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はじめに:合否を分けるのは「学習量」より「インプットの質」

行政書士試験は、毎年多くの挑戦者を惹きつける人気の国家資格でありながら、その合格率は例年10〜13%前後と非常に厳しい現実を突きつけます。裏を返せば、10人に1人しか合格できない「難関試験」であるとも言えます。

この厳しさの一因は、法律科目(行政法・民法・憲法・商法)に加え、一般知識(政治・経済・情報・文章理解)まで含まれる広大な出題範囲にあります。多くの受験生が600〜1000時間という長時間の学習を重ねても、非効率な勉強法に陥ったままでは、思うように得点につながらないのが現実です。

合格者と不合格者を分ける決定的な違い——それは「学習時間」ではなく、「インプットの質と方法」にあります。1時間勉強しても頭に残るかどうかは、やり方次第。同じ時間をかけても、記憶に深く残るインプットと、通り過ぎるだけのインプットでは、数か月後に大きな差が生まれます。

本記事では、脳科学と記憶理論をベースに、「記憶に残すための学習法」を徹底的に解説します。特に、テキストの読み方やノートの取り方といった“インプット”の部分に焦点を当て、「何を覚えるか」だけでなく「どう覚えるか」に戦略的にアプローチしていきます。

本気で合格を目指すあなたへ——今こそ、自分の学習法を根本から見直し、合格へつながる最短ルートを手に入れましょう。

第1章:なぜ記憶に残らないのか?——脳科学が示す「避けるべき学習法」

1.1 「やった気」だけが積み上がる——記憶に残らない勉強の共通点

多くの受験生が「これだけ勉強したのに、全然覚えていない……」という悩みに直面します。しかしその原因は、決して努力不足ではありません。実は、科学的に「効果が薄い」とされる学習法を無意識のうちに取り入れてしまっていることが大きな要因です。

たとえば以下のような学習スタイルは、記憶に残らない典型例です:

  • 受動的な再読
    同じテキストを何度も繰り返し読むだけでは、「理解した気」になるだけで、記憶には定着しにくいとされています。これは心理学で「流暢性の錯覚(fluency illusion)」と呼ばれ、内容がなんとなく馴染んできた感覚が、実際の理解や記憶とは異なることを意味します。
  • 線を引くだけのマーカー学習
    重要そうな箇所にマーカーを引くのは、多くの人が無意識にやりがちな行為です。しかし、目的やルールを持たずに線を引くだけでは、情報の取捨選択や理解が伴わず、記憶にはつながりません。むしろ情報を整理する力が養われないことで、応用問題に弱くなる恐れもあります。
  • 一夜漬けの詰め込み学習
    試験直前に詰め込む「一夜漬け」は、短期記憶には残っても、数日後にはすぐに抜け落ちてしまうという研究結果が多数あります。特に行政書士試験のような長期的・体系的な理解が必要な試験では、通用しない学習法です。

これらに共通しているのは、「情報を受け取るだけの受動的な姿勢」に陥っていること。脳は、重要だと認識しなかった情報をすぐに忘れてしまいます。記憶に残すには、脳を“使う”学習、つまり能動的な関与が必要なのです。

1.2 合格者は無意識にやっている——記憶に残る学習「3つの原則」

それでは、記憶に残る「正しい学び方」とはどのようなものでしょうか。ここでは、認知心理学と脳科学の研究に基づき、合格者が自然と実践している3つの学習原則をご紹介します。

原則①:想起練習(Active Recall)

最も記憶に残るのは、「思い出す」という行為です。これは「テスト効果」とも呼ばれ、知識を何度も引き出すことで、脳が「これは重要な情報だ」と認識し、記憶の定着が強化されます。

  • 自作の小テストを解く
  • ノートやテキストを閉じて自分の言葉で説明してみる
  • 白紙に覚えていることを書き出してみる

といった方法は、行政書士試験において特に効果的な学習法です。

原則②:分散学習(Spaced Repetition)

記憶は時間とともに薄れていきます。しかし、適切なタイミングで繰り返し復習することで、忘却を食い止めることができます。これが「分散学習」の考え方です。

「学習した翌日 → 1週間後 → 1か月後」と、徐々に復習の間隔を広げていくことで、知識が長期記憶に移行しやすくなります。

原則③:精緻化(Elaboration)&チャンク化(Chunking)

ただ暗記するのではなく、意味を持たせて関連づける「精緻化」も重要です。

  • その条文はなぜ存在するのか?
  • 他の制度との違いは何か?
  • 過去問ではどう問われたか?

といった“問いかけ”を通じて、知識の背景を理解することで記憶が深まります。

また、条文や論点を「要件・効果」「原則・例外」などにグルーピングする「チャンク化」によって、複雑な情報も整理され、記憶しやすくなります。

これら3つの原則に共通するのは、学習者が「受け身」でなく「能動的」に関わるということです。記憶は、脳を働かせた分だけ深く残るもの。次章からは、この原則を具体的な学習行動にどう落とし込むか、テキスト読解やノート作成の実践編に入っていきます。

第2章:テキスト読解が合否を分ける——記憶に残すための“読む技術”

2.1 「全部覚えよう」とするほど失敗する——合格点主義の読み方へ

行政書士試験のテキストは分厚く、内容も専門的で難解です。まじめな受験生ほど、「全部覚えないといけない」「細かいところまで理解しなければ」という“完璧主義”に陥りがちです。

しかし、行政書士試験は相対評価ではなく、あくまで絶対評価です。つまり、他の受験生と競うのではなく、「合格基準点に達すれば誰でも合格できる」試験なのです。

具体的には以下の基準があります:

  • 法令科目:5割以上(満点244点中122点)
  • 一般知識:4割以上(満点56点中24点)
  • 全体:6割以上(満点300点中180点)

この構造を踏まえると、満点を狙う必要は一切ありません。むしろ、合格点を効率的に取るために「何を捨て、どこに力を入れるか」が重要です。

特に「行政法(112点)」と「民法(76点)」の2科目だけで188点を占めており、この2科目を制するだけで合格ラインを超えることも可能です。

つまり、テキストを読むときには次のような視点が欠かせません:

  • すべてを理解しようとせず、出題可能性が高い部分に集中する
  • 細部にこだわりすぎず、重要論点に絞って繰り返す
  • 覚えるべき知識を見極め、読む段階から戦略的に選択する

この“合格点主義”の姿勢こそが、テキスト読解のスタートラインです。

2.2 「何度も読む」はNG——目的別に読み分ける“多段階リーディング”

テキストを最初から最後まで完璧に理解しようとすると、多くの人が途中で挫折します。合格者は、一度で理解しようとはせず、「読み方を段階的に変えていく」多段階リーディングを実践しています。

これは、目的に応じて読み方を変えることで、効率的に理解と記憶を積み上げる方法です。

第1段階:通読(ざっと全体を見渡す)

まずはテキストをざっくり通して読むことで、「全体像」や「構成」を頭に入れます。この段階では、細かい内容にこだわらず、テキスト全体の流れや各章の位置づけを把握するのが目的です。

「何が分からなかったか」を意識しながら、立ち止まらず最後まで読み切ることが重要です。

第2段階:概要理解(論点の把握)

次に、各章ごとの主要な論点論理の流れを丁寧に追っていきます。この段階では、「どの論点が重要か」「自分がどこにつまずいているか」を把握することが目的です。

ここで初めて、重要度に応じて学習の優先順位をつけられるようになります。

第3段階:精読(深掘りして読み込む)

最後は、分からなかった部分や重要論点を重点的に読み込みます。条文を六法で確認し、なぜその規定が必要なのか、判例の趣旨は何か、といった背景を考えながら読みます。

過去問との接点を意識しつつ読むことで、実際の試験で「使える知識」へと変わっていきます。

このように、読む段階を「全体把握 → 論点整理 → 深掘り理解」と分けて進めることで、情報が段階的に整理され、無理なく定着していきます。

ただ「何度も読む」だけの勉強法から、戦略的に読み分ける勉強法へ。これが、テキスト読解で結果を出すための第一歩です。

2.3 読むだけでは終わらせない——SQ3R法で“記憶に残る読書”へ

テキストをただ読み流しているだけでは、知識は定着しません。そこで効果を発揮するのが「SQ3R法」という、記憶に残すための読解メソッドです。

SQ3Rとは、以下の5つのステップから構成されています:

  • S:Survey(調査)
  • Q:Question(質問)
  • R:Read(精読)
  • R:Recite(再現)
  • R:Review(復習)

それぞれのステップを行政書士試験の学習に当てはめると、次のように活用できます。

【S】Survey:ざっくり全体を把握する

本格的に読む前に、章のタイトル・小見出し・図表・太字の箇所などをざっと眺めて、「この章では何を学ぶのか」「どんな構造になっているのか」を把握します。これは、2.2で紹介した「通読」の準備段階にあたります。

【Q】Question:自分で問いを立てる

次に、小見出しやテーマに対して、自分なりの問いを設定します。

たとえば、「代理権の濫用」という見出しを見て——
「代理権の濫用とは何か?」
「その場合、本人は拘束されるのか?」

といった疑問を持つことで、脳が“答えを探そうとするモード”に切り替わり、理解と記憶が深まりやすくなります。

【R】Read:問いに答える意識で読む

設定した問いに答えるつもりでテキストを読むと、重要な情報に自然と意識が向きます。読み進めながら「この情報はどの問いに対応するのか?」と考えることで、受動的な読書から能動的な学習へと変わります。

【R】Recite:思い出しながら自分の言葉で説明する

1つのセクションを読み終えたら、テキストを閉じて、先ほど立てた問いに自分の言葉で答えてみます。音読やメモ書きでも構いません。

これは「アクティブリコール(想起練習)」の実践であり、記憶を脳に定着させる最も強力な方法です。

【R】Review:要点を振り返る

最後に、テキストやノートを見返して、学んだ内容を確認します。この復習のプロセスが、分散学習(Spaced Repetition)にもつながり、長期記憶化を助けます。

このように、SQ3R法は読む・考える・思い出すという一連のプロセスを組み込んだ、非常に実践的な読解術です。読むだけで終わらず、「学んだことを思い出し、使える知識に変える」ための強力な武器として活用しましょう。

2.4 マーカーは“考えるためのツール”——色分けルールで理解を深める

マーカーを使うこと自体は悪いことではありません。問題は、目的なくただ線を引くだけになってしまうことです。それでは「勉強した気」になるだけで、学習効果は薄くなってしまいます。

合格者の多くは、マーカーを“思考の道具”として活用しています。具体的には、色分けにルールを設けることで、情報を分類・整理しやすくしているのです。

以下は、行政書士試験の法律科目において特に効果的な色分けルールの例です:

用途・意味使用例
黄色原則・条文の基本構造民法93条の原則部分「心裡留保は意思表示として有効」など
ピンク例外・ただし書き・対立概念民法93条1項ただし書き「相手方が真意を知っていたとき」など
要件(法律効果が発生する条件)民法192条の「善意かつ無過失で平穏・公然に占有」など
効果(要件を満たした結果)民法192条の「即時取得が認められる」など
オレンジ論点・判例のキーワード民法177条「第三者」など、出題頻度の高い用語

このように、「原則と例外」「要件と効果」などを視覚的に分けることで、条文や判例の構造が一目で理解できるようになります。

さらに応用として:

  • 自分で重要だと思った箇所(主観)と、講義で指示された重要箇所(客観)を別の色で分ける
  • 定義語、頻出ワード、ひっかけポイントなどを別の色に指定する

といった工夫も効果的です。

重要なのは、「色を使うこと」が目的ではなく、「色を使って分類・分析すること」が目的であるという点です。

マーカーを使うたびに「この情報は何に分類されるのか?」と自問することが、脳を活性化させ、記憶の定着を助けてくれます。マーカーは、受動的な“塗り絵”ではなく、能動的に理解を深めるための思考ツールとして活用しましょう。

第3章:ノートは“作る”のではなく“育てる”——合格者が実践する「情報一元化」戦略

3.1 なぜ「まとめノート」が学習効率を下げるのか

多くの受験生が、「きれいなまとめノートを作ること」が勉強の一部だと考えています。確かに、手を動かして情報を整理することは一定の効果がありますが、それが目的化してしまうと、本来の「得点力を上げる」という目的から外れてしまいます。

まとめノートが非効率になりがちな理由は以下のとおりです:

  • 時間がかかりすぎる
    カラーペンで装飾したり、図や表を丁寧に書き写したりする作業は非常に時間を消費します。その時間は、本来「演習」や「アウトプット訓練」に使うべき貴重な資源です。
  • ただの“写経”になりやすい
    特に学習初期は、知識の重要度や出題頻度を判断できないため、テキストを丸写ししてしまうケースが多く見られます。これは“受動的学習”の典型であり、脳を使わない「手作業」にとどまってしまいます。
  • 情報がバラバラになる
    テキスト・ノート・過去問・模試など、情報が複数の媒体に散らばることで、復習時に「どこに書いたか分からない」という状況が頻発します。これでは必要な知識にすぐアクセスできず、学習効率が大きく低下します。

こうした理由から、合格者の多くは「きれいなノート作り」よりも、「テキストへの集約」を重視しているのです。

3.2 合格者が実践する「情報一元化」とは何か?

「情報一元化」とは、学習の過程で得たすべての知識・気づき・補足情報を、1つのテキスト(=自分専用のメイン教材)に集約する学習スタイルです。これは、試験直前期における「効率的な総復習」のために、極めて有効な戦略です。

【目的とメリット】

  • 教材を1冊に絞ることで、情報の迷子にならない
  • 復習の導線が明確になり、時間の節約につながる
  • テキストが“自分だけのオリジナル六法”に進化する

たとえば次のような情報を、余白や欄外にどんどん書き込んでいきます:

  • 講義中のメモや板書内容
  • 過去問・模試で間違えた論点
  • 判例の趣旨や条文のポイント
  • 暗記に役立つ語呂合わせや図解 など

学習が進むにつれて、自分が信頼する1冊のテキストが「知識の拠点」となり、最終的には「この1冊を見れば全部思い出せる」という状態になります。

【柔軟なアプローチ:「インフォメーションセンター」方式】

なお、「情報一元化」は必ずしもすべてを書き写す必要はありません。たとえば、以下のような「参照インデックス型」も有効です。

  • 「R4年 行政法 問18 参照」
  • 「行政事件訴訟法10条と対比」

といった形で、テキストの余白にリンク情報だけ書き込んでおけば、詳細な情報は別資料に残しつつ、テキスト上で把握できる状態を保てます。

この「インフォメーションセンター」方式は、特に時間の限られる社会人受験生にとって、非常に効果的かつ現実的な方法です。

まとめると、「情報一元化」とは、散らばった情報を“探さなくていい状態”にするための技術です。これを習慣化すれば、復習のたびに迷うことがなくなり、学習に集中できる環境が整います。

3.3 実践編:書き込み・貼り付け・インデックスの使い方

「情報一元化」を実現するうえで重要なのは、単に情報を集めることではなく、“使える形”で整理することです。ここでは、具体的な3つの手法——「書き込み」「貼り付け」「インデックス活用」のテクニックをご紹介します。

【1】余白を最大限に活かす「書き込み術」

市販のテキスト、特に伊藤塾のような講座テキストは、あらかじめ余白が多く設けられています。このスペースを以下のように積極的に活用しましょう。

  • 講義中の補足メモや板書の要点
  • 判例の結論や事案のポイント
  • 過去問で間違えた箇所や年度・問題番号
  • 覚えにくい語句に対するゴロ合わせや例え

ただ書くだけでなく、「なぜそうなるのか」「どこが間違いやすいか」といった、自分の視点を付け加えると記憶に残りやすくなります。

【2】視覚的に強化する「貼り付け活用」

必要に応じて、以下のような紙ベースの情報を縮小コピーして貼り付けるのも有効です。

  • 講義で配布されたレジュメの一部
  • 模試で間違えた問題の解説
  • 他教材の図表や整理されたフローチャート

これにより、テキストを開くだけで必要な情報が一気に目に入り、復習効率が飛躍的に向上します。

【3】復習の時短に効く「インデックス活用法」

頻繁に見返すページや重要テーマ、苦手な分野には、付箋やインデックスシールで“目印”をつけておきましょう。

  • 「行政不服審査法」→ 青
  • 「国家賠償法」→ 赤
  • 「判例要点」→ 黄色

といった色分けをしておくと、直前期の短時間復習でも、瞬時に目的のページにアクセスできるようになります。

これらの方法を使って、テキストを“単なる参考書”ではなく“自分だけの総合データベース”へと進化させることが、「情報一元化」の真髄です。

3.4 紙とデジタル、どちらが最適か?——情報一元化におけるツールの選び方

現代の学習環境では、「紙のテキスト+手書きノート」だけでなく、「タブレット+ノートアプリ」などのデジタルツールを使った学習も一般化しています。どちらを選ぶべきかは、自分の学習スタイルや目的に応じて判断することが大切です。

以下に、両者のメリット・デメリットを比較してみましょう。

比較項目紙(手書き)デジタル(タブレット・ノートアプリ)
記憶定着◎ 書く動作が記憶を強化○ 入力は早いが、脳への刺激は少なめ
集中力◎ 通知や誘惑が少なく集中しやすい△ SNS・通知で集中が途切れやすい
編集性△ 修正に手間がかかる◎ コピー・貼り付け・削除・移動が自在
検索性× 手作業で探す必要あり◎ キーワード検索で瞬時にアクセス可能
携帯性△ 分厚くなりがち◎ すべての教材を1台に集約できる
コスト・管理◎ 紙とペンだけでOK、電源も不要△ デバイス購入費やバッテリー管理が必要

【結論】重要なのは“道具”よりも“原則”の実践

紙でもデジタルでも、「情報を1か所に集め、復習しやすい形に整える」ことこそが本質です。

  • 紙であれば、余白・貼り付け・インデックスを活用する
  • デジタルなら、GoodNotes・OneNoteなどを使って図解やコメントを集約する

どちらの方法でも、自分が継続しやすく、復習がスムーズに進む形を選ぶことが、最短で合格に近づく鍵となります。

第4章:目的が明確だからこそ、ノートは価値を持つ——“使えるノート”のつくり方

「まとめノートは非効率」と聞くと、すべてのノート作成を否定されたように感じるかもしれません。しかし、重要なのは“何のために作るか”という明確な目的です。

ノートは、それ自体を完成させることがゴールではなく、理解を深め、記憶を定着させ、合格に近づくための“戦略的ツール”であるべきです。

この章では、目的ごとに実際に効果が確認されている「意味のあるノート術」を3つ紹介します。

4.1 弱点と徹底的に向き合う「間違いノート」

【目的】

過去問や模試で間違えた問題、何度覚えても忘れてしまう知識を1か所に集約し、自分専用の「弱点対策ノート」を作ること。

【作成方法】

  • 媒体選び:A4ルーズリーフや差し替え可能なノートが便利。
  • 記録内容
  • 問題文(要約でもOK)
  • 正解とその根拠(条文・判例など)
  • 自分が選んだ誤答とその理由(思考の誤り)
  • 覚えにくい用語には図解やゴロ合わせを追加

【ポイント】

  • 書くべきは「知っていること」ではなく、「間違えたこと」だけに限定
  • 解説の丸写しではなく、「なぜ間違えたのか」という原因分析を重視
  • 復習の頻度は“毎日少しずつ”が鉄則(分散学習と相性抜群)

試験直前期には、最も効果的な“得点強化ツール”となります。

4.2 思考の流れを整理する「コーネル式ノート」

【目的】

講義の内容やテキストの重要箇所を、構造的に整理・定着させるためのフレームワーク。

【ノート構成:3つの領域】

領域内容と活用法
ノートエリア講義や読書中のメモを書き込むエリア。条文の要件・効果や判例要旨なども記録。
キューエリア復習用の“問い”やキーワードを左側に記載。「代理権の濫用とは?」などが好例。
サマリーエリアページ下部に要点を1〜2文で要約。後から見返したときの記憶再構築をサポート。

【活用効果】

  • 情報が自然に構造化され、記憶にも定着しやすい
  • ノート自体が「復習・確認ツール」として機能
  • 自分の“理解できていない部分”をあぶり出すのに最適

学習初期から実践しておくと、時間が経つほど力を発揮します。

4.3 複雑な科目の全体像をつかむ「マインドマップ」

【目的】

法律科目のような抽象的かつ体系的な分野を“見える化”し、知識同士のつながりを整理・把握すること。

【作成方法】

  1. 中心テーマを中央に大きく配置(例:「行政法」)
  2. 主要分野を太い枝で放射状に展開(行政手続法/不服審査法/行政事件訴訟法など)
  3. 論点・条文・判例などを細い枝で補足
  4. キーワードと色・図形で視覚的に強化

【効果と活用法】

  • 各分野の位置づけ・関係性が一目で把握できる
  • 学習の“現在地”を常に確認でき、迷子になりにくくなる
  • 分野横断的な整理(民法と行政法の共通論点など)も可能に

特に、学習の初期段階や直前期の全体整理において、大きな効果を発揮します。

ノートは「まとめる」ものではなく、「使う」ために存在します。
自分の課題と向き合い、理解を深め、得点へつなげる——そんな“戦略的ノート術”を、ぜひ実践してみてください。

おわりに:知識は“出力してこそ”本物になる——インプットを得点力へ変える戦略

本記事では、行政書士試験の合格に直結する「戦略的インプット法」について、脳科学や記憶理論、合格者の実践例をもとに解説してきました。

ポイントは、単なる勉強時間の長さではなく、学び方そのものを変えることにあります。

  • 漫然と読み返すだけの受動的学習から、アクティブリコール(想起練習)による“思い出す”学習へ
  • テキストを頭から順に読む“完璧主義”から、合格点を狙う戦略的読解
  • 情報をバラバラに保管するノート作りから、テキスト中心の情報一元化
  • 目的のない“ノート作成そのものが目的化した学習”から、弱点克服・思考整理・全体把握を目的としたノート術

これらの方針転換によって、記憶は定着し、学んだ知識は「使える知識」へと変わります。

そして忘れてはならないのが、脳科学的にも証明されている重要な事実:

「最高のインプットはアウトプットである」

覚えたことを思い出す、説明する、書く——これらの「出力行動」こそが、学習の完成形です。

行政書士試験は知識を“思い出す試験”であり、知識を“使う試験”でもあります。だからこそ、「使える状態」で頭に残しておくことが最大の戦略なのです。

テキストの読み方、ノートの使い方、学びの姿勢——
このレポートが、あなたの学習を根本から見直し、合格への最短ルートを切り拓くきっかけとなれば幸いです。

迷ったとき、伸び悩んだときは、ぜひこの原則に立ち返ってください。
“覚えるための学び”から、“使いこなすための学び”へ——その一歩が、合格への扉を開く力になります。