク前など毎日必ず目に入る場所に貼って記憶を強化。
• サテライト・ノートの戦略的活用
  まとめノートは不要が原則ですが、例外として直前期の「弱点ノート」や通勤用の「要点カード」を作成し、デッドタイムに復習。これは母艦テキストの情報を任務別に抽出した補助ツールです。

このように、テキスト（母艦）を常に最新で最強の状態に保ちつつ、状況に応じた補助ツール（偵察機）を併用することで、あらゆる時間と場所を学習機会に変えられます。

3. 合格力を底上げする「復習サイクル」の作り方

3.1 記憶を定着させる最適リズム ― 自分専用の復習間隔を見つける

法律学習は「忘却との戦い」です。伊藤塾も復習を重視し、カリキュラムに「復習アシスト講義」を組み込むなど、反復継続の重要性を強調しています。

汎用的な「24時間以内・週末まとめ」の復習スケジュールも有効ですが、さらに効果的なのが 「学習日記録法」。
これは、テキストのページ左上に学習日を記録していく方法です。

効果：

• 弱点の可視化
  学習日が集中しているページ＝苦手分野が一目で判明。
• 自分だけの最適間隔を発見
  「この論点は3日おきで維持」「こちらは1週間に1回で十分」といった個別データが蓄積。

この記録に基づく復習は、主観的な“やったつもり”を排し、客観データに基づく戦略的学習を可能にします。

3.2 思考過程を鍛える ― アクティブ・リコールの徹底

アクティブ・リコール（能動的想起） は、単に思い出すだけでなく、知識の構造を頭の中で再構築し、説明できるレベルまで高める訓練です。
行政書士試験では、この力が現場思考型問題への対応力を左右します。

実践方法：

1. キーワード再構築法
   白紙に論点の見出し（例：「詐害行為取消権　①意義・趣旨　②要件」）だけを書き、記憶から関連知識をすべて書き出す → テキストで答え合わせ。
2. 講義再現法
   テキスト余白のメモから講師の説明や例え話を思い出し、講義を頭の中で再演する。
3. 音読＋自己解説
   マーカー部分を声に出し、初学者に説明するつもりで自分の言葉に置き換える。

これらは、インプット中心の学習をアウトプット型に変え、試験本番での瞬発力を鍛えます。

3.3 模試を活かす ― テキスト連動型の戦略的復習ループ

模擬試験は単なる実力試しではなく、弱点発見とテキスト補強の材料です。
伊藤塾の推奨する模試復習法は、次の3ステップで構成されます。

フェーズ	内容	目的
データ収集（自己評価）	解答解説を見る前に、自信度をA/B/Cで判定	「分かったつもり」をあぶり出す
分析（誤差特定）	自己評価と実際の結果、問題ランクのギャップを確認	知識不足か思考力不足かを判別
統合（テキスト反映）	該当箇所に「模試で失点」等のメモを追記し再マーク	知識の穴・思考の型を埋める

知識不足なら条文や判例を追記し、思考力不足なら判断基準や比較視点を明記します。
これにより、模試→分析→テキスト強化という改善サイクルが完成し、試験本番までに弱点を徹底的に潰せます。

まとめ｜伊藤塾テキストを“自分専用の最強ツール”に育てる

伊藤塾の行政書士テキストは、あえて白黒・余白多めという“未完成”の状態で提供されます。
その意図は明確で、受講生自身が講義や演習を通じて情報を取捨選択し、構造化しながら書き込みを加えることで、法律家の思考法（リーガルマインド） を身につけるためです。

この記事で紹介した

• 色分けルールによる知識の体系化
• 情報一元化による効率的な復習基盤の構築
• デジタルとアナログを融合させたパーソナライゼーション
• アクティブ・リコールや模試連動型復習ループ

といった実践法は、単に点数を上げるためのテクニックではありません。
試験合格後も通用する“考える力”を鍛え、実務で即戦力となる基盤を作ります。

伊藤塾の教材は、読むだけでは他の受験生と差がつきません。
しかし、ここで紹介した方法で“自分仕様”に作り込み、徹底的に使い倒せば、テキストはあなた専用の最強の法律武器となり、合格を確実に引き寄せるはずです。