目次

第1章 合否を分ける!行政書士試験の教材選び4つの鉄則

行政書士試験における独学の成否は、学習を始める前の「教材選び」ですでに8割が決まっている――この言葉は決して大げさではありません。

膨大な出題範囲を、誰のサポートもなく一人で学びきるためには、無計画に本を選ぶのではなく、学習効率と継続性を支える教材戦略が必要です。

ここでは、多くの合格者の実体験と、教材の専門的な分析に基づいて、「独学者が守るべき4つの鉄則」を解説します。

1.1 教材は「シリーズ」で揃えるのが成功の近道

最初に決めるべき重要なポイントは、どの出版社の「シリーズ」で学習を進めるかということです。

行政書士試験の市販教材は、基本テキスト・基本問題集・記述対策・直前模試などがひとまとまりになった「シリーズ展開」が基本です。そしてこのシリーズを統一して使うことが、独学の効率と安定性を左右します。

異なる出版社の教材を組み合わせると、用語の使い方や解説の流れが微妙に違ってきて、理解にムダな労力がかかります。独学者にとっては、この“ちぐはぐ感”こそが最大のストレス源。混乱を避け、最短距離で合格を目指すなら、基本テキストと問題集は必ず同一シリーズで揃えるのが鉄則です。

1.2 古い年度版は使わない!必ず最新版を選ぶべき理由

行政書士試験は、最新の法改正や判例に対応した「現行法」に基づいて出題されます。つまり、1年前の教材ですら情報が古く、試験で失点するリスクがあります。

市販の教材は毎年「2025年度版」などとして改訂されており、細かな条文の変更や最新判例に対応しています。特に憲法・民法・行政法などでは、重要な法改正が毎年のように発生しているため、前年の本では通用しません。

独学で正確な知識を積み上げていくためにも、「最新年度版の教材を選ぶこと」は絶対に譲れない前提条件です。

1.3 インプットとアウトプットは“ワンセット”で進める

多くの初学者がやりがちなのが、「テキストを一通り読み終えてから問題集に入る」という直線的な学習法です。しかしこの方法では、記憶が薄れてしまい、知識の定着率は下がってしまいます。

本当に効率の良い学習は、インプット(読む)→アウトプット(解く)→再インプット(復習)の“学習サイクル”を小さな単位で回すことです。

たとえば1テーマ読んだらすぐに該当範囲の問題を解き、理解があいまいな部分はすぐにテキストで確認。このサイクルを繰り返すことで、受動的な読書が「能動的な学習」に変わり、合格に必要な実践力が自然と身についていきます。

1.4 教材ジプシーに陥るな!まずは一冊をやり切る覚悟

SNSや口コミを見て、つい別の教材に手を出したくなる――これは独学者によくある失敗パターンです。あれこれ浮気すると、どの教材も中途半端になり、知識の断片ばかりが積み上がってしまいます。

実際に合格している人たちは、決めた教材を“繰り返し反復”することに徹しています。まずは1冊のテキストと問題集を徹底的に仕上げることが、最短で合格に近づく王道の学習法です。

教材選びに正解はあっても、万能はありません。「迷わない」「浮気しない」「やり切る」。この3つを意識するだけで、独学の成功率は大きく変わります。

第2章 行政書士テキスト主要6シリーズを徹底比較【2025年度版】

行政書士試験の市販教材市場は、複数の大手資格予備校や法律出版社が競い合う、いわば“群雄割拠”の状態です。それぞれの教材シリーズが独自の強みを打ち出しており、「どれが良いか?」と悩むのは当然のことです。

本章では、行政書士試験対策の定番シリーズ6つを厳選し、構成・特長・相性などを比較検討していきます。独学者・受験経験者それぞれにとって最適な教材を見つけるための、判断材料としてご活用ください。

2.1 なぜこの6シリーズを選んだのか?──比較対象の選定理由

今回の比較対象は、以下の6つの代表的な教材シリーズです。

  • 合格革命シリーズ(早稲田経営出版)
  • みんなが欲しかった!シリーズ(TAC出版)
  • 出る順行政書士シリーズ(LEC)
  • スッキリわかるシリーズ(TAC出版)
  • うかる!行政書士シリーズ(伊藤塾)
  • 合格のトリセツシリーズ(LEC)

この6シリーズを選定した理由は大きく2つあります。

1つ目は、「長年の実績と高い知名度を誇る定番シリーズであること」。特に上記のうち4シリーズ(合格革命、みんなが欲しかった!、出る順、スッキリわかる)は、行政書士受験生の間で長く愛用されてきた“王道教材”です。

2つ目は、「近年注目されている新興シリーズを含めたこと」。うかる!行政書士(伊藤塾)は、法律の深い理解を重視する層に圧倒的な支持があり、合格のトリセツ(LEC)は、フルカラー・動画講義・アプリ連携などの現代的学習に対応した新鋭シリーズとして台頭しています。

定番と新興の両者を網羅することで、読者が自分に最も合ったスタイルを見極めやすくなる構成にしています。

2.2 教材を比べるとき、どこを見るべきか?──比較の観点とフレームワーク

市販の行政書士教材は、見た目や価格だけでは本当の価値は見えてきません。そこで本記事では、以下の5つの観点から、各シリーズを客観的に比較していきます。

① コンセプト(学習思想)
出版社がそのシリーズを通じて伝えたい学習理念、想定しているターゲット層(初学者向けか、経験者向けか)などを明確にします。

② 強み(メリット)
ビジュアルの見やすさ、図解やイラストの豊富さ、解説の丁寧さ、アウトプット教材の充実度など、シリーズごとの特徴を客観的に評価します。

③ 弱み(デメリット)
情報量の偏り、網羅性の不足、レイアウトの古さなど、他シリーズと比較した際に浮かび上がる注意点を整理します。

④ 相性が良い受験生タイプ
各シリーズがどのような学習スタイル・性格の受験生に向いているかを明示します。

⑤ ラインナップ構成
基本テキスト・問題集・記述対策・模試など、シリーズ内でどこまでカバーされているか。ワンセットで完結できるかどうかも重要な評価軸です。

この5つの視点を押さえておけば、単なる「人気ランキング」に惑わされず、自分の学習方針に本当に合った教材を選ぶことができます。

2.3 各シリーズの詳細分析:特徴・強み・相性を一挙にチェック

ここからは、選定した6つの教材シリーズについて、特徴・メリット・注意点を個別に解説します。どのシリーズも優れた点がありますが、「誰に向いているか」が大きく異なります。ご自身の学習スタイルに合うかどうかを確認しながら読み進めてください。

合格革命シリーズ(早稲田経営出版)

コンセプト
王道のバランス型。図表と文章のバランスが良く、「理解」と「暗記」のメリハリが効いた構成。独学者が一通りの学習を自己完結できるよう設計されている。

強み

  • 全ページフルカラーで、図解が豊富。初学者にも親しみやすい。
  • テキストと問題集の連携が強く、学習サイクルが回しやすい。
  • 記述式・多肢選択式の専用問題集など、アウトプット教材が充実。

注意点

  • 民法の理論解説はやや淡白との声も。背景理解よりは効率重視。
  • 問題集の種類が多く、初心者は取捨選択に迷いやすい。

おすすめタイプ
法律初学者で、視覚的にわかりやすい教材を好む方。1シリーズで完結させたい人に最適。

みんなが欲しかった!シリーズ(TAC出版)

コンセプト
法律のとっつきにくさを払拭する「超ビジュアル型」教材。イラストと図表で構成された“教科書”のような一冊。

強み

  • 圧倒的なフルカラーレイアウト。すべてのページが見やすく直感的。
  • 5分冊構成で持ち運びしやすく、隙間時間の学習にも最適。
  • 暗記しやすいよう重要ポイントが整理されている。

注意点

  • 図表重視のため、法律の背景や条文構造の深掘りには不向き。
  • 知識が断片化しやすく、体系的理解が得にくい側面もある。

おすすめタイプ
活字が苦手で、まずはとにかく取りかかりやすい教材が欲しい人。暗記中心の効率学習を重視したい方に。

出る順行政書士シリーズ(LEC)

コンセプト
LEC伝統の“本格派”教材。論点の網羅性と法的思考力の養成を重視した構成で、独学でも応用力がつく仕組み。

強み

  • 過去10年分・約600問を収録した「ウォーク問」は業界随一の演習量。
  • テキストは条文趣旨や制度の背景を丁寧に解説しており、理論がしっかり学べる。
  • 補助教材の完成度が高く、スマホアプリや要点整理集なども充実。

注意点

  • テキストは2色刷りで視覚的にはやや地味。
  • 初学者にとっては、ややハードルが高く感じられる内容量。

おすすめタイプ
一度は受験経験があり、法律を本質からしっかり学びたい方。アウトプット重視派や、じっくり学ぶ時間がある人に最適。

スッキリわかるシリーズ(TAC出版)

コンセプト
合格ライン(60%)を最短で突破するために、重要論点に絞って解説した“効率型テキスト”。

強み

  • 試験に出る箇所だけに絞った「割り切り構成」。
  • 重要度に応じてランク分けされており、優先順位が明確。
  • 薄くてコンパクト、全体像が一目でつかめる。

注意点

  • 網羅性に乏しく、応用問題や記述式への対応は限定的。
  • 他シリーズに比べて古めかしい構成(2色刷り・分冊なし)。

おすすめタイプ
時間がない社会人や、すでに他資格で法律をかじっている人。必要最小限のインプットで短期合格を狙いたい方に。

うかる!行政書士シリーズ(伊藤塾)

コンセプト
法律を「理解」することに重きを置いた、解説重視の学習書。司法試験指導のノウハウを活かした本格派。

強み

  • 民法・行政法など、法の趣旨や制度背景を丁寧に解説。
  • 解説補助の無料講義動画が付属しており、独学でも質の高い理解が可能。
  • 全体的に情報密度が高く、本質的な力が身につく。

注意点

  • 情報量が多く、効率性やスピード感を求める人には不向き。
  • 問題集とテキストの連携がやや弱め。

おすすめタイプ
知的好奇心が強く、「なぜそうなるのか」を深く理解したい学習者。再受験者や中上級者にもおすすめ。

合格のトリセツシリーズ(LEC)

コンセプト
「独学者ファースト」を掲げたLECの新ブランド。フルカラー×動画講義×学習アプリという“現代型学習”を前提に開発。

強み

  • 全ページフルカラー。図解やイラストで直感的に学べる構成。
  • 無料の動画解説・学習アプリ付きで、教材単体以上の価値。
  • 記述式や判例学習向けの新しい補助教材も登場。

注意点

  • シリーズとしての歴史が浅く、実績面では未知数。
  • 法理論の深堀りに関しては、出る順シリーズなどに劣る傾向。

おすすめタイプ
最新の学習スタイルにフィットする教材を探している人。動画での理解が得意な方、スマホ学習を併用したい方に最適。

2.4 行政書士教材市場は“2極化”している──あなたはどっち派?

主要6シリーズを俯瞰してみると、現在の行政書士試験教材市場は、はっきりと2つの指導方針に分かれていることが見えてきます。

それは、
① ビジュアル&効率重視型
② 解説&理解重視型
という、真逆のアプローチです。

【ビジュアル・効率重視タイプ】

代表シリーズ:

  • みんなが欲しかった!(TAC出版)
  • 合格革命(早稲田経営出版)
  • 合格のトリセツ(LEC)

これらの教材は、全ページフルカラー、豊富な図解、分冊構成といった「見やすさ」と「使いやすさ」に特化しています。
「法律は難しい」という初心者の心理的ハードルを下げ、短期間でも効率よく点を取るための設計がされています。

特に、試験範囲が広い行政書士試験では、「とにかく早く全体像を把握したい」「勉強の継続に抵抗を感じないことが大事」といったニーズにマッチしています。

【解説・理解重視タイプ】

代表シリーズ:

  • 出る順行政書士(LEC)
  • うかる!行政書士(伊藤塾)

こちらのタイプは、ビジュアルやデザインよりも、文章による丁寧な解説と、条文・趣旨・判例構造への深い理解を重視します。
法的思考力の育成や、記述式・応用問題への対応力をつけるには非常に効果的です。

「試験合格だけでなく、法律をきちんと理解したい」「行政書士の実務に活かせる知識を身につけたい」という中・上級者や再受験生に向いています。

✅ 選び方のポイント

このように、行政書士教材は「どう学ぶか」という学習観の違いによって、二極構造になっています。

単に「人気がある教材はどれ?」と探すのではなく、
「自分はどんなスタイルで学びたいのか?」
という視点から選ぶことが、最適な教材選びの第一歩です。

2.5 LECの“二刀流戦略”──伝統と革新を使い分ける巧妙な布陣

行政書士教材市場の2極構造を巧みに利用しているのが、大手資格予備校のLEC(東京リーガルマインド)です。

LECは、「出る順行政書士シリーズ」と「合格のトリセツシリーズ」という、まったく異なるコンセプトの2ブランドを同時に展開しています。

✅ 出る順行政書士シリーズ:正統派・重厚型

長年の実績を誇る出る順シリーズは、論理的かつ網羅的な解説と、豊富な過去問演習を柱とした“本格派教材”です。
初学者にはやや難しいと感じられる場面もありますが、「体系的に理解したい」層からは絶大な信頼を得ています。

✅ 合格のトリセツシリーズ:現代的・モダン型

一方、合格のトリセツシリーズは、ビジュアル重視のフルカラー構成、動画講義、アプリ連携といった“新世代の独学者”向けに特化した教材です。
視覚的にわかりやすく、操作性・デジタル学習との相性も抜群です。

🔍 戦略の巧みさ

LECは、伝統の出る順をあえて変えず、新ブランドを立ち上げることで、
「従来の本格派ユーザー」と「現代的な独学ユーザー」の両方を取り込む戦略を採っています。

これにより、教材市場におけるLECの存在感はさらに高まり、ターゲット層ごとの“使い分け”が可能になったのです。

「どちらのLEC教材が自分に合うか?」を見極めるだけでも、選択肢は一気に明確になります。

2.6 シリーズ別スペック比較一覧:強み・価格・対象読者を一目でチェック

ここまでの分析を踏まえて、主要6シリーズのスペックを比較できる一覧表をまとめました。

「自分に合うシリーズはどれか?」を判断するためには、
教材の特徴(強み・弱み)
対象とする受験生タイプ
価格や付属教材の内容
といった項目を一度に見渡せることが重要です。

以下の表では、各シリーズの「出版社・基本思想・印刷仕様・ラインナップ・対象読者・価格」などを整理しました。短時間で全体像を把握し、候補を絞り込む参考にしてください。

シリーズ名出版社学習コンセプト印刷形式分冊主な強み注意点対象読者基本テキスト価格(税込)特徴的ラインナップ
合格革命早稲田経営出版網羅性と理解のバランスを重視した王道型フルカラー4分冊可見やすさ・解説・問題集の充実度民法解説がやや淡白、問題集選びが難しい初学者・バランス重視派約3,190円記述式対策や千問ノック問題集が人気
みんなが欲しかった!TAC出版図解・効率重視のビジュアル型フルカラー5分冊可圧倒的な見やすさ・携帯性深い解説が少なく知識が断片化しやすい活字が苦手な人・暗記中心派約3,300円イラストと図解で理解を補助
出る順行政書士LEC本格派・法的思考力の養成2色刷り分冊不可圧倒的な問題量(ウォーク問)視覚的には地味、初学者には難しい学習経験者・理論派約3,080円過去問演習量No.1のウォーク問
スッキリわかるTAC出版重要論点に絞った効率型2色刷り分冊不可コンパクトで全体像を把握しやすい網羅性にやや不安、古い構成時間のない社会人・短期集中派約3,080円BEST60などの頻出テーマ問題集
うかる!行政書士伊藤塾深い理解を促す解説特化型フルカラー分冊不可丁寧な法理解説・無料講義動画情報量が多く効率重視には不向き知的好奇心が強い人・再受験者約3,300円司法試験ノウハウを活かした良質解説
合格のトリセツLEC独学者ファースト・最新ツール対応型フルカラー5分冊可動画講義・アプリ連携実績がまだ浅く、解説の深みは弱め現代的学習者・デジタル学習派約3,300円判例重視の記述対策書が特徴

※価格は2025年度版の一般的な定価を参考にしています。

この比較表を見ながら、「ビジュアル重視で進めたい」「基礎から本質的に理解したい」など、自分の学習戦略に合うシリーズを決めると、教材選びの迷いはぐっと減ります。

第3章 学習段階別・目的別に選ぶ!おすすめ教材セット

教材は単体の評価も大事ですが、「どう組み合わせるか」によって学習効果は大きく変わります。
ここでは、学習者のレベルや課題に応じた、最適な教材の組み合わせ例を紹介します。

3.1 【初学者向け】無理なく始められる“安心セット”

🔹組み合わせ①:視覚重視のバランス型

合格革命 基本テキスト + 合格革命 基本問題集

  • フルカラーで視覚的にわかりやすく、独学でも進めやすい構成。
  • テキストと問題集の連携が強く、「1テーマ読む→すぐ解く→復習する」という学習サイクルが自然に組める。
  • 記述式・模試なども同シリーズで揃えられるので、教材に迷うことなく学習に集中できる。

🔹組み合わせ②:本質理解重視の解説特化型

うかる!行政書士 総合テキスト + 総合問題集

  • 「なぜそのルールになるのか?」まで踏み込んだ深い解説が特徴。
  • 無料動画講義付きで、独学でも講義に近い学習体験が可能。
  • 法律初学者でも、丁寧な導入とステップ設計で安心して学び始められる。

📌 ポイント:最初に選んだ教材は、半年以上使い続ける「相棒」になります。無理なく学べて、信頼できるものを選ぶことが大切です。

3.2 【経験者向け】弱点克服&得点強化セット

🔹組み合わせ①:圧倒的演習量で穴を埋める型

出る順 ウォーク問(法令編)+ 自分の持っている基本テキスト

  • 約600問の過去問をテーマ別に整理したウォーク問で、弱点分野を徹底補強。
  • 一度行政書士試験を受けたことのある人や、他資格で基礎知識のある人におすすめ。
  • テキストは辞書代わりに使い、ひたすら問題演習に集中するスタイル。

🔹組み合わせ②:精度と記述力を鍛える“仕上げ型”

合格革命 肢別過去問集 + 合格革命 40字記述式・多肢選択式問題集

  • 択一式の正誤判断力を鍛える「肢別式」でミスのパターンを分析。
  • 記述・多肢対策に特化した問題集で得点差がつく分野を重点的に攻略。
  • 知識の整理と表現力の向上が同時に狙える、経験者向けの強化セット。

📌 ポイント:経験者は「理解の質」「記述表現」「応用力」の向上が鍵。アウトプット中心の設計にシフトしましょう。

3.3 【論点別】苦手科目を狙い撃ちする補助教材

全体的な学習を進めつつ、特定分野の苦手を克服したいときは「分野特化型教材」の活用が効果的です。

📘 民法が苦手な人へ

  • よくわかる民法(自由国民社)
     → 民法の全体構造を解説付きで学び直せる定評ある副教材。法律の基礎理解をじっくり構築したい人向け。
  • 合格革命 民法・商法が得意になる本
     → 民商の演習に特化した問題集。過去問+予想問で苦手箇所を重点攻略。

📗 行政法の強化に

  • 出る順 ウォーク問(法令編)
     → 行政法は配点が最も高く、過去問の演習量で差が出る。分量・質ともに高水準。
  • 合格革命 行政法が得意になる本
     → 最新判例や頻出テーマを中心に、行政法特有の出題傾向に沿った演習ができる。

📙 記述式・多肢選択式対策に

  • 合格革命 40字記述式・多肢選択式問題集
     → 初学者でも取り組みやすく、段階的に記述力を伸ばせる構成。
  • 出る順 40字記述式・多肢選択式問題集
     → LECの伝統的な演習問題で、基本から応用まで幅広くカバー。
  • 合格のトリセツ 重要判例解説(記述・多肢対応)
     → 判例に特化した新機軸の教材。図解やフローチャートで論点整理も視覚的にできる。

📌 ポイント:苦手分野は「1冊に絞って集中的にやる」ことで、短期間で成果が出やすくなります。

第4章 教材の力を引き出す!効果的な学習サイクルの回し方

どれだけ良い教材を選んでも、それを“どう使うか”が合否を分けます。
この章では、行政書士試験の学習において多くの合格者が実践している「教材活用法」の中でも、特に重要な2つのポイントに絞って解説します。

4.1 「読む」→「解く」→「戻る」──3ステップで回す学習サイクル

独学者の失敗で多いのが、「まずテキストを全部読んでから、後で問題集に取り組もう」という直線的な学習です。
しかしこのやり方では、時間が経つにつれて前半の知識が薄れてしまい、非効率な反復に陥る可能性があります。

そこでおすすめなのが、
インプット(読む)→アウトプット(解く)→復習(戻る)
という“循環型”の学習サイクルです。

✅ ステップ1:インプット(理解中心)

テキストを1章または1テーマずつ読み進め、「条文の趣旨」「制度の背景」「なぜそうなるのか」に意識を向けましょう。すべてを暗記する必要はなく、まずは全体像を把握するのが目的です。

✅ ステップ2:アウトプット(診断としての問題演習)

読んだ直後に、該当する問題をすぐに解きます。この時点では点数よりも「どこが理解できていないか」を見つけるのが目的です。できればマークをつけておくと後の復習にも活きます。

✅ ステップ3:復習(再インプット)

間違えた問題や迷った選択肢については、必ずテキストに戻って再確認しましょう。「どこで勘違いしたのか」「なぜ正解がその選択肢なのか」を論理的に理解することが重要です。

📌 この3ステップを小単位で繰り返すことで、記憶が定着しやすくなり、問題への対応力も自然と向上します。

4.2 「何周したか」ではなく「何を得たか」──周回学習の本質とは

行政書士試験では、過去問演習が極めて重要です。
しかし、「とりあえず5周した」「正解率が上がった」といった“数”に意識が向きすぎると、理解が浅いままになる危険があります。

大切なのは、回数ではなく“1周ごとの目的”と“分析の深さ”です。

🌀 周回別の目的意識と進め方

  • 1周目:全体把握と弱点診断
     まずは通して解いてみて、出題傾向や問題の形式に慣れましょう。間違えた問題・曖昧な問題には✓マークを付けておくと、後で復習しやすくなります。点数は気にせず“苦手の地図”を作る意識でOKです。
  • 2周目:知識の精度を高める
     ✓を付けた問題を中心に、「なぜ正解なのか」「なぜ他の選択肢が誤りなのか」を自分の言葉で説明できるレベルまで掘り下げていきます。条文・判例・テキストの根拠に必ず戻りましょう。
  • 3周目以降:定着とスピード・精度の向上
     この段階では、解答の“瞬発力”と“確実性”を養うため、正答率だけでなく「どれだけ迷わず選べるか」を意識します。3周目でも間違えた問題は重点的に反復し、確実な得点源に仕上げましょう。

📌 周回の本質は、機械的な繰り返しではなく、知識の「精製」と「定着」にあります。“答えを覚える”から“理由を理解して選べる”へとレベルアップしていくイメージで進めましょう。