目次

第1章|主要講座の模試を徹底比較【全体像と提供スタイル】

行政書士試験の合格を目指す上で、「模擬試験(模試)」は非常に重要なツールです。本試験に向けた実力確認や、本番に近いシミュレーションができる模試をどう選ぶかによって、学習の成果に大きな差が生まれます。

この章では、現在主流となっている各講座の模試提供スタイルを大きく2つのタイプに分類し、それぞれの特徴を明らかにした上で、主要な予備校・通信講座ごとの模試概要を一覧で整理します。

1.1 フルサービス型とデジタル完結型──模試選びの基本を押さえる

行政書士試験対策における模試は、大きく以下の2つのモデルに分類できます。

● フルサービス型(会場模試中心)

LECやTAC、伊藤塾などに代表される「フルサービス型」は、会場受験を基本とし、大規模な受験者データに基づいた成績表(全国順位・偏差値・科目別分析など)が提供される形式です。

特に本番さながらの緊張感の中での“実戦経験”や、自分の実力を客観的に測定できるという点に価値を感じる受験生に向いています。多数の受験者が参加することで、より精緻なベンチマーク評価も可能となります。

● デジタル完結型(オンライン中心)

一方、アガルートやスタディング、フォーサイトなどが展開するのは「デジタル完結型(オンライン模試中心)」です。こちらは、模試を在宅で受けられる利便性と、学習スケジュールに応じて柔軟に活用できる点が魅力です。

成績分析は自己採点が基本ですが、AI添削などの先端技術を活用する講座もあり、記述対策や弱点補強など、より個別最適化された学習スタイルを志向する受験生に適しています。

この基本モデルの違いを理解することで、自分にとって「模試に何を求めるか」が明確になります。

1.2 各講座の模試を一覧でチェック【2025年度対応情報】

以下に、主要な行政書士講座が提供する模試の概要を一覧でまとめました(※価格・実施回数などは2025年対策情報をもとに整理)。

講座名模試名形式回数価格目安成績分析
アガルート模擬試験在宅(紙送付)1回5,478円自己採点
フォーサイト模擬試験講座在宅2回10,800円(セット)自己採点+質問サポートあり
資格スクエア公開模試/憲民行模試オンライン(Zoom)各1回2,750円/1,100円個人成績表あり
スタディング合格模試オンライン1回(講座付属)単体申込不可AI記述添削あり
LEC公開模試シリーズ会場/在宅最大7回4,500円~(単発)全国順位・偏差値
TAC全国公開模試など会場/在宅3回2,200円~(単発)全国順位・偏差値
伊藤塾公開模擬試験会場/在宅2回7,000円~全国順位・偏差値
資格の大原全国統一公開模擬試験在宅(一部会場)2回6,000円(セット)成績処理あり

※上記は2025年対策講座の情報をもとにしています。最新情報は各公式サイトで必ずご確認ください。

この一覧から見えてくるように、模試の選び方には「模試に何を期待するか」「自分の学習スタイルはどうか」といった個人の戦略が大きく関わってきます。

次章では、これらの模試の「中身」──すなわち難易度や問題傾向、解説の質、成績フィードバックの内容といった“質的側面”について詳しく分析していきます。

第2章|模試の“中身”を徹底分析【難易度・解説・フィードバックから見極める】

模試を選ぶときに、価格や実施回数だけを見て決めてしまっていませんか?

実は、模試の真価は「中身の質」にこそあります。この章では、各社が提供する模試について、出題傾向・難易度、解説講義のスタイル、成績のフィードバック機能という3つの観点から徹底比較し、講座ごとの強みと個性を浮き彫りにしていきます。

2.1 難易度と出題スタンス──模試にも“哲学”がある

模試の難易度には明確な設計意図があります。単に「難しい/やさしい」で判断するのではなく、各講座がどのような意図で問題を構成しているのか──それを読み解くことで、模試の本質が見えてきます。

高難易度・ストレステスト型:LEC/TAC/辰巳法律研究所

本試験よりも難しい問題をあえて出題し、受験生の“耐性”を鍛えるタイプ。特にLECは、過去問にない論点や複雑な事例問題を多く含み、本番で動揺しない精神力と思考力を養う目的があります。

このタイプの模試を受けることで、点数が振るわなかったとしても、「あの模試よりはマシだ」と本試験で冷静に対応できるメンタルが手に入るという合格者の声も多くあります。

標準難易度・リアル再現型:伊藤塾/アガルート

本試験の出題傾向・難易度を忠実に再現するタイプ。実力を客観的に測るには最適で、時間配分や正答率の感覚を掴む訓練に向いています。実際に「伊藤塾の模試と本番がほぼ同じだった」と評価する受験生も少なくありません。

レベル別・目的特化型:フォーサイト/資格スクエア

フォーサイトは「基礎編」と「本試験レベル」の2段階模試を用意しており、段階的な実力測定が可能です。資格スクエアは「憲民行」3科目に特化した模試を提供するなど、的を絞った演習で弱点克服を狙う構成です。

難易度の選び方は、「自分の性格」と「今の学習段階」で判断しましょう。自信をつけたい人は標準型、追い込みをかけたい人は高難易度型が向いています。

2.2 解説講義の内容とスタイル──「問題を解いた後」が本番

模試は“受けっぱなし”では意味がありません。むしろ、解説講義や復習素材の質こそが学習成果を左右します。

アガルート:6.5時間超の解説講義はもはや講座並み

アガルートの解説講義は、1回の模試で6時間を超えるボリューム。本番に直結する論点解説だけでなく、関連知識や過去問とのつながりまで網羅し、「模試そのものを教材として使いたい」受験生に人気です。

伊藤塾:正解のプロセスと“ひっかけ”対策に強み

4時間を超える講義で、受験生が間違えやすいポイントや、選択肢の読み違いの誘導に対する注意点を丁寧に解説。合否を分ける思考プロセスの鍛錬に適しています。

LEC:復習しやすい見開き形式の冊子+重要度ランク付き

LECは紙媒体の「解説冊子」の作り込みが秀逸。問題と解説が見開きで対応し、各問に重要度・難易度が明記されており、復習の優先順位が一目でわかります。

TAC:紙+Web講義のハイブリッド構成

解答解説冊子+Web配信の解説講義の組み合わせで、紙と動画の両方で学べる点が特徴。理解の深まりを助ける工夫がされています。

フォーサイト:丁寧だが一部にレベル感のズレ

全体として丁寧な説明がされているものの、「テキストと内容が似すぎている」「難問への解説が浅い」など、内容バランスに関する評価は分かれる傾向があります。

2.3 フィードバックの仕組み──点数だけで終わらせない

模試で得られる情報の質は、解いた後の「成績分析の精度」によって決まります。ここでは3つのタイプに分類して解説します。

A. 全国規模の詳細分析型(LEC/TAC/伊藤塾)

何千人もの受験者データをもとに、全国順位・偏差値・正答率・分野別分析などが表示される詳細な成績表が特徴。自分の位置づけや落としてはいけない問題が明確になり、「戦略的な弱点補強」が可能になります。

B. テクノロジー活用型(スタディング/資格スクエア)

スタディングは記述問題をAIが即時添削し、反復練習を効率化。資格スクエアは得点分布表やZoom受験による本番慣れなど、技術を活かした仕組みが魅力です。

C. 自己採点・内容重視型(アガルート/フォーサイト)

成績処理や偏差値の表示はなく、解説講義や教材そのものの質に比重を置いたスタイル。自己管理能力が高い方、自分のペースでの学習に集中したい方に向いています。

このように、「どこで」「どのように」評価されるかは講座によって大きく異なります。模試の目的が“競争”なのか“記述対策”なのか“知識の確認”なのか──自分の戦略に合った模試を選ぶことが、合格への最短ルートにつながります。

第3章|模試を活かし切る合格戦略【目的・時期・復習・メンタルの整え方】

模試は“受けるだけ”では意味がありません。合格者たちは、模試を「自分の戦略に組み込むツール」として徹底的に活用しています。

この章では、模試を最大限活かすために意識すべき4つの視点――目的設定、受験時期・回数、復習法、メンタル管理について、合格者の実践例をもとに具体的に解説します。

3.1 模試の目的を明確にする|“なぜ受けるか”を意識することが成果の鍵

模試の価値は、「点数」そのものよりも「自分にとっての役割」を明確にしたときに最大化されます。

以下のように、目的ごとに模試の使い方は変わってきます。

  • 実力の現状把握:LECの「到達度確認模試」やTACの「実力チェック模試」で、全体像の把握や弱点の特定を狙う
  • 時間配分や解く順番の訓練:3時間の本番を想定し、「先に一般知識から解く」「文章理解を最後に回す」など、自分なりの戦術を試す
  • 直前期の仕上げと弱点確認:本試験直前の模試では、実際の起床時間や持ち物まで再現し、リハーサルとして活用
  • 苦手分野の洗い出し:得点分布や偏差値などから、自分だけが間違えている“危険な穴”を特定する

「目的なき模試は、自己満足で終わる」。模試を使い倒す人は、常に「何を得たいか」が明確です。

3.2 受験時期と回数の戦略|模試は“ペースメーカー”として使う

模試を「いつ」「何回」受けるかは、あなたの現在の学習状況によって戦略的に決めるべきです。

学習初期~中盤(6月〜8月頃)

  • 基礎が固まっていない時期は、無理に模試を受けないのも一手
  • 7月〜8月のLEC・TACの中間模試を「実力測定+初回シミュレーション」として活用

学習後半(9月〜10月)

  • 本試験レベルの問題に触れ、時間配分や戦術を完成させる段階
  • 特に10月の「ファイナル模試」「直前ヤマ当て模試」は最終確認に有効

回数の目安

  • 2〜3回が最適:目的を分けて取り組める
  • 4回以上は要注意:復習が追いつかず消化不良になるリスクあり

模試は“受ける”よりも“活かす”ことが大切。復習を前提にスケジューリングしましょう。

3.3 模試を「合格点」に変える復習法|“弱点ノート”を作れ

模試を真の“得点源”に変えるには、受けた後の「復習」がカギです。以下のような方法で復習を習慣化しましょう。

必ず復習すべき3つの問題

  1. 間違えた問題
  2. 正解したが自信がなかった問題
  3. 偶然正解した問題

弱点ノートの作り方(1問1ページがおすすめ)

  • 左ページ:問題の要点・なぜ間違えたかの分析
  • 右ページ:正しい解法/関連知識/条文・判例・テキストの該当箇所

優先順位のつけ方

  • LECやTACの模試には「重要度ランク」や「正答率」が表示されているので、まずはAランクで落とした問題正答率が高いのに間違えた問題から復習する

模試で出会った“自分だけの弱点”をノートに集約すれば、試験直前の最強の武器になります。

3.4 模試の点数に一喜一憂しない|心を整える4つの心得

模試の点数に振り回されてしまうのは誰しも経験することです。しかし、合格者は結果を「情報」として冷静に扱っています。

よくある誤解と真実

  • 誤:模試で合格点を取れなければ本番も無理
  • 真:模試でE判定でも、本番で逆転合格は十分可能

点数よりも大切なこと

  • その失点が「何によって」起きたのかを分析し、対策に変換する
  • 模試はあくまで「本番のための訓練場」であり、失敗してこそ意味がある

合格者のマインドセット

  • 「今気づけてよかった」と前向きに捉える
  • 点数に一喜一憂せず、冷静に「戦略」を見直す

模試は本番で失敗しないための“予行演習”。点数そのものではなく、「気づきの多さ」で価値を測りましょう。

第4章|模試でつまずかないために【よくある落とし穴と対処法】

模試は非常に有効な学習ツールですが、使い方を誤ると「時間とお金をかけただけ」で終わってしまうこともあります。

この章では、模試活用でありがちな失敗パターンと、会場・在宅それぞれの受験形式の選び方について、具体的な注意点と対処法を整理します。

4.1 模試の“落とし穴”5選|その学び、ムダにしていませんか?

以下は、模試を受ける多くの受験生が陥りやすい典型的な失敗例です。どれか一つでも当てはまる方は、要注意です。

❶ 復習をせずに“受けっぱなし”

模試の価値は「復習」にあります。点数だけを見て終わりでは意味がありません。正解・不正解にかかわらず、自分の判断プロセスと知識の曖昧さを分析し、弱点補強につなげることが重要です。

❷ 模試を詰め込みすぎて消化不良

「不安だからたくさん受けたい」と考えて、4回も5回も詰め込む人がいますが、復習が追いつかないと逆効果。受けた分だけ学びを回収できるよう、2~3回程度に絞って集中すべきです。

❸ 模試をまったく受けない

「まだ実力がないから」「もったいないから」と一度も模試を受けずに本番を迎えるのは非常に危険です。時間配分や会場の緊張感に慣れず、本来の実力が出せないリスクが高まります。

❹ 点数に一喜一憂して終わり

模試の点数はあくまで「現在地」。本番の点数ではありません。E判定でも本試験で逆転合格した事例は多数あります。重要なのは「なぜ失点したか」を分析し、戦略を練り直すことです。

❺ 間違いを放置する

初めて見た問題や理解が曖昧だった論点を「たまたまの出題」として流してしまうのは危険です。模試は“知識の穴”を発見する貴重な機会です。必ずテキストや条文に立ち返って補強しましょう。

模試を受ける“目的”と“使い方”がズレると、努力が空回りします。自分の学習フェーズに応じた最適な運用を心がけましょう。

4.2 会場 vs. 在宅──受験形式は“目的”で選ぶ

行政書士試験対策の模試は、多くの講座で「会場受験」と「在宅(オンライン・自宅受験)」が選択可能です。それぞれにメリットと注意点があり、単なる利便性だけで決めるのは得策ではありません。

▼ 比較表|受験形式の違いと使い分けのポイント

視点会場受験在宅受験
本番慣れ◎ 実際の試験と同じ緊張感を体験できる△ 静かな環境だと本番の空気に戸惑う可能性あり
時間とコスト△ 会場までの移動・交通費がかかる◎ 自宅で完結。費用も抑えられる
日程の柔軟性△ 指定日のみ(体調や予定の影響を受けやすい)◎ 自分のタイミングで受験できる
集中力の維持◎ 周囲が同じ状況のため集中しやすい△ 自宅では中断・誘惑のリスクもあり
精神的な耐性◎ 他人の音・緊張・試験監督などに慣れる△ 試験独特のストレスに不慣れなまま本番へ

▼ 結論:どちらか一方ではなく“併用”が最適

  • 中間段階では「在宅模試」で時間配分や知識の確認に集中
  • 仕上げ段階では「会場模試」で本番の空気感に慣れる

このハイブリッド戦略こそが、模試の効果を最大限に引き出す最も合理的な方法です。

模試の「受験形式」もまた、戦略の一部です。自分の目的に合わせて賢く選び、合格に直結する経験値を積みましょう。

結論|「最適な模試戦略」は人によって異なる

行政書士試験において、模試は単なる腕試しではなく、「合格を引き寄せるための実戦ツール」です。

しかし、「万人にとって最高の模試」というものは存在しません。重要なのは、自分の学習状況・性格・目的に応じて、最適な模試とその活用方法を見極めることです。

【戦略1】競争環境で自分の立ち位置を知りたい人へ

おすすめ:LEC・TAC・伊藤塾の公開模試(会場受験)

  • 全国順位や偏差値、正答率など、他の受験生との比較データが充実
  • 数千人規模のデータを活用した分析で、自分の実力を客観視できる
  • 本番さながらの緊張感と空気感に慣れる経験が積める

【戦略2】記述対策や自学自習に強みを持たせたい人へ

おすすめ:スタディングのAI添削模試、資格スクエアのZoom模試

  • 記述式答案を即時にAIが添削・フィードバック(スタディング)
  • オンラインで一斉受験の臨場感が味わえる(資格スクエア)
  • 個別のスキル強化に特化した自己完結型の学習に最適

【戦略3】本番に近い問題と解説で総復習したい人へ

おすすめ:アガルート・伊藤塾の標準型模試

  • 本試験に極めて近い難易度・出題傾向
  • 数時間に及ぶ丁寧な解説講義で、知識の最終チェックができる
  • 実力確認と仕上げ学習を兼ねた“総まとめ”に最適

【戦略4】費用を抑えつつ実力チェックをしたい人へ

おすすめ:資格スクエアの低価格Zoom模試/フォーサイトの2回構成模試

  • Zoom模試は2,000円台から受験可能で、コストパフォーマンスに優れる
  • フォーサイトは基礎編+応用編の2段構成で、段階的な到達確認が可能

模試は“受けて終わり”ではなく“使って伸ばす”もの

点数に一喜一憂するのではなく、模試を「弱点発見ツール」「時間戦略の練習場」「学習計画の修正材料」として活用しましょう。

特に、間違えた問題や曖昧な知識を「解き直しノート」にまとめておくことで、本番前の最強の復習素材となります。

模試活用の最適解は「ハイブリッド戦略」

  • 学習初期~中盤:在宅模試で時間管理や知識の整理
  • 試験直前期:会場模試で実戦力とメンタル耐性を養成

このように、模試の形式も段階的に使い分けることで、「知識面」と「精神面」の両方から合格に近づくことができます。

最後に

模試は、あなたの学習を“見える化”し、方向修正を促してくれるコンパスのような存在です。

「自分に合った模試はどれか?」をしっかり考え、目的に応じて戦略的に選びましょう。

本番で最高のパフォーマンスを発揮するために、模試を最大限活かす準備を、今この瞬間から始めてください。