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行政書士通信講座市場の最新動向と選び方の視点

行政書士試験対策の通信講座市場は、成熟の段階に入りつつありますが、依然として競争は熾烈です。価格や講義時間といった従来の比較軸にとどまらず、各社は「教育理念」「テクノロジーの活用」「学習者の不安への配慮」といった、より高度な要素で差別化を図っています。

本記事の出発点は、「すべての人にとって完璧な講座は存在しない」という前提にあります。つまり、本当に“良い講座”とは、講座ごとの強みと、受講者自身の状況(予算、可処分時間、学習スタイル、ITリテラシー、リスク許容度など)が、どれほど高い精度でマッチするかによって決まります。

そこで本記事では、まず主要7社の2025年度向け初学者対象コースについて、事実ベースのデータを網羅的に整理します。次に、それらの情報を軸に、価格や保証制度、教育方針、サポート体制などの観点から多角的に分析を行います。そして最終章では、学習者タイプ別に最適な講座を提示し、「後悔しない選択」をサポートします。

「なんとなく選ぶ」ではなく、「戦略的に選ぶ」ことで、合格への道のりはぐっと近づきます。

1.1 伊藤塾|法律学の王道を歩む本格派講座──合格後の実務まで見据えた徹底指導

伊藤塾は、法律系資格予備校の中でも長年の実績と信頼を誇る老舗です。単なる試験対策にとどまらず、行政書士としての実務に通じる法的思考力の育成を重視した教育理念が特徴です。

講座概要

  • 講座名:2025年合格目標 行政書士合格講座 スタンダードコース
  • 受講料:公式サイトに明示なし(※学生割引30%OFF、再受講割引40%OFFなどあり)
  • 総講義時間:おおよそ189時間〜
     └ 合格戦略編・基礎構築編・基礎養成編・記述式対策・公開模試解説を含む

教材とカリキュラム

  • 教材:基礎構築テキスト、合格テキスト、一問一答集、完成問題集など網羅性に優れた構成
  • 指導体制:平林講師(インプット)、藤田講師(アウトプット)の分業制による専門指導
  • 学習設計:「段階式カリキュラム」により、初学者でも無理なく理解を深められる構成
  • 2025年法改正対応:公式サイトに記載なし

サポート体制

  • 質問制度:マイページから週1回まで質問可能。Zoomによる質問会も全5回実施予定
  • 個別カウンセリング:クラスマネージャー(合格者)や講師による個別相談サポートあり
  • 学習管理:マイページ経由で動画講義を提供。eラーニング機能自体はシンプル

模試・添削

  • 模擬試験:公開模試2回分が含まれる
  • 記述式対策:添削についての記載はないが、記述式演習自体はカリキュラムに含まれる

合格実績

  • 2024年度 合格者数:368名(累計合格者数も公表)
    ※ただし、特定コースの合格率は非公表

教育訓練給付制度

  • 対応状況:対象かどうかは公式サイト上に明確な記載なし

まとめ

伊藤塾の行政書士講座は、合格後を見据えた体系的な学習を重視した「本格派向け」の講座です。時間と費用を投じてでも、法的理解を深め、実務に直結する知識を身につけたい方に特におすすめです。

1.2 アガルート|高い合格率と全額返金特典が魅力の次世代型オンライン講座

アガルートは、オンライン学習に特化した法律系スクールとして急成長を遂げている新興勢力です。合格率の高さと、合格時の全額返金制度といった強力なインセンティブ設計により、短期間で多くの支持を集めています。

講座概要

  • 講座名:2025年合格目標 入門総合カリキュラム(フル/ライト)
  • 受講料(税込)
  • フル:327,800円(割引前)
  • ライト:228,800円(割引前)
  • 総講義時間:ライト:約266時間 / フル:約300時間以上

教材とカリキュラム

  • 教材:出題カバー率95.7%を誇るフルカラーテキスト(製本+デジタル)
  • 講師陣:豊村慶太講師、田島圭祐講師など、実績ある専任講師が担当
  • 学習設計:行政法・民法に重点を置いた合理的カリキュラム。試験傾向に合わせた戦略的構成
  • 2025年法改正対応:講義・教材ともに最新の法改正・判例に随時対応

サポート体制

  • 質問制度:Facebookグループによる質問は無制限
  • カウンセリング:月1回の講師カウンセリング(要予約・一部有料オプション)
  • 学習ツール:「AGAROOT Learning」アプリにて、講義動画の倍速再生、音声DL、進捗管理が可能

模試・添削

  • 模擬試験:オリジナル模試1回分を提供
  • 記述式添削:講座に添削指導が含まれ、アウトプット力を実践的に強化

合格実績

  • 2023年度 合格率:46.82%(全国平均の約3.4倍)
    ※特定講座のアンケート回答者を母数として算出

合格特典・保証制度

  • 合格時に「全額返金」または「3万円のお祝い金」が選べる制度あり(体験記提出などの条件付き)

教育訓練給付制度

  • 対応状況:給付制度の対象外

まとめ

アガルートは、高い合格率と返金制度という明確な成果主義モデルを持ち、戦略的に学習を進めたい人にとって非常に魅力的な選択肢です。特に、自己管理力が高く、積極的に学びたい人に向いています。

1.3 フォーサイト|必要十分主義で効率重視!“合格点”にフォーカスした実践派講座

フォーサイトは、「合格点主義」を掲げることで知られる通信講座の定番校です。必要最低限の学習範囲に絞り込み、限られた時間でも合格を目指せる効率性を重視した構成が特徴です。

講座概要

  • 講座名:2025年試験対策 バリューセット1/2/3
  • 受講料(税込)
  • バリューセット1:66,800円
  • バリューセット2:76,800円
  • バリューセット3:94,800円
  • 総講義時間:約65時間〜(バリューセット1の場合)

教材とカリキュラム

  • 教材:合格点主義に基づくフルカラーテキスト。重要論点に集中し、視覚的理解をサポート
  • 講師陣:福澤繁樹講師、北川えり子講師など、経験豊富な講師が指導
  • 学習設計:「満点ではなく合格点」をモットーに、試験に必要な知識だけを短期間で習得
  • 2025年法改正対応:法改正情報はeラーニング上で順次提供

サポート体制

  • 質問制度:バリューセットごとに回数制限あり(10回〜20回)
  • カウンセリング:個別カウンセリング制度はなし
  • 学習ツール:「ManaBun」システムにて講義視聴、問題演習、eライブスタディ(参加型講義)などが可能

模試・添削

  • 模擬試験:全セット共通で2回分の模試が付属
  • 記述式添削:添削サービスはなし

合格実績

  • 2023年度 合格率:45.45%(全国平均の約3.2倍)
    ※一定の条件を満たしたバリューセット3受講者に限定

合格特典・保証制度

  • 返金保証:バリューセット3対象で全額返金保証あり(条件あり)
  • お祝い制度:Amazonギフトコード(最大2,000円)進呈

教育訓練給付制度

  • 対応状況:バリューセット1〜3すべてが給付制度の対象

まとめ

フォーサイトは、短期間で合格ラインに到達したい人に向けた実践派講座です。高コスパと合理的な設計が魅力で、「忙しい社会人の味方」として支持を集めています。

1.4 スタディング|スキマ時間を味方にする!スマホ特化型・低価格講座のパイオニア

スタディングは、「スキマ時間の最大活用」を掲げ、スマートフォン1台で完結できる学習環境を提供するオンライン講座の先駆者です。業界最安クラスの価格帯ながら、AI機能を活用した効率的な学習設計が魅力です。

講座概要

  • 講座名:2025年度版 行政書士講座(ミニマム/スタンダード/コンプリート)
  • 受講料(税込)
  • ミニマム(ペーパーレス版):34,980円
  • スタンダード(冊子テキスト付):54,000円
  • コンプリート(冊子テキスト付):69,400円
  • 総講義時間:スタンダードコースで約76時間(1回5〜15分の短時間ユニット構成)

教材とカリキュラム

  • 教材:Webテキストが基本。冊子テキストはオプションとして提供
  • 講師:竹原健講師(20年以上の指導歴を持つベテラン講師)が担当
  • 学習設計:頻出論点を中心に、短期合格を目指す「スモールステップ方式」
  • 2025年法改正対応:対応方針について公式サイトでの記載はなし

サポート体制

  • 質問制度:チケット制(例:コンプリートコースは30枚のQ&Aチケット付属)
  • カウンセリング:個別カウンセリング制度はなし
  • 学習ツール:「スタディング」アプリでは、AIが最適な復習タイミングを提案するなどの支援機能を搭載

模試・添削

  • 模擬試験:オンライン形式の合格模試(1回分、自己採点)
  • 記述式添削:AIによる記述式問題の添削機能あり(コンプリートコースでは130枚分のAI添削チケット付属)

合格実績

  • 合格率・人数:公式に合格者数や合格率の明示はなし。ただし合格体験記は多数掲載

合格特典・保証制度

  • お祝い制度:合格体験記を提出した場合、最大1万円の合格お祝い金を進呈

教育訓練給付制度

  • 対応状況:給付制度の対象外

まとめ

スタディングは、コストを最小限に抑えたい方、スマホ学習に抵抗がない方、自己管理に自信がある方にとって、極めて合理的な選択肢です。とにかく「手軽に」「低コストで」学びたい社会人に最適な設計です。

1.5 クレアール|不合格時も安心!「セーフティ制度」が支える確実志向の講座設計

クレアールは、独自の学習法「非常識合格法」を掲げ、長年にわたって行政書士受験指導を行ってきた実力派の通信講座です。特に、不合格時の再受講が無料になる「セーフティ制度」は、他社にはない大きな安心材料です。

講座概要

  • 講座名:2025・26年合格目標 完全合格初学者カレッジセーフティコース
  • 受講料(税込):248,500円(割引前)
  • 総講義時間:約228時間(カレッジコース換算)

教材とカリキュラム

  • 教材:黒赤2色刷りの見やすい製本テキスト。Web配信の論点別過去問集「CROSS STUDY」も提供
  • 講師陣:杉田徹講師(基礎)、竹原健講師(記述対策)などが分担
  • 学習設計:「非常識合格法」に基づき、重要論点を絞った効率的なオールインワン型カリキュラム
  • 2025年法改正対応:法改正には完全対応と明示

サポート体制

  • 質問制度:質問回数は無制限
  • カウンセリング:「ピッタリコース」により、メールで個別の学習プラン提案が受けられる

模試・添削

  • 模擬試験:公開模試に加え、総合答練2回など合計3回以上の模試を実施
  • 記述式添削:記述マスター講義に10問分の添削指導を含む

合格実績

  • 合格体験記:462件以上を公開(ただし合格率の公表はなし)

合格特典・保証制度

  • セーフティ制度:2025年度不合格の場合、翌年分を無料再受講可能
  • 未受講分返金制度:初年度で合格した場合は、翌年分相当額を返金
  • 受験料補助:初年度の試験受験料(10,400円)をクレアールが負担
  • 合格お祝い金:体験記執筆で2万円の報奨金

教育訓練給付制度

  • 対応状況:セーフティコースは非対象。通常コースのみ給付対象

まとめ

クレアールは、万が一に備えたい受講者にとって、最も安心感のある講座です。「質問無制限」+「セーフティ制度」により、不安を最小限に抑えつつ学習を継続できる環境が整っています。価格に見合う充実した内容が特長です。

1.6 LEC東京リーガルマインド|王道の安心感と充実サポートが魅力の全国規模予備校

LEC東京リーガルマインドは、行政書士をはじめとした法律系資格における指導実績が豊富な大手予備校です。全国に校舎を展開し、通学・通信の両方に対応できる柔軟な学習環境と、講師陣の層の厚さが特長です。

講座概要

  • 講座名:パーフェクトコースSP/パーフェクトコース
  • 受講料:公式サイトに一般価格の明記はなし(常時割引キャンペーンあり)
  • 総講義時間
  • パーフェクトコースSP:約87回(1回2.5~3時間、合計210〜221時間程度)

教材とカリキュラム

  • 教材:「合格講座講義録」など、図解・イラスト・出題実績を盛り込んだ高品質テキスト(製本付き)
  • 講師陣:有山茜講師をはじめ、Web上で選べる「Web講師フレックス制度」に対応した専任講師が多数在籍
  • 学習設計:インプットとアウトプットを効率的に反復し、法律初学者でも自然と合格力を身につけられる構成
  • 2025年法改正対応:明記はないが、教材は毎年改訂され対応済みと考えられる

サポート体制

  • 質問制度:「教えてチューター」制度により、質問回数無制限で専門スタッフが対応
  • カウンセリング:進捗カウンセリングなど、学習状況をサポートする体制あり
  • 学習ツール:「Online Study SP」では講義動画視聴、音声DL、進捗管理、自習室機能などを提供

模試・添削

  • 模擬試験:Web模試や答練(科目別/総合)をカリキュラムに含む
  • 記述式添削:答練において記述式の添削指導が実施される

合格実績

  • 過去実績:2017年に合格率65.7%を公表(近年の数値は非公表)

合格特典・保証制度

  • 返金制度:合格時は20%(上限10万円)返金、または不合格時に全額返金の制度あり(条件付き)

教育訓練給付制度

  • 対応状況:S式合格講座等、一部コースが給付制度の対象。パーフェクトコースの対象有無は要確認

まとめ

LECは、資格受験界における「王道」ともいえる存在で、教材・講師・サポートの三拍子がそろった高水準の講座です。安心して学習を進めたい方、通学講座からの切り替えを検討している方にも適しています。

1.7 TAC|制度設計と実績で選ばれる“堅実派”──合格率66.2%の戦略型カリキュラム

TACは、LECと並び資格教育業界を代表する大手予備校で、戦略的なカリキュラムと教材の質の高さに定評があります。特に「本科生カリキュラム修了者」の合格率が66.2%と高水準であることが大きな強みです。

講座概要

  • 講座名:2026年合格目標 プレミアム本科生Plus(※2025年目標の主要コースは「ベーシック本科生」)
  • 受講料(税込):264,000円(Web通信、割引前)
  • 総講義時間:全86回(1回150分程度)、総計200時間超

教材とカリキュラム

  • 教材:「みんなが欲しかった!」シリーズの図解・板書テキスト(製本)を採用
  • 講師陣:小池昌三講師など、長年の受験指導経験を持つ講師が担当
  • 学習設計:基礎マスター講義から実力完成講義まで段階的に積み上げる「反復学習重視型」
  • 2025年法改正対応:公式記載はないが、教材は毎年改訂されるため基本的に対応済み

サポート体制

  • 質問制度:質問カードやWeb質問が可能(回数制限あり)
  • カウンセリング:「オンラインスクーリング」にて講師と学習相談が可能
  • 学習ツール:「TAC WEB SCHOOL」では、動画視聴・デジタル教材・Webトレーニング(過去問演習)を提供

模試・添削

  • 模擬試験:全国公開模試、科目別・総合答練などが含まれる
  • 記述式添削:デジタル添削による詳細な記述指導を実施

合格実績

  • 2024年度 合格率:66.2%(本科生カリキュラム修了者のうち、一定の条件を満たした者を母数に算出)

合格特典・保証制度

  • 対応状況:合格お祝い金や返金制度に関する明示なし

教育訓練給付制度

  • 対応状況:プレミアム本科生・ベーシック本科生など、主要コースが給付制度対象

まとめ

TACは、「手堅く合格を狙いたい」受験者にとって最適な選択肢です。高品質な教材と段階的なカリキュラム、信頼性の高い合格実績が、その実力を裏付けています。真面目に着実に合格を目指したい方におすすめです。

2.1 価格と保証制度|費用対効果と“万が一”への備えをどう判断するか

行政書士試験の通信講座を選ぶ際、まず気になるのが「価格」です。しかし、単に受講料の高低だけで判断するのではなく、価格に含まれる“リスク回避”の仕組み、すなわち「保証制度」まで視野に入れて評価することが重要です。

現在の通信講座市場は、単なる価格競争から一歩進み、受講生の不安をどう軽減するかという「保証競争」の段階に突入しています。これは、講座提供側がどのような受講者像を想定し、どのような価値を重視しているかを映し出す指標にもなります。

価格帯は大きく3つに分類される

受講料を基準にすると、各講座は以下の3区分に整理できます。

  • プレミアム価格帯(20万円超)
     伊藤塾、LEC、TAC、クレアール(セーフティコース)、アガルート(フル)
  • バリュー価格帯(6〜10万円)
     フォーサイト、アガルート(ライト)、クレアール(標準コース)
  • バジェット価格帯(6万円未満)
     スタディング

この分類を踏まえたうえで、各社が採用している保証制度の特徴を比較してみましょう。

保証制度のタイプと戦略的な狙い

(1)成功報酬型(合格時のインセンティブ)

アガルートの「全額返金」や、フォーサイトの「全額返金保証」は、いわゆる成功報酬型の保証です。一定の条件(合格+体験記提出等)を満たせば、受講料が返金される制度で、講座の質への自信の表れともいえます。

この制度は、「この講座で学べば合格できる」という強いメッセージとなり、成功意欲の高い受講生にとっては大きな魅力となります。また、返金対象者からの体験談を次期のマーケティングに活かす好循環も狙いの一つです。

(2)失敗救済型(不合格時のセーフティネット)

クレアールが提供する「セーフティコース」がこの典型です。不合格だった場合、翌年の講座を追加費用なしで受講できるという制度で、リスク回避を重視する受講者に向いています。

「再受講にかかる費用が心配」「1年で受かるか不安」という声に応えるこの制度は、価格以上の“安心感”を提供する仕組みといえるでしょう。

(3)ボーナス型(合格時の小規模特典)

スタディングやLECが採用している合格お祝い金制度(例:Amazonギフト券など)は、比較的軽めの特典です。学習意欲の維持や、合格者からの体験談回収を目的としたもので、価格に直接影響を与えるほどのインパクトはありません。

保証制度は“講座の思想”を映す鏡

価格は“見えるコスト”である一方、保証制度は“見えない安心感”として機能します。
つまり、講座を選ぶ際は「安いか高いか」だけでなく、「自分の性格や学習スタイルに合った保証制度が備わっているか」という観点からも判断することが大切です。

たとえば「自己管理に自信があり、とにかくコスパ重視」であれば成功報酬型を、「初挑戦で不安が強い」「再受講のリスクを避けたい」のであれば失敗救済型を選ぶとよいでしょう。

保証制度は単なるオマケではなく、講座選びにおける「リスクヘッジの重要指標」として、戦略的に比較・検討することをおすすめします。

表1|主要講座の価格・保証制度・教育訓練給付金制度の比較一覧(2025年度版)

予備校名主なコース名受講料(税込・割引前)合格特典・保証制度主な適用条件教育訓練給付制度
伊藤塾合格講座スタンダード非公開(割引制度あり)明確な制度記載なし非公開
アガルート入門総合カリキュラム(フル)327,800円合格で全額返金 または お祝い金3万円合格+体験記提出など対象外
フォーサイトバリューセット394,800円不合格時の全額返金保証模試受験・アンケート回答など対象
スタディングコンプリートコース69,400円合格で最大1万円のお祝い金合格+体験記提出など対象外
クレアール完全合格カレッジセーフティ248,500円翌年度講座の無償提供/合格時の返金制度不合格/合格+体験記提出など対象外(※通常コースは対象)
LECパーフェクトコースSP非公開(割引あり)合格返金(上限10万円)/全額返金制度あり合格または不合格+諸条件あり一部コースが対象
TACプレミアム本科生Plus264,000円特典に関する明確な記載なし対象

※受講料・制度の内容はすべて2025年7月時点の公式情報に基づくものです。最新情報は各講座の公式サイトをご確認ください。

この比較表は、講座ごとの価格帯とリスクヘッジの手段(保証制度)を一目で把握できるよう構成しています。「費用対効果」と「不合格時の安心感」の両面から講座を比較検討する際にご活用ください。

2.2 教育理念|「合格ライン突破」か「法的基礎力の涵養」か──講座設計に込められた思想を読む

行政書士試験の通信講座は、単に教材の内容や講義時間の差だけでなく、「どのような教育理念に基づいて設計されているか」が学習効果に大きく影響します。

各講座の指導方針は大きく二つの方向性に分かれます。ひとつは、限られた時間内で合格点を確保することを目的とする「合格点主義」。もうひとつは、試験合格だけでなく、法律の根本的な理解と応用力の育成を重視する「基礎徹底主義」です。

合格点主義:短時間・効率重視で必要最低限に集中

フォーサイトが明示的に掲げている「合格点主義」は、満点ではなく合格ライン突破を最優先とする考え方です。学習対象を頻出分野に絞り、講義時間を抑えることで、働きながらでも合格を狙える効率的な設計を実現しています。

スタディングも同様に、頻出論点に特化し、5〜15分の短時間講義やAIによる復習提案機能などを活用することで、限られた時間で最大の効果を得ることに注力しています。これらの講座は、学習時間の確保が難しい社会人や、最小限の投資で合格を目指す層にとって理想的な選択肢です。

基礎徹底主義:体系的な理解で実務力も見据える

一方で、伊藤塾、LEC、TACといった伝統的な大手予備校は、法律学習そのものの体系的理解を重視する姿勢をとっています。たとえば伊藤塾では、「合格後も通用する法的素養の育成」を掲げ、講義は200時間超に及びます。知識を積み重ねて応用力を養う設計は、実務への展開も見据えた「本格派向け」と言えるでしょう。

TACにおいても「基礎マスター」講義で全体像を掴み、その後にインプットとアウトプットを反復することで、理解を段階的に深める戦略型カリキュラムが組まれています。

教育理念と価格は比例する

教育理念の違いは、受講料にも表れます。「基礎徹底主義」の講座は、教材の質・量、講義時間の長さから、どうしても高価格帯に集中します。一方、「合格点主義」に基づく講座は、内容を戦略的に絞ることでコストを抑え、低価格化が可能になります。

あなたに合った考え方で選ぶ

どちらの教育理念が優れているというわけではなく、大切なのは「自分に合った考え方の講座を選ぶ」ことです。

  • 法律初学者で、長期的に法律を学びたい方や将来の実務も視野に入れている方には「基礎徹底主義」。
  • 忙しい社会人で、まずは短期間での合格を最優先にしたい方には「合格点主義」。

それぞれのスタンスを理解したうえで、自身の学習スタイルや目的に合った講座を選ぶことが、後悔しない受講につながります。

2.3 サポート体制と学習ツール|“手厚さ”と“効率性”のバランスをどう選ぶか

通信講座における学習の成否を左右する要素の一つが「サポート体制」と「学習ツールの質」です。対面でのフォローがない分、受講生が自走できる環境づくりが極めて重要となります。

本章では、各講座が提供する人的サポート(質問制度・カウンセリング)と、eラーニングシステムの機能性に注目し、比較検討の視点を整理します。

サポート体制は「無制限・人中心型」か「必要最小限・機能特化型」か

通信講座のサポート体制は、大きく以下の2タイプに分かれます。

【1】無制限・人的サポート重視型

クレアールやLECでは、質問無制限制度や個別カウンセリング制度など、人的なフォローが充実しています。伊藤塾も週1回という制限はありますが、合格者による「パーソナルトレーナー制度」などを通じて継続的にサポートを受けられる構造になっています。

このような講座は、初学者や不安を感じやすい受講生にとって「いつでも相談できる安心感」を提供する設計です。その分、講座価格は高くなる傾向がありますが、「継続しやすさ」という点では強力なメリットがあります。

【2】必要最小限・機能特化型

スタディングやフォーサイトは、サポートを「必要な人が、必要な分だけ使う」設計にしています。スタディングはQ&Aチケット制、フォーサイトは回数制限付きのメール質問という形式です。

この代わりに、AIによる復習提案機能や進捗管理機能など、システム面での支援が充実しており、「人的サポートに頼らず、自己管理で学習できる」タイプの受講生には非常に効率的な環境といえます。

記述式対策は“添削”の有無が差を生む

合否に大きく影響する記述式問題への対応において、「添削指導の有無とその質」は極めて重要です。

  • クレアール(10問分)、TAC(デジタル添削)、LEC(答練内で添削)などは、実践的かつ個別フィードバックのある添削指導を提供。
  • スタディングはAI添削で対応(130枚分)、アガルートもカリキュラム内に記述添削を含む。
  • 一方で、フォーサイトは添削サービスを提供しておらず、記述式の対策は独学に頼らざるを得ません。

添削の有無は、「本番での記述力」を直接左右する要素であり、短期間で得点力を高めたい受講生には注目すべき比較ポイントです。

模擬試験の有無・回数も要チェック

アウトプットの総仕上げとなる模擬試験についても、講座ごとに大きな差があります。

  • TACやLEC、クレアールなどは、公開模試・総合答練など3回以上を標準装備。
  • フォーサイトは2回、アガルートは1回、スタディングも1回(オンライン模試)と回数は少なめ。

模試の回数が多い講座は、得点戦略や時間配分、試験慣れといった「本番対応力」を養う上で有利です。

自分に必要な“支援の形”を見極めよう

通信講座を選ぶ際、「価格」だけでは判断できないのがサポート体制と学習ツールの領域です。

  • 疑問点をその場で解消したい、孤独感を感じやすいタイプ → 無制限サポート型
  • 自己管理に自信があり、コストパフォーマンス重視 → 最小限+AI活用型

記述対策の添削や模試の回数も含め、「どこまで支援が必要か」「何を自分で補えるか」を軸に講座を選ぶことで、より効率的な学習が実現します。

表2|学習サポート体制とeラーニング機能の比較一覧(主要7講座・2025年度版)

予備校名主なコース名質問サポートカウンセリング体制記述式添削模擬試験主なeラーニング機能・特徴
伊藤塾合格講座スタンダードマイページ経由で週1回まで/オンライン質問会あり(年5回)合格者・講師による個別サポートあり(パーソナルトレーナー制度など)明示なし(記述式演習あり)2回(公開模試)シンプルな動画視聴中心。人的サポートを重視
アガルート入門総合カリキュラムFacebookグループで質問無制限月1回のカウンセリング(予約制・一部有料)添削指導あり(回数は講座による)1回(オリジナル模試)「AGAROOT Learning」アプリ:倍速再生(8段階)、音声DL、進捗管理など
フォーサイトバリューセット3メール質問(上限20回)なしなし2回(模試)ManaBunシステム:講義視聴、Webテキスト、スマート問題集、eライブスタディなど
スタディングコンプリートコースQ&Aチケット制(例:30枚)なしAIによる添削(130枚分)1回(オンライン模試・記述は自己採点)AIが復習タイミングを提案する機能付き。スマホ完結型アプリが主軸
クレアール完全合格カレッジセーフティ質問無制限メールによる学習プラン提案(ピッタリコース)添削指導10問分(記述マスター講義内)3回以上(公開模試+答練)CROSS STUDY:論点別過去問に対応。動画配信+DL対応
LECパーフェクトコースSP「教えてチューター」制度で無制限進捗カウンセリングあり答練等で記述添削ありWeb模試・答練を含む複数回Online Study SP:講義視聴、進捗管理、自習室など、通学講座と連携も可能
TACプレミアム本科生PlusWebまたは質問カード(回数制限あり)Zoomによるオンラインスクーリングありデジタル添削方式3回以上(全国模試+答練)TAC WEB SCHOOL:動画視聴、デジタル教材、Webトレーニング機能が充実

※本表は2025年7月時点での各講座公式情報に基づいています。内容は予告なく変更される可能性がありますので、必ず最新の公式サイトをご確認ください。

この表では、通信講座選びで重要視される「人的サポートの厚さ」と「学習管理ツールの利便性」を一覧化しています。初学者やサポート重視の方は無制限質問制度や添削の有無に注目し、自己管理型の方はAI機能や進捗管理の柔軟性も含めて判断材料としてください。

2.4 合格実績と信頼性|数字に現れる「実力」と“情報開示姿勢”の見極め方

通信講座を選ぶ際、最終的な判断材料のひとつとなるのが「合格実績」です。ただし、各社が公表するデータの見せ方や定義には差があり、単純な数字の比較では講座の“実力”を正しく測れないこともあります。

本節では、主な通信講座における合格実績の公表方法と信頼性の評価軸を整理し、「見せかけの実績」と「本質的な支援力」との違いを見極める視点を提供します。

「合格率」と「合格者数」は意味が異なる

各社が掲げる合格実績には、以下のような表記の違いがあります。

  • 合格率表記(例:合格率〇〇%)
    → 母数の定義(受講生全体か、講座修了者か)に注意が必要。
    アガルートは合格率を公表していますが、これは「講座修了者を分母」として算出されています。
  • 合格者数表記(例:〇〇人合格)
    → LECやTACなどでは、講座利用者が行政書士試験に合格した人数をカウント。
    講座利用の範囲が「一部教材のみの受講者」を含むことがあり、正確な貢献度は不明瞭なことも。

つまり、単なる数字の大小ではなく、「どの範囲の受講者に対する成果か」という文脈の理解が不可欠です。

合格体験記の“数”と“質”をチェックする

講座の実力を読み取る手がかりとして、受講生による「合格体験記」の存在も重要です。

  • アガルートは毎年、数十名規模で合格者インタビューを掲載し、講座内容・教材・学習法への具体的言及があります。
  • フォーサイトスタディングも体験談を動画や記事で積極的に公開しており、初学者がイメージしやすい構成です。
  • 一方、LECTACは体験談の情報がやや限定的ですが、合格者との座談会など実績アピールの形式に特色があります。

体験記は講座の魅力だけでなく、「どのような学習スタイルの人が成功しているか」を知る手がかりにもなります。

「情報開示の姿勢」=支援の本気度を測る指標

数字の信頼性を見極めるために、以下の視点が有効です。

  • 出典の有無や算出根拠の明示:アガルートやフォーサイトは、母数や調査期間の注記が丁寧。
  • 集計方法の透明性:第三者調査によるデータやアンケート結果を使っているか。
  • 体験談と実績の整合性:合格者の声と実績数のバランスが取れているか。

情報開示に積極的な講座は、「成果に対する説明責任」を重視しているとも解釈でき、信頼性の高いサポートが期待できます。

数字より“実感のある証言”に注目を

合格実績は講座選びの重要な指標ではありますが、その解釈を誤ると誇張されたマーケティングに惑わされかねません。

  • 数字の定義・算出根拠を見極める
  • 合格体験記や口コミの具体性を確認する
  • 公開情報の“丁寧さ”=支援姿勢の表れと捉える

このような視点を持つことで、「数字だけでは見えない本当の支援力」に気づくことができるでしょう。

第3章|あなたに最適な講座を見つける!タイプ別おすすめ講座ガイド

3.1 自律型・低コスト重視の方におすすめの講座

学習ペースを自分で管理でき、価格を重視する方には「スタディング」「オンスク.JP」などのサブスク型・低価格帯の通信講座が適しています。月額制で始めやすく、スキマ時間を活用したスマートな学習が可能です。学習管理機能やミニマムな講義構成が、無駄を省きたい方にフィットします。

  • おすすめ講座:スタディング、オンスク.JP
  • 主な特徴:月額型/スマホ完結/学習効率化
  • 向いている人:独学力があり、自分でスケジュールを組める人

3.2 手厚いサポートと安心感を重視する方におすすめの講座

学習中の疑問をすぐに解決したい、講師や運営のサポートがあると安心という方には、質問対応が充実している「クレアール」「フォーサイト」「アガルート」などが有力です。添削指導、質問無制限、個別カウンセリングなど、受講生との距離が近い運営体制が特徴です。

  • おすすめ講座:アガルート、クレアール、フォーサイト
  • 主な特徴:質問対応/添削制度/学習計画サポート
  • 向いている人:ひとりでは不安な方、サポート体制で継続したい方

3.3 成果重視・費用対効果を見極める方におすすめの講座

学習にかける時間やコストを「投資」として捉え、明確な成果=合格に直結する講座を選びたい方には、合格実績と給付金対象制度を持つ「アガルート」や「フォーサイト」が最適です。受講費の一部が還元される制度や、短期合格実績が豊富な点は“成果主義”の方にとって魅力です。

  • おすすめ講座:アガルート、フォーサイト
  • 主な特徴:高い合格率/給付金対応/短期合格モデル
  • 向いている人:結果を出すための合理的な投資を求める方

3.4 品質と実績に信頼を置くブランド重視派におすすめの講座

講座の信頼性や伝統、ブランド価値を重視する方には、「LEC東京リーガルマインド」や「TAC」などの大手予備校がおすすめです。豊富な教材、全国的な知名度、長年の実績に裏打ちされた安心感があり、特に通学併用や対面指導を求める層に支持されています。

  • おすすめ講座:LEC、TAC
  • 主な特徴:老舗ブランド/通学対応/教材の網羅性
  • 向いている人:実績ある企業による品質保証を重視する方

おわりに|講座選びが“合格戦略”を決める鍵になる

行政書士試験は、単なる知識の積み上げだけでなく、「自分に合った学習環境」を整えることが合否を左右します。講座の選び方ひとつで、勉強の効率や継続のしやすさ、そして最終的な合格までの到達ルートが大きく変わるのです。

本記事では、主要講座の特徴やサポート体制、コストパフォーマンスなどを比較し、学習スタイルごとに最適な選択肢を提示してきました。これらの情報をもとに、あなた自身の目的や状況に照らして「戦略的な選択」をしていただくことが、合格への近道となります。

どの講座が“最も優れている”かではなく、どの講座が“自分に最も適しているか”。その視点をもつことが、学習の質を高め、日々の取り組みに確信を与える第一歩です。

合格は、偶然ではなく設計された結果です。だからこそ、講座選びは「学習開始前の最大の戦略」として捉えてください。