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はじめに|合格はゴールではなく、行政書士としての第一歩

行政書士試験の合格、心よりお祝い申し上げます。長い学習期間を経てたどり着いた合格通知は、きっとこれまでの努力を報いてくれるものでしょう。

しかし、本当のスタートはここからです。多くの合格者が直面するのは、「この資格をどう活かしていくか?」という新たな問い。情報を探すと、「行政書士は稼げる」「いや、稼げない」といった両極端な声が溢れ、迷いを深めてしまうことも少なくありません。

成功事例は華やかに語られる一方で、その背景にある戦略や苦労はあまり共有されないのが現実です。本記事では、そうした“合格後のリアル”に真正面から向き合い、あなたがどのようなキャリアを描けるのか、その可能性を多角的に解説していきます。

独立開業か、組織での勤務か。専門分野に特化するのか、幅広く業務を手がけるのか。そして年収をどう伸ばしていくのか——。行政書士という資格の活かし方は千差万別ですが、共通して必要なのは「正しい情報」と「戦略的な選択」です。

このページでは、現役行政書士としての知見と信頼性の高いデータをもとに、キャリア設計の羅針盤として役立つ情報を提供します。行政書士としての歩みを、自信を持って始められるよう、今この時から一緒に考えていきましょう。

第1部|行政書士としてのキャリアパスを考える:あなたに最適な進路とは?

行政書士資格は、たった一枚の登録証でありながら、幅広いキャリアの扉を開いてくれる強力な「鍵」です。
その活かし方は人それぞれで、大きく分けると「独立開業」と「組織内での勤務」の2つに分かれます。

どちらの道を選ぶかによって、働き方・収入・求められるスキルは大きく変わってきます。
この章では、それぞれのキャリアの特徴とリアルな実情を比較しながら、あなたにとって最適な進路を考えるヒントをお届けします。

1.1 独立開業という道:自由な働き方の裏にある経営の責任

多くの合格者が憧れるのが、自らの事務所を構えて独立する道です。
時間や働く場所を自由に選べるという柔軟さや、頑張り次第で収入が青天井になる可能性は、まさに「一国一城の主」としての醍醐味と言えるでしょう。

独立開業のメリット

  • 初期投資が少ない:自宅開業なら30〜40万円程度から始めることができ、参入障壁が低い。
  • ランニングコストも比較的低い:在庫が不要なため、事務所家賃や通信費、広告費などが主な経費となります。
  • 利益率が高い:原価を伴う商材がないため、売上がそのまま利益に直結しやすい構造です。
  • 努力が報酬に反映されやすい:実力や工夫次第で、年収1000万円超も現実的な目標となり得ます。

独立開業の課題

一方で、行政書士は開業した瞬間から“経営者”になります。法律実務に精通しているだけでは不十分で、以下のようなスキルも求められます。

  • 営業力・集客力:最も大きな壁は「継続的に仕事を獲得し続けること」。特に開業初期は収入が不安定になりやすく、多くの行政書士が集客の壁で苦しみます。
  • 経営・マネジメント能力:案件管理、資金繰り、広報、顧客対応など、幅広い業務を一人でこなす必要があります。
  • メンタルの強さと持続力:自由には責任が伴い、孤独な戦いが続くことも珍しくありません。

開業自体は、①資金の確保、②事務所準備、③行政書士会への登録、④税務署への届出、というステップで進みますが、本当のスタートは「最初の依頼者を得ること」から始まります。

独立開業は、挑戦の道であると同時に、自分自身の可能性を最大限に発揮できる場でもあります。
成功するには、「法務の専門家」であると同時に「事業経営者」としての視点が欠かせません。

1.2 組織内で働く行政書士:安定と実務経験を積み重ねる選択

独立開業よりもリスクを抑え、安定した環境でスキルを磨きたいという方にとって、「組織内で働く」という選択肢も有力です。主に以下の2パターンがあります。

① 企業内で働く(企業法務・コンプライアンス担当など)

行政書士が企業に所属し、資格を業として直接行使することはできませんが、行政書士資格を「法律知識の証明」として活かす道は十分にあります。

  • 主な業務:契約書の作成・確認、知的財産の管理、社内規定整備、法的リスク管理など。
  • 年収相場:スタッフ職で400〜800万円程度、管理職や専門職では1000万円を超える例もあります。
  • 求められるスキル:法律知識に加え、業界理解・調整能力・英語力(国際業務がある場合)など。

「行政書士」という看板ではなく、「法務部門の即戦力」として企業から高く評価される可能性があります。

② 行政書士法人や事務所で働く(使用人行政書士として勤務)

実務経験を積みながら、将来的な独立を目指したい方や、経営責任を負わずに専門業務に専念したい方に適した選択肢です。

  • メリット:安定した給与が得られる/多様な案件を経験できる/営業活動を自分で行う必要がない
  • デメリット:求人は弁護士や司法書士に比べて少なめ/独立より年収の上限が低め(目安は300〜600万円)

このルートは、現場での経験を積む“実地訓練の場”として非常に価値が高く、独立開業に備える土台づくりにもなります。

行政書士という資格は、「働き方の選択肢が広い」という点で他の士業にはない強みを持っています。
独立か組織勤務か、それはあなたの価値観やライフスタイルによって最適解が異なります。

重要なのは、「自分にとっての成功とは何か?」を見定め、その実現に向けた現実的な選択を行うことです。

第2部|行政書士の年収事情を読み解く:数字に惑わされず現実を直視する

行政書士を目指す人の多くが最も気になるテーマ——それは「本当に稼げるのか?」という点ではないでしょうか。

ネット上には「平均年収600万円」「年商1000万円は当たり前」といった声もあれば、「食えない」「廃業続出」というネガティブな情報も飛び交い、真実が見えにくくなっています。

この章では、信頼できる統計データや実態調査をもとに、年収に関する誤解を解きほぐし、「成功している行政書士」と「思うように稼げない行政書士」を分ける本質的な要因を明らかにしていきます。

2.1 「平均年収」のワナ:表面の数字に惑わされないことが重要

多くの資格スクールや情報サイトでは、「行政書士の平均年収は550万〜600万円」といった数字が紹介されています。
一見すると高収入なイメージを抱くかもしれませんが、この「平均値」には大きな落とし穴があります。

平均値と現実は違う

平均年収は、年収数千万円の高所得者が全体の数字を引き上げてしまうため、実態とはかけ離れていることがあります。
実際、厚生労働省や日本行政書士会連合会の資料をもとにすると、行政書士の年収の中央値はおおよそ「400万〜450万円」とされており、こちらの方がリアルに近い指標です。

売上500万円未満が約77%

日本行政書士会連合会の実態調査では、年間売上が500万円未満の行政書士が76.8%を占めています。
この数値は、経費を差し引いた実際の所得(年収)ベースで考えると、300万円台、あるいはそれ以下の人も多数存在することを示唆しています。

つまり、「行政書士=高収入」というイメージはあくまで一部の成功者の姿であり、資格を取得しただけで安定収入が得られるという保証はないのです。

2.2 廃業率の誤解と「停滞する行政書士」の実態

「行政書士はやめとけ」「開業3年で9割が廃業」といった話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、これらは実際のデータとは一致しない、“都市伝説”のような情報です。

実際の廃業率は3〜4%

総務省や日本行政書士会連合会の統計によれば、行政書士の廃業率は年間で3〜4%程度にとどまっており、日本の中小企業全体の廃業率と比べても特段高い数値ではありません。

なぜ「食えない」という印象が強いのか

廃業する人は少ないのに、「行政書士は食えない」と言われる背景には、“廃業ではなく停滞”という現象があります。

  • 初期費用が少なく、自宅開業も可能なため、収入が少なくても継続できてしまう
  • 年商100万円〜200万円でも、副業や年金収入があればなんとかなる
  • 「稼げていないが、辞めてもいない」行政書士が大量に存在する

このような現状が、「行政書士=稼げない」という印象の温床になっています。

成功と失敗を分ける最大の分岐点は「集客力」

法律知識を活かして開業したものの、顧客を獲得できなければ売上は上がりません。
「法務のプロ」である以前に、「依頼される存在」として認知され、選ばれなければ収入にはつながらないのです。

年収に関する情報を判断する際は、「平均値」だけでなく「中央値」や「売上構造の実態」にも目を向ける必要があります。

行政書士として成功するためには、資格取得後のキャリア戦略と営業・集客力が不可欠です。

第3部|キャリア戦略:凡人から“選ばれる専門家”へ

行政書士という資格には、「年収1000万円超」を現実にしている先輩方が多数存在します。
ただし、それは“ただ登録しただけ”で到達できる世界ではありません。

高収入を実現している行政書士に共通するのは、戦略的なキャリア設計と、他者との差別化を意識した専門領域の確立です。

この章では、行政書士として成功を目指すために有効な「専門特化」と「ダブルライセンス」の2大戦略を、具体例を交えて解説していきます。

3.1 専門分野に絞り込む:「〇〇に強い行政書士」になることが鍵

行政書士が対応可能な業務は1万種類を超えるとも言われていますが、すべてを手がけるのは現実的ではありません。
むしろ、「なんでもやります」というスタンスは、結果的に“誰にも選ばれない”状態を招くリスクがあります。

なぜ「専門特化」が有効なのか?

  • 顧客は「行政書士」という資格ではなく、「自分の課題を解決できる専門家」を探している
  • 専門性を打ち出すことで、報酬単価を正当に高く設定できる
  • リピート・紹介につながりやすく、集客コストも下げられる

たとえば、建設業許可、入管業務、相続手続き、補助金申請など、需要が高く継続案件に発展しやすい分野は、専門化する価値が大いにあります。

収益性・継続性・スキル要求のバランスが取れた分野例

分野報酬相場(目安)市場ニーズ・将来性継続・紹介の可能性成功に必要なスキル
建設業許可10万〜30万円以上安定・高需要◎(更新・追加等)業界知識、精緻な書類作成
入管・在留資格10万〜20万円以上成長市場◎(更新・永住など)語学力、異文化対応力
相続・遺言20万〜50万円以上超高齢化で恒常需要○(紹介も多い)傾聴力、家族調整力
補助金・法人設立15万円〜(成功報酬型)起業支援で需要増○(継続顧問など)経営知識、提案力

まずは一分野に集中し、業界内で「〇〇の専門家」として認知されることが、高収益への近道です。

3.2 資格の相乗効果を活かす:「ダブルライセンス戦略」で唯一無二の存在に

さらに一歩踏み込んで、高単価業務と顧客満足度を同時に引き上げる方法が「ダブルライセンス」の取得です。
行政書士と相性の良い国家資格を組み合わせることで、顧客の課題をワンストップで解決できる体制を構築できます。

ダブルライセンスの具体例とシナジー効果

資格の組み合わせ想定顧客一括提供できる業務例差別化ポイント
行政書士+社労士中小企業・創業者会社設立・許認可+雇用契約・社会保険手続・助成金申請成長フェーズに合わせた継続支援が可能
行政書士+宅建士相続人・不動産所有者相続手続き+不動産売却・賃貸仲介法務+実務を一人で完結、安心感と利便性を提供
行政書士+司法書士起業家・経営者定款作成・許認可申請+設立登記設立手続をシームレスに対応、手間を最小化
行政書士+中小企業診断士経営者・支援機関補助金申請+経営改善・事業計画策定コンサル×法務で高付加価値提案が可能

顧客側から見れば、「複数の専門家にまたがって依頼する」必要がなくなるため、安心感と信頼性が格段に上がります。

なぜ今、ダブルライセンスなのか?

  • AI時代でも「統合的な解決力」は代替されにくい
  • 他士業と横並びにならず、価格競争から脱却できる
  • 顧問契約や継続受任につながり、経営が安定化する

確かに、ダブルライセンス取得には時間と労力がかかります。しかし、その先に待っているのは、「価格を自分で決められる立場」と「顧客から真に頼られる存在」です。

行政書士で成功を目指すには、「数をこなす」のではなく「選ばれる仕組み」をつくることが重要です。

  • 一点突破の「専門特化」
  • 他者が真似できない「資格の組み合わせ」

この2つの戦略を組み合わせれば、価格競争に巻き込まれず、自分の専門性を最大限に活かしたキャリアを築くことができます。

次章では、こうした戦略を支える外部環境——「法改正」や「AIの進化」がもたらす影響と、それをどうチャンスに変えるかについて詳しく解説していきます。

第4部|未来を見据えたキャリア設計:法改正とAI時代を追い風に変える

行政書士として長く活躍するためには、「今できること」だけでなく、「これからの業界環境」にも目を向ける必要があります。

2025年の行政書士法改正、そして進化するAI技術──
これらは一見すると変化への不安要素に見えるかもしれませんが、見方を変えれば「次の10年を勝ち抜くためのヒント」でもあります。

この章では、制度改正とテクノロジーの波を味方につけ、行政書士としての付加価値を高めるための考え方と戦略をお伝えします。

4.1 特定行政書士が開く新時代──法改正によって広がる業務領域

2025年に予定されている行政書士法の改正は、特定行政書士の実務に大きなインパクトをもたらします。

改正のポイント:不服申立代理の対象拡大

これまで、特定行政書士が行政不服申立を代理できるのは「自ら作成した書類に関する案件」に限定されていました。
今回の法改正により、その条件が「自ら作成することができる書類」に緩和されることで、代理の対象範囲が大幅に拡大されます。

すなわち、依頼者が自分で申請して不許可となった案件に対しても、後から特定行政書士が代理人として不服申立を行えるようになるのです。

新たなビジネスモデル:「申請リカバリー専門家」への進化

この改正により、以下のような新市場が誕生すると見込まれます。

  • 建設業許可の不許可通知を受けた事業者
  • 入管申請で不許可となった外国人
  • 自治体から設置許可を却下された産業廃棄物処理業者 など

彼らは「一度失敗し、困っている」状態にあるため、法的知見と戦略的視点を持つ行政書士の支援を強く必要としています。

このような場面で介入し、適切な不服申立手続きを行い、結果を覆せれば、顧客からの信頼と報酬は非常に高いものとなるでしょう。

特定行政書士の取得は“付加価値”から“必須武装”へ

これまで特定行政書士は「あると便利」な資格でしたが、今後は「高収益業務への参入資格」として、その戦略的重要性が増していきます。
行政法に精通した専門家としての信頼性を高めたい方には、必須のステップとなるでしょう。

4.2 AI時代の行政書士に求められるのは「人間にしかできない価値」

ChatGPT をはじめとする生成AIの台頭により、「士業の仕事はAIに奪われるのでは?」という声も多く聞かれるようになりました。

確かに、定型的な書類作成や、マニュアル的な業務の一部は、AIが代替していく流れにあるのは事実です。

しかし、それを恐れる必要はありません。
むしろ、AIの登場は、行政書士が本来果たすべき価値を再定義する大きな転機となります。

AIに置き換えられる業務と、そうでない業務

代替される可能性が高い業務人間だからこそ価値がある業務
書式通りの定型文書作成
単純な情報の転記作業
複雑な事情に応じた個別提案
感情や不安への対応
高度な判断・交渉

AIが得意とするのは、過去のデータに基づくパターン処理です。
一方、前例がないケースの判断、顧客の感情を汲んだ対応、創造的な解決策の提案は、行政書士の“人間性”に根ざした仕事であり、AIには代替できません。

「AI=脅威」ではなく「AI=最強の補助者」と考える

未来の行政書士は、AIを“敵”とみなすのではなく、“自分のアシスタント”として使いこなす存在になるべきです。

  • 書類のひな形作成はAIに任せ、自分は法的判断に集中する
  • 時間を節約し、より多くの顧客対応にエネルギーを注ぐ
  • AIが扱えない案件を「高単価・高難度業務」として受任する

このような姿勢で臨めば、AIの進化はむしろビジネスの追い風となります。

行政書士を取り巻く環境は、これから数年で大きく変化します。
制度の変更、テクノロジーの進化、そして社会ニーズの多様化──
こうした「変化」は、危機ではなく“成長のチャンス”です。

  • 特定行政書士の資格は、新たな市場に踏み出すための強力な武器となり、
  • AIの活用は、人間にしかできない仕事の価値を際立たせてくれます。

未来の行政書士像とは、時代の変化を恐れず、柔軟に適応しながら専門性を磨き続ける存在。
変化を味方にし、自らのキャリアを設計する意志こそが、あなたの成功を導く原動力になるでしょう。

行政書士というフィールドで、あなただけのキャリアを築くために

ここまで本記事では、行政書士試験の合格後に広がるキャリアパス、年収の実態、成功への具体的な戦略、そしてこれからの業界環境について、客観的かつ多角的な視点から解説してきました。

行政書士としての道は、決して平坦なものではありません。

  • 独立開業の自由の裏にある、集客や経営の厳しさ
  • 年収に関する情報の錯綜と、現実とのギャップ
  • AI時代の到来や制度改正という外部環境の変化

こうした「影」の側面に真正面から向き合うことなしに、真の「光」は見えてきません。

しかし同時に、私たちはこの資格が持つポテンシャルの大きさも見てきました。

  • ダブルライセンスによる市場での独自ポジションの確立
  • 法改正による新たな業務領域の拡大
  • AIを味方にした高付加価値業務への転換

重要なのは、「行政書士=安定収入」ではなく、「行政書士=自由に設計できるキャリア地図」と捉えることです。
その地図をどのように描くか、どこにゴールを置くかは、他の誰でもなくあなた自身に委ねられています。

私もまた、独学で2年をかけて合格にたどり着いた経験から、こう断言できます。

遠回りを避けるために必要なのは、「正しい情報」と「羅針盤としての戦略」です。

本記事が、その羅針盤のひとつとして、あなたのキャリアの航海を力強く支える存在となることを願っています。

そして次のステップは、「どの通信講座で学ぶか」という選択です。
時間を無駄にしないためにも、ぜひ以下のピラーページをご覧ください。

👉 行政書士の通信講座おすすめ比較ランキング|2年の独学で後悔した私が選ぶ最短ルート

あなたの行政書士としての物語が、ここから本格的に始まることを、心から応援しています。