はじめに|講座選びが合否を左右する──通学か通信か、最初の重要判断
行政書士試験の合格を目指すうえで、「どの講座を選ぶか」という判断は、学習計画のスタート地点にして、合否を大きく左右する最重要ポイントです。中でも「通学講座」と「通信講座」のどちらを選ぶかという選択は、ほとんどの受験生が最初に直面する大きな分岐点と言えるでしょう。
本記事の目的は、単に「どちらが良いか」を断定するのではなく、それぞれの特長を客観的に比較・分析し、読者一人ひとりの学習スタイルやライフスタイル、学習目標に合った最適な選択肢を見つけるための“判断の軸”を提供することにあります。
まずは、通学講座と通信講座それぞれの基本的な仕組みと、生活への組み込み方の違いを丁寧に解説します。次に、費用・教材・サポート体制・講師の質といった多角的な観点から講座内容を比較。そのうえで、各予備校が公表している「合格実績」の数値に対し、冷静な視点から算出根拠を読み解き、統計の“読み方”も解説します。
そして最後に、受験生のタイプ別に「どの講座が合いそうか?」をまとめ、実践的な選択の指針を提示します。
行政書士試験は、学習開始時点での設計次第で結果が大きく変わる試験です。本記事が、あなたにとって「最適なスタート」を切るための一助となれば幸いです。
第1章|学習スタイルに合わせて選ぶ!通学講座と通信講座の本質的な違い
行政書士試験の対策を始めるにあたって、最初に迷うのが「通学講座」か「通信講座」かの選択です。この違いは、単に“教室に通うか否か”という話にとどまらず、学習スタイル・モチベーション管理・時間の使い方など、試験勉強そのものの設計に深く関わってきます。
ここではまず、両者の特徴を学習環境・生活との相性という視点から比較し、自分にとってどちらが合っているかを見極めるヒントを提供します。
1.1 通学講座の特長:学習ペースが整い、仲間と切磋琢磨できる「教室の力」
通学講座は、いわば「学習の型」が自然に身につく環境です。TACやLECなど大手予備校では、決まった曜日・時間に授業が行われ、それに合わせて生活リズムが整えられるため、勉強を習慣化しやすいという大きなメリットがあります。
特に行政書士試験では、500〜1,000時間程度の長期的な学習が必要とされます。その中で「今日は疲れたから後回しにしよう」といった先延ばしを防ぐには、通学による外部からの“適度な強制力”が有効に働きます。
また、講師の熱量がダイレクトに伝わる「生講義」の臨場感も魅力です。表情や声の抑揚から得られる情報は、録画授業では得難い学びをもたらします。さらに、講義後すぐに質問できる環境や、同じ目標を持つ仲間との情報交換・励まし合いは、モチベーションの維持にもつながります。
近年では、欠席時のWebフォローや別クラスへの振替制度など、柔軟なサポートも充実しており、忙しい方にも一定の対応が可能になっています。
1.2 通信講座の特長:自由な時間設計とスマホ対応が魅力の“現代型学習”
一方で通信講座の最大の魅力は、「時間と場所を自分でコントロールできること」です。仕事や家事と両立して勉強する社会人・主婦(主夫)にとって、これは大きな強みになります。
最近では、スタディングやアガルート、フォーサイトといったオンライン型の予備校が、スマートフォン一つで完結するeラーニング環境を整えています。講義は5〜15分程度の短い動画に分割され、通勤や家事の合間など、すき間時間を有効に使えるよう工夫されています。
また、再生速度を調整できる機能(倍速再生)や、オフライン視聴ができるダウンロード機能なども備えており、柔軟性は年々向上しています。テキストもフルカラーで視覚的に学べるものが多く、使いやすさが進化しています。
ただし、「自由」には自己管理力が求められます。周囲からの強制力がない通信講座では、孤独を感じやすく、モチベーションの維持が課題になることも。これに対し、ZoomやYouTubeライブでのホームルーム、SNS型の「勉強仲間機能」など、各校は様々な工夫で受講生の“学習継続”を支援しています。
通学と通信、それぞれに優劣があるわけではありません。大切なのは「あなたのライフスタイルや性格にどちらが合うか」を見極めることです。次章では、具体的な比較項目から各講座の違いをさらに掘り下げていきます。
第1章|学習スタイルに合わせて選ぶ!通学講座と通信講座の本質的な違い
行政書士試験の対策を始めるにあたって、最初に迷うのが「通学講座」か「通信講座」かの選択です。この違いは、単に“教室に通うか否か”という話にとどまらず、学習スタイル・モチベーション管理・時間の使い方など、試験勉強そのものの設計に深く関わってきます。
ここではまず、両者の特徴を学習環境・生活との相性という視点から比較し、自分にとってどちらが合っているかを見極めるヒントを提供します。
1.1 通学講座の特長:学習ペースが整い、仲間と切磋琢磨できる「教室の力」
通学講座は、いわば「学習の型」が自然に身につく環境です。TACやLECなど大手予備校では、決まった曜日・時間に授業が行われ、それに合わせて生活リズムが整えられるため、勉強を習慣化しやすいという大きなメリットがあります。
特に行政書士試験では、500〜1,000時間程度の長期的な学習が必要とされます。その中で「今日は疲れたから後回しにしよう」といった先延ばしを防ぐには、通学による外部からの“適度な強制力”が有効に働きます。
また、講師の熱量がダイレクトに伝わる「生講義」の臨場感も魅力です。表情や声の抑揚から得られる情報は、録画授業では得難い学びをもたらします。さらに、講義後すぐに質問できる環境や、同じ目標を持つ仲間との情報交換・励まし合いは、モチベーションの維持にもつながります。
近年では、欠席時のWebフォローや別クラスへの振替制度など、柔軟なサポートも充実しており、忙しい方にも一定の対応が可能になっています。
1.2 通信講座の特長:自由な時間設計とスマホ対応が魅力の“現代型学習”
一方で通信講座の最大の魅力は、「時間と場所を自分でコントロールできること」です。仕事や家事と両立して勉強する社会人・主婦(主夫)にとって、これは大きな強みになります。
最近では、スタディングやアガルート、フォーサイトといったオンライン型の予備校が、スマートフォン一つで完結するeラーニング環境を整えています。講義は5〜15分程度の短い動画に分割され、通勤や家事の合間など、すき間時間を有効に使えるよう工夫されています。
また、再生速度を調整できる機能(倍速再生)や、オフライン視聴ができるダウンロード機能なども備えており、柔軟性は年々向上しています。テキストもフルカラーで視覚的に学べるものが多く、使いやすさが進化しています。
ただし、「自由」には自己管理力が求められます。周囲からの強制力がない通信講座では、孤独を感じやすく、モチベーションの維持が課題になることも。これに対し、ZoomやYouTubeライブでのホームルーム、SNS型の「勉強仲間機能」など、各校は様々な工夫で受講生の“学習継続”を支援しています。
通学と通信、それぞれに優劣があるわけではありません。大切なのは「あなたのライフスタイルや性格にどちらが合うか」を見極めることです。次章では、具体的な比較項目から各講座の違いをさらに掘り下げていきます。
第2章|何を基準に選ぶ?通学講座と通信講座を比較する4つの視点
2.1 受講料の違いと“本当の”コストパフォーマンス
行政書士講座を選ぶ際、まず気になるのが「受講料」です。しかし、単に「価格が安いか高いか」だけで判断してしまうと、自分にとって最適な選択を見誤ることがあります。ここでは、価格帯の傾向と、その価格に含まれるサービス内容を整理しながら、“費用対効果”という観点から比較していきます。
価格帯の傾向:通信講座は10万円以下も、通学講座は20万円超が一般的
まず基本的な価格帯としては、以下のような傾向があります。
- 低価格帯(10万円未満):スタディング(約6万円)やフォーサイト(約9万円)など、オンライン完結型の通信講座が中心。
- 中価格帯(10万〜20万円):一部通信講座の上位コースや通学講座の割引価格帯。
- 高価格帯(20万円以上):LEC、TAC、伊藤塾、アガルートなど、大手予備校の主要コース(通学・通信を問わず)が該当。中には30万円近いコースも。
一見すると、通信講座が圧倒的に安く見えますが、価格の裏には「含まれるサービスの量と質」の違いがあります。
合格特典・割引制度:実質価格はもっと変わる?
多くの講座では、早期申込割引、乗換割引、教育訓練給付制度(最大20%還付)などの各種割引制度が用意されています。さらに、合格時に「全額返金」や「祝金支給」がある予備校もあります。
たとえば:
- アガルート:合格+所定の条件を満たせば「受講料全額返金」または「祝金5万円」。
- フォーサイト:最上位コースで合格時に全額返金制度あり。
- スタディング:合格者に1万円の祝金進呈。
こうした制度を利用すれば、実質的な受講料が大幅に下がる可能性もあります。
“安い講座”が“損”になることも?
重要なのは「支払った金額に対して、どれだけの学習効果が得られるか」という視点です。たとえば、質問が有料オプション(スタディング)である講座と、質問無制限(LECなど)の講座を比べた場合、学習の不安を一つずつ解消したい初学者にとっては、後者の方が結果的に“安く済む”ケースもあります。
また、アガルートのように合格特典が大きい講座は「本気で合格を目指す人」にとっては、事実上“成果報酬型”と考えることもできます。
注意!価格を見るときは「学習支援の中身」まで確認を
受講料だけを見て講座を選ぶのではなく、
- 質問対応の有無・回数制限
- 模試・添削指導の有無
- 合格特典の有無
- 給付制度の対象かどうか
といった「サービスの総量」とのバランスを見て、自分にとって最も“リターンの大きい投資”を選ぶ視点が大切です。
次の項では、価格以外の重要要素——カリキュラムと教材内容について、講座ごとの違いを詳しく見ていきます。
表1|主要な行政書士講座の受講料とサービス内容比較(初学者向けコース)
予備校名 | 主なコース名 | 受講形式 | 標準価格(税込) | 主な内容(講義・質問対応など) | 特典・割引制度例 |
---|---|---|---|---|---|
LEC | パーフェクトコースSP | 通学 / 通信 | 約265,000円 | 全87回講義/質問無制限(教えてチューター) | 早期割引・再受講割引・教育訓練給付制度 |
TAC | プレミアム本科生 | 通学 / 通信 | 約242,000円 | 基礎+応用/質問メールあり | 早期割引・教育訓練給付制度/自習室・Webフォローあり |
伊藤塾 | 合格講座スタンダード | 通信 | 約238,000円 | 184時間講義/週1回質問可/カウンセリングあり | 学割・再受講割引 |
アガルート | 入門総合カリキュラム(フル) | 通信 | 約295,000円 | 約300時間講義/講師による質問対応/模試・記述対策付き | 合格特典(全額返金or祝金)・各種割引 |
フォーサイト | バリューセット3 | 通信 | 約94,800円 | フルカラーテキスト/スマホ学習(ManaBun)/質問25回まで | 合格時全額返金制度・教育訓練給付制度 |
スタディング | 合格コースコンプリート | 通信 | 約63,900円 | スマホ完結型/短時間講義/質問30回分チケット付き | 合格祝金1万円・各種割引 |
※価格はキャンペーン・時期により変動する可能性があります。各校の公式サイトで最新情報をご確認ください。
2.2 カリキュラムと教材設計の比較|“合格点主義”と“網羅主義”、あなたに合うのは?
行政書士講座の中身を比べるうえで、欠かせない視点が「カリキュラム」と「教材」です。予備校ごとに「何を」「どこまで」教えるか、そのスタンスには明確な違いがあります。
教育方針の違い:合格に絞るか、実務にも通用するか
予備校のカリキュラム設計には、大きく2つの方向性があります。
- 合格点主義(効率重視型):限られた時間の中で、合格ラインに到達することを目的に設計。代表例はフォーサイト。インプットを最小限に抑え、合格に必要な知識に絞った講義が特徴です。
- 網羅主義(体系重視型):試験範囲を深く広くカバーし、実務にも通用する法的思考力の養成を重視。伊藤塾やアガルートがこのスタイルで、論点の背景や条文趣旨まで丁寧に解説されます。
講義時間に現れる“学習の深さ”
講座ごとの総講義時間にも方針の違いが現れています。
- スタディング:約90時間前後。すき間時間に対応した短時間講義で構成。
- LEC・TAC・伊藤塾:180時間〜200時間超。基礎から応用までじっくりと展開。
- アガルート:約300時間以上(フルカリキュラム)。記述式・実務対策まで含めた内容。
学習に充てられる時間や、どこまで深く理解したいかによって、選ぶべき講義構成は異なります。
教材の設計思想:見やすさ重視か、情報量重視か
教材のタイプも大きく分かれます。
- フルカラー・図解中心(視覚的に学びたい人向け)
→ フォーサイト、アガルート:図表・イラストを多用したテキストで、初学者でも理解しやすい構成。 - モノクロ・情報密度高め(読み込んで学びたい人向け)
→ LEC、TAC、伊藤塾:白黒ベースだが論理構成が明快。書き込みやノート連携もしやすく、中級者以降に根強い人気。 - 完全Web教材型(スマホ学習特化)
→ スタディング:紙のテキストは有料オプション。スマホ中心に設計されており、場所を選ばず学べる反面、紙の教材に慣れた人には物足りない面も。
「どんな教材が“良い”か」ではなく、「自分の学習スタイルに合っているか」が選択の決め手です。
2.3 質問対応・モチベーション維持などサポート体制の違い|「一人で勉強できるか」が分かれ目
行政書士試験の勉強は、長期戦です。内容の難しさに加えて、「孤独感」や「中だるみ」が合格の大きな障害になることも。そこで重要になるのが、予備校が用意するサポート体制です。
質問対応:制度の違いと“回答の早さ”に注目
講座によって、質問サポートの方法・回数・費用・回答スピードに差があります。
- LEC・TAC:主要コースでは質問無制限。LECの「教えてチューター」はやや回答が遅い(1週間程度)のが難点ですが、TACは比較的迅速。
- アガルート:講師が直接対応。回答が速く、的確と評判。
- 伊藤塾:週1回までと制限があるが、カウンセリング制度で個別対応あり。
- フォーサイト:コースによって質問回数に制限。メールベースだが比較的早く返信あり。
- スタディング:質問は原則有料(Q&Aチケット制)。ただし上位プランには回数付き。過去の質問を閲覧できるシステムでカバー。
モチベーション維持:人とのつながりが鍵になる
通信講座では「誰にも見られない」学習環境ゆえに、モチベーションの維持が大きな課題となります。その対策として、各校は以下のような工夫を凝らしています。
- 伊藤塾:パーソナルトレーナー制度・学習カウンセリングなど、個別支援が充実。
- アガルート:YouTubeライブやZoomでのホームルーム形式によるつながり強化。
- スタディング:SNS型の「勉強仲間機能」で学習進捗をシェア。他の受講生の努力を見て刺激を受けられる設計。
法改正対応:行政書士試験ならではの重要チェックポイント
行政書士試験では、直前で重要な法改正が行われることも少なくありません。各校の対応力も比較しておきましょう。
- 伊藤塾・フォーサイト:法改正があるたびに、追加教材・動画で素早く対応。
- LEC・TAC:教材の毎年改訂で対応。ただし緊急の法改正対応はやや間接的。
- スタディング:必要に応じて情報更新と明記されているが、対応時期がやや後手に回る傾向あり。
長期間にわたる学習には「質問できる環境」と「支えてくれる仕組み」が不可欠です。特に独学が不安な方は、受講料だけでなく“安心できるサポートの質”も必ずチェックしましょう。
表2|行政書士講座における受講生サポート体制の比較一覧
予備校名 | 質問対応制度(方法・制限・応答速度) | モチベーション支援・学習継続サポート | 法改正への対応状況 |
---|---|---|---|
LEC | Web経由の「教えてチューター」/無制限/回答に最大10日程度 | 特になし(通学講座では教室環境が支えになるケースあり) | 毎年教材を改訂して対応 |
TAC | 質問メール/無制限(コースによる)/比較的迅速な対応 | オンライン自習室を提供し、学習ペースの維持を支援 | 教材改訂で毎年反映 |
伊藤塾 | マイページから週1回まで質問可/7日以内の回答目安 | カウンセリング制度/パーソナルトレーナー制度を提供 | 無料の改正対策講義・教材を適宜提供 |
アガルート | Facebookグループで講師が直接対応/回数制限あり/迅速な返信が好評 | 月1回のYouTubeライブ/希望者向けコーチング制度あり | 改正対応パックや補講講義で個別対応 |
フォーサイト | メールによる質問対応/回数制限あり(コースによる)/返信は比較的早い | 個別カウンセリングをコース内容に含む | 法改正情報冊子の郵送+eラーニングで補足対応 |
スタディング | Q&Aチケット制(原則有料)/上位コースに回数付属/過去Q&Aは無料で閲覧可 | SNS型「勉強仲間機能」で進捗共有と励まし合いが可能 | 改正情報は講座内に後日追加されるケースあり |
※対応内容はプランや時期により変動する場合があります。詳細は各予備校の公式情報をご確認ください。
2.4 講師の実力と講義スタイルを見極めよう|“誰に学ぶか”は合否を左右する
行政書士講座を選ぶうえで、意外と見落とされがちなのが「講師の質」です。しかし、講師は単なる解説者ではなく、あなたの学習を牽引する“伴走者”でもあります。どのような講師に教わるかは、理解度・モチベーション・継続力に大きく影響します。
講師=「ブランド」の顔であり、「合格」の起点
多くの受験生が講座選びで参考にしているのが、「有名講師」「カリスマ講師」と呼ばれる存在です。予備校ごとに、看板講師のスタイルや受講生からの評判が大きな差別化要素になっています。
主な講師例:
- 伊藤塾・平林講師
→ 民法の論理展開が明快で、初学者でも理解しやすいと高評価。人柄の温かさも支持されるポイント。 - アガルート・豊村講師
→ 熱意あふれる語り口と親しみやすさが魅力。受講生に真剣に向き合う姿勢が信頼を集めています。 - LEC・横溝講師
→ 抽象的な法律概念をアニメや身近な例で噛み砕いて解説。記憶に残るユーモアと構成力が特徴。 - TAC・神田講師
→ 重要論点に絞ったテンポの良い講義で「効率よく学べる」との声が多数。
合う・合わないは人それぞれ。相性チェックは「必須」
どれだけ有名な講師であっても、万人に合うとは限りません。テンポ・声質・説明の深さ・板書の有無など、「自分にとって聞きやすいか」「理解しやすいか」が重要です。
最近では多くの予備校が、公式サイトやYouTubeで無料のサンプル講義を公開しています。受講を決める前に、ぜひ複数の講師の講義を視聴し、自分にフィットするかどうか確認しましょう。
講師選び=講座選びと言っても過言ではない
予備校を選ぶ際、「講座の価格やシステム」は比較しやすい項目です。しかし、最終的に合否を左右するのは「いかに理解し、継続できるか」。その意味で、講師との相性は“見逃せないファクター”です。
あなたの勉強時間を「意味ある時間」にするためにも、「この人の話なら最後まで聞ける」「この人に教わりたい」と思える講師を選びましょう。
第3章|合格率は“真実”か?予備校が公表する数字の読み解き方
行政書士講座を選ぶ際、多くの受験生が参考にするのが「合格実績」や「合格率」の数字です。たとえば、「合格率45%」「全国平均の3倍」といった表現は、非常に魅力的に映るかもしれません。
しかし、これらの数字は一見明確に見えても、その裏にはさまざまな前提や条件が隠れています。本章では、そうした“数字の見方”に焦点を当て、過度な期待や誤解を避けるための視点を整理します。
合格率のトリック:条件付きデータに注意
予備校が公表する合格率には、「受講生全体」ではなく、「一定の条件を満たした受講者」だけを対象として算出されたものが多くあります。
たとえば:
- TACの合格率66.2%
→ 模試や課題提出をすべてクリアした“修了者”を対象とした数字。全体平均とは別物です。 - アガルート(46.82%)やフォーサイト(45.45%)の合格率
→ 合格者にアンケートを依頼し、それに回答した人を母数に算出されたデータ。回答者の多くは合格者である可能性が高く、結果的に合格率が上がる構造です。
「合格者数」は信頼できる?→“母数不明”なら判断は難しい
LECやスタディングなどは、合格率ではなく「合格者数」を公表しているケースがあります(例:LEC 268名、スタディング 273名、アガルート 300名など)。
一見インパクトのある数字ですが、受講生全体の人数(=母数)が明示されていなければ、「どのくらいの割合が合格したのか」は読み取れません。
合格実績は“比較材料の一つ”にすぎない
こうした数字は、予備校の努力やサービスの質を示すポジティブなサインである一方、「確率の保証」ではありません。数字だけを鵜呑みにして選んでしまうと、自分に合わない講座を選ぶリスクもあります。
また、合格者にインタビューやレビューをお願いする際に「報酬」や「返金特典(全額返金など)」が設定されている場合、自然と合格者が集まりやすくなり、その結果として“合格者中心の統計”が形成されやすくなるという側面もあります。
数字の裏側を読み解く視点を持とう
以下のような問いを自分に投げかけると、数字に対する過信を防げます:
- この合格率はどんな母集団(全受講者/修了者/回答者)を対象にしているか?
- 公表されていない“全体の受講者数”はあるか?
- 受講生に対するインセンティブ(返金・祝金)が合格率に影響していないか?
数字は、正しく見れば大いに参考になります。しかし、その背後にある「算出の前提」や「公開の目的」にも目を向けることで、講座選びの視野がぐっと広がります。
表3|主要予備校が公表する行政書士試験の合格実績(数値の根拠を添えて比較)
予備校名 | 公表されている合格実績 | 全国平均との比較 | 数値の算出方法・注意点 |
---|---|---|---|
アガルート | 合格率 46.82%(2024年度) | 全国平均の約3.6倍 | アンケート回答者ベース。合格者からの回答が集まりやすい傾向あり。 |
フォーサイト | 合格率 45.45%(2023年度) | 全国平均の約3.5倍 | アンケート形式。回答者全体のうち合格者の割合で算出。 |
TAC | 合格率 66.2%(2024年度) | 全国平均の5倍超 | 一定の条件(答案提出や模試等の完了)を満たした本科生限定の数値。 |
LEC | 合格者数 268名(2024年度・コース生対象) | 非公表(合格率は未提示) | 合格者数のみ公開。全体受講者数は非公開のため合格率は不明。 |
スタディング | 合格者数 273名(2024年度) | 非公表(合格率は未提示) | 合格者数は公開されているが、母数(全受講者数)は不明。 |
伊藤塾 | 合格者多数(具体的な数値は非公表) | 非公表 | 合格率・合格者数ともに非公表。体験談や長年の実績で信頼を形成。 |
※全国平均の合格率は例年およそ10%〜13%程度です。
※合格実績の数値は、受講スタイル・母数・条件などにより意味合いが大きく変わるため、必ず算出方法とあわせて確認することが重要です。
第4章|あなたに最適な講座はどれ?学習タイプ別おすすめ講座ガイド
これまで見てきた通学講座と通信講座の違いや各予備校の特長をふまえ、本章では「自分にはどの講座が合っているのか」をタイプ別に整理します。ここでは、行政書士試験の受験生によく見られる5つの学習スタイルをもとに、それぞれに適した講座選びのヒントをご紹介します。
規律重視タイプ|スケジュール管理が苦手なら“通学型”が最適
「勉強は計画を立てるより、誰かにペースを決めてもらった方がうまくいく」――そんな方には、通学講座がおすすめです。
- LECやTACの通学コースは、決まった日時で進行するスケジュールに沿って学習を進められるため、先延ばしや中断を防ぎやすい構造です。
- 教室で受講することで、周囲の受験生の存在や講師の熱量が“適度な緊張感”を生み、モチベーション維持にも効果的です。
- 欠席時もWebフォローやクラス振替制度があるため、一定の柔軟性も担保されます。
忙しい社会人タイプ|スキマ時間で進めるなら“スマホ対応の通信講座”
仕事や家庭との両立を前提とした学習環境を求める方には、スマートフォンで完結できる通信講座が有力な選択肢です。
- スタディングは、1講義5〜15分の短時間動画で構成されており、通勤中や移動時間にも効率的に学べます。
- フォーサイトのeラーニング「ManaBun」も、講義・テキスト・問題演習を一括管理できる高機能アプリで、スマホ学習との相性が抜群です。
- 倍速再生・オフライン視聴など、現代人のライフスタイルに対応した設計がされています。
法律初学者タイプ|基礎から丁寧に学べる“サポート重視型”講座を選ぼう
「法律を学ぶのは初めてで不安」「わからないことをすぐ聞きたい」という方には、丁寧な講義とサポート体制が整った講座がおすすめです。
- 伊藤塾は、法律の考え方や条文の背景まで丁寧に解説し、週1回の質問制度やカウンセリング制度で学習を個別に支援。
- LECやTACの初学者向けコース(例:パーフェクトコースSP)も、入門講義付きで安心感があります。
- オンライン講座では、アガルートが講師による直接の質問対応を行っており、特に通信でもサポートを重視したい方に適しています。
低予算タイプ|費用を抑えつつ合格を狙うなら“コスパ重視型”講座
「できるだけ費用をかけずに、効率よく合格したい」方には、価格を抑えながらも機能性の高い通信講座が最適です。
- スタディング(合格コース)は、6万円台から受講可能で、スマホ学習に必要な機能がすべて揃っています。
- フォーサイトの「バリューセット1」も、講義・テキスト・問題演習がパッケージ化されており、10万円未満ながら内容が充実しています。
- サポート(質問対応等)が限定される場合もあるため、自走力のある方に向いています。
再チャレンジタイプ|弱点克服と実戦力強化には“経験者向けコース”
過去に行政書士試験を受験し、あと一歩届かなかった方や、記述対策・応用力を鍛えたい方には、中上級者向けのコースがおすすめです。
- TAC・LECには、答練中心の応用講座や記述強化講座が複数用意されており、得点力を磨くのに適しています。
- 伊藤塾やアガルートでは、過去の不合格原因を分析し、重点分野に的を絞った中上級者コースが展開されています。
- 自分の弱点を明確にし、それに合ったカリキュラムを選ぶことが、再チャレンジ成功のカギです。
自分に合った講座を見極めるには、「内容」だけでなく「学び方」との相性を考えることが重要です。次章では、こうした選択を支えるためのセルフチェックリストをご紹介します。
結論|「この講座でいい」ではなく「この講座がベスト」と思える選択を──5つのセルフチェックで最終確認
ここまで、通学・通信の違い、講座内容、講師、サポート体制、実績データまで多角的に比較してきました。しかし、最終的に最適な講座を選ぶために必要なのは、「他人にとっての良い講座」ではなく、「あなた自身にとって最も合う講座」を見極める視点です。
そのために、以下の5つの質問を自分自身に問いかけてみてください。
✅ 1. 学習時間はどれくらい確保できるか?それは固定的か、変動的か?
- 毎週●時間程度、安定して学習時間を取れるか?
- 平日と休日でリズムは異なるか?
- 「毎週決まった曜日に通える」なら通学型も有力候補。
- 「スキマ時間を活用したい」なら通信型の柔軟性が武器になる。
✅ 2. 受講料にかけられる予算の上限はどこか?
- 「全額返金制度」や「教育訓練給付制度」の対象講座か?
- 安さだけでなく、質問対応・サポート内容とのバランスも重要。
- 合格すれば実質無料になる講座もあるが、条件も要確認。
✅ 3. 自分の理解スタイルに合った教材はどれか?
- 図解やフルカラーで視覚的に学びたい?
- モノクロで情報量重視、読み込むタイプ?
- スマホ中心?紙のテキストがないと落ち着かない?
✅ 4. モチベーション維持に「人とのつながり」は必要か?
- 講師と直接やりとりしたい?
- 勉強仲間がいた方が刺激になる?
- それとも一人で淡々とこなす方が性に合っている?
✅ 5. 今の自分にとって最大の不安は何か?
- 法律知識ゼロでもついていけるか?
- 記述式対策が不安?
- 忙しくて途中で挫折しないか?
- コストをかけたのに合格できなかったらどうしよう…
最終的に「完璧な講座」は存在しません。しかし、「あなたにとって最も合った講座」は必ずあります。
このチェックリストをもとに、納得感のある判断ができれば、受講後の迷いや後悔も減り、勉強に集中できる環境が整います。
講座選びは、行政書士試験対策の“最初の戦略的判断”です。ぜひ自分の基準を持って、最適な一手を選んでください。